イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

情報工学研究院

教授

岡本 卓

おかもと たかし

所属
情報工学研究院
物理情報工学研究系
プロフィール
1962
生まれ
1993
博士(工学)
北海道大学
1986
北海道大学大学院
工学研究科電子工学専攻
修士課程修了

光の分野はまだまだ未知の領域が多く、何か新しいことが見つけられるのではないかと思い、このテーマを選びました。また、結果が「目で見てわかる」ところにも惹かれました。

受賞
応用物理学会賞受賞(1995年)

ランダムな光の解明:レーザーから肌の見えまで

● 研究テーマ

  • ❖ ランダムレーザーの基礎研究
  • ❖ 皮膚表面からの光散乱現象の解析

● 分野

光工学・光量子科学

● キーワード

光の散乱、レーザー、ランダム媒質、皮膚光学

● 実施中の研究概要

❖ ランダムレーザーの基礎研究

レーザーは向かい合わせの鏡を使って光を大きく増幅するのに対し、ランダムレーザーは粉体のように光が不規則に乱反射を繰り返す物質を使って増幅します。通常のレーザーほど整った波形ではありませんが、蛍光灯やLED(発光ダイオード)よりはきれいな光を出します。レーザーは広がらず直線的に飛ぶ単色の光を出しますが、壁などの物にあたるとスペックルパターンと呼ばれる、斑点模様のノイズが出てしまいます。これに対しランダムレーザーは、非常に明るく単色に近い光を広角に放射しますが、スペックルができにくい性質を持っています。このことから、ビデオプロジェクターや顕微鏡の光源、ディスプレイや医療用計測機器への応用が考えられています。たとえばディスプレイに使うと現在のディスプレイよりも鮮やかで美しい映像が実現できると考えられます。
ランダムレーザーは新しい光であり、その応用範囲は広いと思われます。実用化に向けての基礎研究を行っています。

❖ 皮膚表面からの光散乱現象の解析

肌の見た目は人により異なっています。また、化粧品によって印象を変えることができます。これは、人の皮膚に当った光の散乱の違いによるものです。光の散乱に影響するのは、皮膚表面や内部の状態、また化粧品の素材や粒度分布などです。
最近では化粧品の素材として、ナノ粒子などのさまざまな粉体が開発され、利用されるようになってきています。しかし、開発された微粒子の構造は複雑で、従来の理論式ではその光学特性を求めることができません。そこで、時間領域差分法(FDTD法)やモンテカルロ法を使ったシミュレーションで、微粒子粉体による光散乱を計算しています。微粒子粉体を皮膚に塗った時の見え方の変化を求める研究も行っています。この結果を化粧品に使用する素材を選んだり、微粒子の適切な大きさを決めるために役立てます。
実験では多くの時間と人手が必要ですが、コンピュータによるシミュレーションは素材の迅速な開発に大きく寄与します。

● 今後進めたい研究

省エネ光源を探しての基礎研究や、物理的観点からの肌の見えの研究

● 過去の共同研究、受託研究、産業界への技術移転などの実績

【共同研究】
1. 光学シミュレーションを用いた粉体および化粧塗膜における光伝播解析と粉体、化粧塗膜設計への応用 (2007-2013)
2. セラミックスの光散乱解析 (2014-2019)
3. シミュレーションによる粒子複合体光学特性計算 (2014)
4. 皮膚の表面及び表層の微細構造を考慮した光伝播特性に関する研究とその化粧品研究への応用 (2015-2020)
5. シミュレーションによるフィラー樹脂複合系反射率計算 (2016)
【受託研究】
1. 白色反射材組成物における組成と光反射率の相関に関する研究 (2013)

● 過去の業績

【論文】T. Okamoto and A. Fukuyama, “Light amplification from Cantor and asymmetric multilayer resonators,” Optics Express, Vol. 13, No. 20, pp. 8122–8127 (2005).
【著書】“The statistics of dynamic speckles,” Progress in Optics, ed. E. Wolf, Vol. XXXIV, pp. 183–248 (North-Holland, Amsterdam, 1995).      

● 関連リンク先

❖ 研究室ホームページ

❖ より詳しい研究者情報

   ランダムレーザーの発光

ランダムレーザーのシミュレーション(光強度分布)