イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

情報工学研究院

教授

中茎 隆

なかくき たかし

所属
情報工学研究院
知的システム工学研究系
プロフィール
1974
うまれ
2006
博士(工学)上智大学
2006
上智大学大学院
理工学研究科機械工学専攻博士後期課程修了
1999
上智大学大学院
理工学研究科機械工学専攻博士前期課程修了

理研で研究員をしていた頃、生物現象をシステムとして捉え、そのメカニズムを理解するという研究テーマに出会いました。メカトロニクスのための制御工学だけでなく、生物システムのための制御工学も今後必要になると考えたのが研究のきっかけです。

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生物システムのための制御理論の構築を目指して

● 研究テーマ

  • ❖細胞内シグナル伝達系の数理モデリングとモデルベース解析
  • ❖分子ロボティクスのための制御理論の構築
  • ❖不連続なシステムの制御系設計

● 分野

総合理工・・・計算科学
電気・電子工学・・・制御工学

● キーワード

制御理論、生物システム、分子ロボティクス

● 実施中の研究概要

 細胞の大きさは直径数〜数十マイクロメートルで、私たちの裸眼では小さすぎて見ることができません。細胞内には、タンパク質と呼ばれる分子が数多く存在し、機構を実現したり、物質を輸送したり、モータのような駆動力を与えたり、物質を貯蔵したり、情報処理を行ったり、と様々な仕事をしています。例えば、ヒトの細胞では、約10万種類ものタンパク質が多様な働きをし、細胞の維持、成長、増殖、分化、死(アポトーシス)を厳密に制御しています。タンパク質を「部品」と考えると、その種類は自動車以上であり、システムの複雑さは航空機を凌駕します。つまり、「細胞は巨大な制御システム」なのです。その制御システムの中枢が「シグナル伝達系」です。情報・信号処理は、タンパク質によって実装されているため、私たちがよく知っている電気システムにおける回路とは「見た目」は違います。しかし、その動作原理は類似していることが分かってきたため、「情報・信号処理の動作原理を探求する制御工学」を用いて研究に取り組んでいます。
 機械・電気システムにおける故障は、重大事故を引き起こす原因となるため、定期的な点検に加え、故障やトラブルに頑強なシステム設計が求められます。一方、細胞システムにおけるシグナル伝達系の故障は、癌などの疾病を引き起こす原因となります。困ったことに、現在の科学技術では、生きた細胞内の個々のタンパク質を十分な分解能を持って観察することはできません。従って、実験では捉えきれない部分に対して、相補的に制御工学を適用し、シグナル伝達系の解明を目指しています。
 一方、シグナル伝達系を人工的に再現し,生体分子のみで創られる分子ロボットの信号処理や制御系として実装する研究にも取り組み始めています。このような試みは分子ロボティクスと呼ばれています。

● 今後進めたい研究

 現在実施中の研究テーマは非常に難問であり、まだまだ多くの課題が残されています。生物システムのための制御理論の構築、体系化という最終目標に向けて一歩一歩前に進みたいと考えています。

● 過去の共同研究、受託研究、産業界への技術移転などの実績

・「上皮成長因子受容体誘導シグナル伝達系の動作原理、制御機構の解明」文部科学省、科学研究費補助金、新学術領研究「分子ロボティクス」(2013-2014)
・「造血幹細胞の増殖分化モデルの構築に関する研究」金沢大学及び理化学研究所との共同研究(2009-2012)
・「周波数応答解析の拡張による大規模生物システムの解析手法の開発」公益財団法人大川情報通信基金(2012)
・「介護支援用パワーアシストスーツ開発補助事業」財団法人JKA(2011)

● 業績

【論文】
・T. Nakakuki, et al, "Ligand-specific c-Fos expression emerges from the spatiotemporal control of ErbB network dynamics", CELL, 141(5), 884-896, 2010.
・T. Katagiri, H. Kawamoto, T. Nakakuki, et al., "Individual hematopoietic stem cells in human bone marrow of patients with aplastic anemia or myelodysplastic syndrome stably give rise to limited cell lineages", Stem Cells, 31(3), 536-546, 2013.

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