イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

情報工学研究院

教授

坂本 寛

さかもと ひろし

所属
情報工学研究院
生命化学情報工学研究系
プロフィール
1964
生まれ
1992
博士(理学)
九州大学
1992
九州大学大学院
理学研究科化学専攻
博士後期課程修了
1989
九州大学大学院
理学研究科化学専攻
修士課程修了

体の中で起こっているヘム分解は、単なる廃棄物処理ではなく、要らなくなったヘムから鉄、一酸化炭素、ビリルビンを作り出し、それぞれが独立して生理活性を示します。また、遊離ヘム自体にも新たな作用が見つかってきました。このような魅力にとりつかれて研究を進めています。

より詳しい研究者情報へ

夾雑物の多いサンプルでもごく微量の遊離ヘムを測れます

● 研究テーマ

  • ❖酵素の構造・反応機構・相互作用の解明と新規タンパク質の開発

● 分野

生化学、有機合成化学、分子生物学、X線結晶構造解析をはじめとした各種分光学的解析

● キーワード

タンパク質、酵素、ペプチド、ヘム、構造活性相関、触媒機構

● 実施中の研究概要

タンパクの中で働いていたヘムは、単独である時は活性酸素を作り出す元凶であると考えられていましたが、最近では、体の中で様々な調節機能を果たしていることが分ってきました。それで、ヘムの量を測る方法を探してきました。ヘムを特異的に結合するタンパクがヘムオキシゲナーゼ(HO)で、周りの電子や酸素が加わると分解がはじまりますが、それにヘムが入ると結合することができます。この性質を使えば、ヘムの存在・また量を測ることができる。それをどうやって測るか。HOに蛍光物質をつけておいて、ヘムを加えると蛍光剤の発光をヘムが吸収してしまいます。つまり、発光していたHOがヘムを加えることで発光しなくなることを利用して、ヘムの量を測定できることがわかりました。今、大腸がんの検査は、便の中の便潜血反応を検査していますが、ヘモグロビンは壊れやすく、大腸がんの兆候を見逃しやすいといわれています。ヘムは安定していて、ヘムがあれば、その存在を確認するのは容易です。したがって、今後、大腸がんの検診は、ヘモグロビンではなく、ヘムを見つけるようにすれば、どんな小さな兆候も見逃さずに発見できるようになります。

● 今後進めたい研究

ヘム代謝系を、複数の酵素が秩序正しく会合・解離するタンパク質間相互作用ネットワークのモデルとして捉え、その機構を解明することで、生命現象を司る複雑な代謝経路の理解と制御につなげたいと考えています。
この他にも、これまでの知見を基盤として、ペプチド合成技術を活用し、従来の遺伝子組み換え法では限界のあった新機能タンパク質の開発にも取り組んで行くつもりです。
生体色素の微量定量、産学連携、民間を含む他機関等との共同研究等(技術相談、受託研究、共同研究)を希望します。

● 特徴ある実験機器、設備

分光光度計
簡易型嫌気性チャンバー
高速液体クロマトグラフィー

● 知的財産権(技術シーズ)

『金属プロトポルフィリン錯体の定量方法及びそれに用いる酵素センサー』特願2009-129822、坂本寛、古賀真也、小松英幸 、九州工業大学

● 過去の共同研究、受託研究、産業界への技術移転などの実績

▶『バイオセンサー素子マイクロペルオキシダーゼの化学合成法の開発』、独立行政法人科学技術振興機構、地域イノベーション創出総合支援事業、シーズ発掘試験、代表者、(2008-2009)
▶『人工センサー蛋白質を用いたヘム測定法の開発』、独立行政法人科学技術振興機構、地域イノベーション創出総合支援事業、シーズ発掘試験、代表者、(2006-2007)
▶『ヘムオキシゲナーゼの酵素化学的検討とヘム分解系マシーナリーへの展開』、日本学術振興会、科学研究費補助金、基盤研究C(1)、代表者、(2006-2009)

● 研究室ホームページ

疎水性の蛍光分子が相互作用してヘムの結合を 阻害している可能性 →蛍光波長が同程度の場合は親水性の蛍光色素を使用

ヘムの構造(鉄と結合した分子です)