イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

情報工学研究院

教授

許 宗焄

ほ じょんふん

所属
情報工学研究院
物理情報工学研究系
プロフィール
1963
生まれ
2000
博士(工学)
九州大学
2000
九州大学大学院
工学研究科博士後期課程応用物理学専攻修了
1997
九州大学大学院
工学研究科博士前期課程応用物理学専攻修了
1988
釜山大学教育大学院
修士課程物理学専攻修了

人間には不用と思われていたノイズが、自然界にはあらゆるところで巧妙に有効利用されていることを知り、単純な物理系でチャレンジすることになりました。この知見をもとに、生物系・脳神経系などにチャレンジしていきたいと思っています。

より詳しい研究者情報へ

厄介モノから役立つモノへ、大変身のノイズ

● 研究テーマ

  • ❖液晶対流系によるノイズを用いた散逸構造の制御とその応用の研究

● 分野

物性基礎、非線形物理、液晶

● キーワード

散逸構造、ノイズ、液晶

● 実施中の研究概要

近年、「自発・自律性、階層性、自己組織化」などの特有な性質を生み出す非平衡散逸系(注)の研究が急速に発展しています。物理・化学系をはじめ、生物・医学及び経済学・情報科学に至るまで、その関連分野は多種多様です。これらの非平衡散逸系から生まれた新しい概念と原理の追求により、新しい研究分野の広がりが大いに期待されています。
一方、これまでの基礎・応用科学の中で言われる「ノイズ」は、排除すべきものとして、主に発生原因や処理手法などが研究されてきました。しかし、近年の研究で、ノイズは自然現象の中で必然的な存在で、ある条件下では生産的な効果を引き起こすことが分かりました。例えば、普通は認知できない微弱な信号に適切なノイズを加えることによって、その微弱信号が検出できます。これは確率共鳴現象として広く知られています。
本研究で取り上げる液晶対流系は、上述の非平衡散逸系の研究対象として国内外で多くの研究がなされてきました。この系は、単純なロール対流構造から乱流に至るまで様々な散逸構造を呈します。そのために、様々な散逸構造におけるノイズ応答性を調べる格好の対象と考えられます。本研究は、様々な散逸構造について、それぞれの固有メカニズムと特性がノイズにどのように応答するかを明らかにすることが目標です。本研究によって、例えば確率共鳴現象のようなノイズ応答性が、液晶対流系においても発見できる可能性があります。さらに、ノイズによる散逸構造の特性が制御できれば、液晶対流系を高分子薄膜の微細加工技術へ応用することも期待できます。
(注)非平衡散逸系は、熱平衡系と対照的な関係にある開放系のことで、エネルギーや物質を外部から取り込みつつ、それを別の形に変換しながら動的に系を保ちます。その別の形が作る構造を散逸構造(dissipative structure)という。

● 今後進めたい研究

生物系におけるノイズ応答性を調べ、その応用分野を研究します。特に、脳神経システムと生物の成長促進などに興味を持っています。

● 研究室ホームページ

液晶対流系の実験システム