イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学利益相反マネジメントポリシー

目的

 九州工業大学(以下「本学」という。)は、明治専門学校として開学して以来、実学を旨とし、世界をリードする高度技術者の養成、産業界に有用となる高度な研究を通して社会へ貢献してきた。新たな時代を迎え、わが国は「知」が駆動する知的財産立国を目指し、大学で創造された「知」を直接的に社会へ還元することが強く求められている。本学は、開学以来の伝統である実学重視の伝統を継承し、産学官連携ポリシーにおいて、社会が求める人材の育成と学術研究の社会への還元を積極的に推進することを宣言した。

 真理の探求を目的とする大学と、利益追求を目的とする企業とは、その基本的な性格や役割を異にしていることから、産学官連携推進により、大学や役員及び職員(以下「職員等」という。)が特定の企業等から得る利益や特定の企業等に対し負う責務が、大学における職務上の責務と衝突する状況が生じ得る。このような状況を「利益相反」と呼び、産学官連携活動に伴い不可避的に発生するものである。産学官連携を積極的に推進している本学では、当然の帰結として利益相反は日常的に生じる。本学のインテグリティ(社会的信頼)を損なわないためには、不可避的に発生する利益相反の問題を適切に判断して、職員等が安心して産学官連携活動に取り組むことができる状況を整備するとともに、本学が責任をもって社会への説明責任を果たすことが重要である。

 本ポリシーの目的は、本学及び本学職員等がインテグリティ(社会的信頼)を保持しつつ、安心して産学官連携活動を積極的に推進できる学内ルールやシステム等の環境を整備することにある。また、産学官連携の推進により不可避的に生じ得る利益相反の問題を、本学及び本学職員等が常に意識して公正かつ効率的な実務を実行している姿勢と、その活動を支えるルールを内外に明示するものである。

定義

本ポリシーにおいては、記載内容の明確化を図るために、用語を次のように定義する。

  1. 「広義の利益相反」とは、狭義の利益相反と責務相反を含んだものをいう。
  2. 「狭義の利益相反」とは、大学や職員等が産学官連携活動に伴って得る利益と、大学における教育と研究等の責任が相反する状況をいう。
  3. 「責務相反」とは、職員等が兼業活動などにより企業等に対し負う責任と、大学における職務遂行上の責任が両立しえない状況をいう。
  4. の大学における教育と研究等の責任が相反する状況をいう。
  5. 「大学(組織)としての利益相反」とは、狭義の利益相反のうち、大学(組織)が産学官連携活動に伴って得る利益と、大学(組織) の社会的責任が相反する状況をいう。

(1)〜(5)で定義した用語の相互関係

  1. 「利益相反行為」とは、大学のインテグリティ(社会的信頼)を保持できない程度に、「大学における教育と研究等の責任よりも自己または第三者の利益を優先させているとの疑念を抱かれる」行為をいう。
  2. 「利益相反問題」とは、利益相反行為が起きているために、大学のインテグリティ(社会的信頼)を保持できない問題をいう。
  3. 「責務相反行為」とは、企業等に対する責任と大学における職務遂行上の責任が両立せず、「大学のインテグリティ(社会的信頼)を保持できない程度に、兼業等に関わる責任を優先させているとの疑念を抱かれる」行為をいう。
  4. 「責務相反問題」とは、責務相反行為が起きているために、大学のインテグリティ(社会的信頼)を保持できない問題をいう。

利益相反マネジメントの基本的な考え方

  1. 本学は、産学官連携による社会貢献を教育・研究に続く第三の使命の一つとして位置づけ、産学官連携を積極的に推進する。また、本学は数多くの大学発ベンチャーを起業した実績を有しており、今後もこれを推奨、支援する。
  2. 本学は、産学官連携に至るプロセスにおいて、「本学の職員等と連携機関との関係等に対して社会から疑念を抱かれない」ように、公明性・公平性・中立性を保持した手続きを行う。
  3. 本学は、職員等が安心して産学官連携活動を積極的に推進できるように利益相反マネジメントに対する適切な学内ルール及びシステムを整備する。
  4. 本学は、産学官連携活動によって生ずる利益相反に関する社会へのアカウンタビリティ(説明責任)を果たす。このため、利益相反マネジメントの基本である利益相反に関する情報を開示した職員等に対して、本学は利益相反マネジメントを真摯に行い、職員等が安心して産学官連携活動を推進できるように支援する。

利益相反マネジメントの対象者・対象事象及び基準

利益相反委員会における審議や利益相反アドバイザーが対応する相談等において、職員等が安心して積極的に産学官連携活動を推進するために必要な着目点や注意点等の根拠を明示するため、対象者・対象事象及び基準を定める。

(1)対象者
原則として本学及び本学職員等を対象とする。
(2)対象事象
別に定める九州工業大学利益相反マネジメント要項(以下「要項」という。)において対象事象を例示する。
(3)基 準
発生した事例が要項に例示する対象事象に該当する場合、下記の4点を利益相反問題解決の指針として判断し、当該事例に対応する。
  1. 職員等が、教育・研究等という本学における職務よりも、個人的な利益を優先させていると客観的に判断されない。
  2. 職員等が、個人的な利益の有無にかかわらず、時間配分や熱意等の観点から、本学における職務遂行責任よりも本学以外の活動への職務遂行責任を優先させていると客観的に判断されない。
  3. 本学が教育・研究等における本学の責任よりも産学官連携活動に伴って得られる利益を優先させていると客観的に判断されない。
  4. 本学が、産学官連携活動に伴って得られる利益に対して、社会通念からみて不当に高い利益を得ていると客観的に判断されない。

利益相反マネジメントの体制

(1)利益相反マネジメント
添付別図に示す利益相反マネジメント体制によって、利益相反マネジメントを行う。マネジメントの詳細は要項に定める。
(2)利益相反委員会の設置
  1. 本学の利益相反マネジメントに関する重要事項を審議する機関として利益相反委員会を設置する。
  2. 委員長は、理事(総務・企画担当)とする。
  3. 委員は、学内から選出し、学長が任命する。また、委員長が必要と認めた場合には、専門知識をもつ学外者に委員を委嘱する。
  4. 利益相反委員会は、次の事項を審議する。
    1. 利益相反マネジメントポリシーの制定及び改廃に関すること
    2. 利益相反マネジメントに関する施策に関すること
    3. 利益相反に関する個別事項
    4. 利益相反に関する重要な事項
    5. その他学長の諮問する事項
  5. 職員等は審議において資料や口頭で説明することができる。
  6. 審議結果は、職員等に通知する。
  7. 審議の結果、大学としてその状態が許容できないと判断した場合には、委員長が当該職員等に勧告する。
  8. 当該職員等は、利益相反委員会の審議結果に異議がある場合、委員長に対し再度審議を求めることができる。
(3)利益相反アドバイザーの配置
イノベーション推進機構 産学連携・URA領域 知的財産部門に、利益相反アドバイザーを配置する。利益相反アドバイザーは、次の事項を実施する。
  1. 日常的な相談窓口として、利益相反に関する相談に対応し、必要に応じてアドバイスする。
  2. 日常的な相談において、評価の必要性が認められる場合には、事実関係を調査して、本ポリシーの基準に基づき評価する。
  3. 評価の結果、利益相反委員会での審議が必要であると判断した場合には委員長に報告する。

利益相反マネジメントの手続き

利益相反マネジメントは、自己申告書及び相談申込書を提出した職員等に対して行う。

(1)利益相反に関する自己申告書の提出
  1. 職員等は、要項に定める自己申告推奨基準を参照の上、要項に定める様式により利益相反に関する自己申告書を利益相反事務局へ提出する。
  2. 職員等の利益相反に関する自己申告書の提出頻度は次のとおりとする。
    1. 数値情報については年1回とする。
    2. 利益相反問題に関連する対象事象に関する数値以外の情報については、当該対象事象の発生時毎とする。
  3. 自己申告された利益相反に関する情報は、職員等の利益相反に関する個人情報が部外に漏洩することのないよう、利益相反事務局において厳重に保管・管理する。
(2)利益相反に関する相談申込書の提出
  1. 職員等は、利益相反問題を予見した場合には随時、利益相反アドバイザーに相談することができる。
  2. 職員等は、相談申込書(任意様式)を利益相反アドバイザーへ提出する。
  3. 相談された利益相反に関する情報は、職員等の利益相反に関する個人情報が部外に漏洩することのないよう、利益相反事務局において厳重に保管・管理する。
(3)利益相反アドバイザーの評価
  1. 利益相反事務局が集積した利益相反に関する自己申告書及び相談申込書の情報は、利益相反アドバイザーが本ポリシーの基準に従って評価し、利益相反委員会での審議が必要であると判断した場合には委員長に報告する。
  2. 評価の結果、利益相反委員会での審議が必要でないと判断した場合には、職員等へ書面で回答する。また、当該情報は利益相反事務局において厳重に保管・管理し、社会的な疑義が提起された時に、利益相反事務局及び利益相反アドバイザーが、その記録を基に事実関係を適切に調査の上、利益相反委員会で審議し、説明責任を果たす。
(4)利益相反委員会での審議
  1. 利益相反委員会では、「利益相反マネジメントの体制」の「(2)利益相反委員会の設置」の④に示す事項を審議する。
  2. 審査された結果に応じて、職員等へ通知・勧告する。
(5)外部へのアカウンタビリティ
利益相反問題は大学のインテグリティ(社会的信頼)にかかわる重要な問題であり、利益相反問題への対応が有効に機能するためには、社会へのアカウンタビリティ(説明責任)を果たすことが必要不可欠である。このような観点から、積極的に産学官連携を推進している本学の利益相反問題に関する理念と、そのマネジメントに対する体制と対応を社会に公開するため、本ポリシーをホームページに掲載する。また、利益相反問題に係る外部からの情報公開請求に対しては、プライバシーに関わる情報は不開示情報とし、職員等のプライバシー保護に充分留意した上で、利益相反委員会において慎重に審議し、当該事例での公表範囲を決定する。
(6)外職員等への啓発
職員等を対象者にした利益相反に関するセミナーを定期的に開催するとともに、新任職員研修等の機会を利用して、利益相反問題に関する研修を行う。

利益相反マネジメントポリシーの見直し充実

 社会通念の変化、法令の改正等に対して適切に対応するため、本ポリシーは定期的に見直す。また、対象者・対象事象及び基準については、各事例への対応の積み重ねから、内容を見直し充実を図る。