イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

情報工学研究院

教授

坂本 順司

さかもと じゅんし

所属
情報工学研究院
生命化学情報工学研究系
プロフィール
1956 生まれ
1984 理学博士 大阪大学大学院
1984 大阪大学大学院 理学研究科 生物化学専攻 博士後期課程修了
1981 大阪大学大学院 理学研究科 生物化学専攻 博士前期課程修了

生物が「いきいき」と生きているのは、自分でエネルギーを獲得できることによります。その仕組みを解き明かすために、微生物を研究対象にしたところ、彼らはずいぶん個性豊かな集団だと分かりました。これをきっかけに「生物多様性」を分子レベルで研究することになりました。

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微生物の豊かな個性を医療やバイオエネルギーに役立てよう

● 研究テーマ

  • ❖微生物のバイオエネルギー変換
  • ❖膜タンパク質・膜酵素の生物化学
  • ❖呼吸酵素の生物多様性を医療や生産に生かす

● 分野

機能生物化学、生体エネルギー学、マイクロバイオーム工学

● キーワード

グラム陽性細菌、呼吸鎖酵素、酸化的リン酸化、微生物ゲノム編集

● 実施中の研究概要

「好熱菌」や「アミノ酸生産菌」など、グラム陽性菌の「呼吸酵素」について研究しています。
「呼吸」というと、日常的には図1のように「肺呼吸」とか「腹式呼吸」など身体活動を思い浮かべますが、生命現象として本質的なのは、細胞レベルの呼吸です。呼吸酵素とは、細胞において、栄養物を酸素で燃やして(酸化して)エネルギーを獲得する分子のことで、図2に示すように、細胞表面の膜に埋まっています。たいていの微生物は、図3に示すように、特長の異なるいくつかの酵素を持っており、環境に応じてそれぞれの利点を使い分けています。このような「分子レベルの生物多様性」には、主に2つの応用分野が広がります。
第1に、呼吸酵素はそれぞれエネルギー効率が違います。図4ではそれを車の燃費にたとえています。例えば調味料や栄養素・医薬品の原料などになるアミノ酸を発酵生産してくれる善玉菌でも、ふだん働いている呼吸酵素の燃費は悪いので、そのゲノムを編集してみると、図5右側のように省エネ性能が向上することが分かりました。
第2に、ヒトや家畜が持っている呼吸酵素(A型)と、結核菌や多剤耐性菌(MRSA)など多くの悪玉菌の持っている呼吸酵素(S型)は型が違うので、それらの詳しい分子構造が分かれば、図6のようにS型呼吸酵素だけ阻害してヒトのA型には無害な新しい医薬品を設計できます。私たちはドイツとの共同研究で2016年に、世界で初めてS型の精密な構造を図7のように解き明かし、悪玉菌の「息の根を断つ」創薬の基盤を得ることができました。

● 今後進めたい研究

上で述べた2つの方向性を進めたい。
① 有用な物質を発酵生産する善玉菌で、呼吸酵素の遺伝子を書き換えるゲノム編集により、細胞の燃費(エネルギー効率、環境性能)をも向上させる。
② ヒトや家畜の呼吸酵素(A型)と病原菌の呼吸酵素(S型)の分子構造の違いに基づき、従来の抗生物質が効かない耐性菌にも効いて「息の根を止める」新規な抗菌薬を開発する。

● 特徴ある実験機器、設備

① 遠心機 ② 微生物培養装置 ③ PCR装置(ポリメラーゼ連鎖反応装置)

● 知的財産権(技術シーズ)

① グラム陽性菌のゲノム編集・遺伝子組換え
② 膜標品・膜タンパク質・膜酵素の実験的取り扱い
③ 呼吸酵素・酸化的リン酸化酵素に特化したバイオインフォマティクス

● 過去の共同研究、受託研究、産業界への技術移転などの実績

【共同研究】
① 『農作物の生産と魚類の養殖に関与する微生物叢解析』 (2014-15)
② 『環境浄化に関与する微生物叢解析』(2012-13)
③ 『環境浄化における微生物群集のモニタリング技術の確立』(2010-11)
【受託研究】
① 『微生物分解による稲藁や籾殻のバイオエネルギー生産等への利用』(2008)

● 過去の業績(論文・受賞歴など)

【論文】
① Structure of a bd oxidase indicates similar mechanisms for membrane-integrated oxygen reductases. Science 352(6285):583-586 (2016)
② Monitoring the enzyme expression in a respiratory chain of Corynebacterium glutamicum in a copper ion-supplemented culture medium. Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 79(2): 223-229 (2015)
③ Purification and characterization of
Malate:quinone oxidoreductase from thermophilic Bacillus sp. PS3. J Bioenerg Biomembr. 45(1-2): 131-136 (2013)
【著書】
① 理工系のための生物学 - 改訂版 - 。裳華房 (2015)
② ワークブックで学ぶヒトの生化学。裳華房 (2014)
③ いちばんわかる生理学。講談社 (2011)

● 研究室ホームページ