イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

情報工学研究院

教授

安河内 恵子

やすこうち けいこ

所属
情報工学研究院
教養教育院
プロフィール
1987
九州大学
大学院文学研究科
社会学専攻博士
後期課程単位修得退学
1984
九州大学
大学院文学研究科
社会学専攻修士課程修了

自らの体験も含め、少子化・既婚女性の就業(継続)、女性就業・都市間比較など社会構造に対する問題意識を強く持っています。工学系学生には社会的に広い視野を持ってもらいたいとの観点から、教育にも力を入れてます。
より良い社会の実現に向けて意欲を持ち、科研による共同の実証研究:都市間比較研究の知見に基づいた政策の必要性などを提言し、行政と共に積極的に活動を進めています。

より詳しい研究者情報へ

少子化政策の基本は
「都市度別」サポートシステムの構築
-母親の就業支援と父親の家庭回帰がキーポイント-

● 研究テーマ

  • ❖既婚女性の就業と少子化に関する都市間比較研究

● 分野

社会学、都市社会学、家族社会学

● キーワード

既婚女性の就業、少子化、サポートネットワーク、都市間比較研究、地域社会、格差社会

● 実施中の研究概要

日本での少子化はますます進行していますが、都市度別に見た場合、少子化と既婚女性の就業率との間に関連性が見られることは、意外に知られていないように思われます。
私たちが行ってきた調査結果(福岡市と徳島市にて調査)からは、都市度が高い都市(福岡市)では出生率が低く、都市度が低い都市(徳島市)では相対的に出生率が高いこと、一方、子を持つ既婚女性の就業率は、都市度の低い都市である徳島市の方が、かなり高いという結果を得ました。
すなわち、都市度の高い都市は、子を持つと仕事を辞めて専業主婦になる妻が多いのであるが、むしろ、そのことが少子化につながっているのではないかということです。私たちの研究による知見を若干紹介すると、まず、都市度によって社会構造は異なりますが(図①)、都市度の低い都市では、相対的に出生率が高く(図②)、しかも子を持つ既婚女性(妻)の就業率も高い(図③)。これを可能にしている重要な要因は、妻を取り巻くサポートネットワークです(図④)。このことより、都市度の高い都市について言えば、この親族ネットワークに代わる代替サポートが必要であることが示唆されるのです。
一方、都市度の高い都市では専業主婦率が高くなり、子を持つことと夫の収入との間に相関関係がみられるようになりますが、これに対し、都市度の低い都市では、子を持つことと夫の年収とには相関関係はありません(図⑤)。すでに他の調査で、男性の婚姻率と収入との間に相関関係が見られることが明らかにされていますが(図⑥)、それに加えて、子を持つと専業主婦率が高くなるということは、家族形成のあり方全般を、夫の収入が決めていくということを意味します。男性側からみれば、収入が少ない男性の場合、結婚が難しく、また結婚しても子を持つことが困難になる社会になってきているということです。そのような社会は、男性、女性の両者にとって、自由度の大きな社会であるとは言えません。
日本の少子化対策としては、家族形成において、男性の収入だけに依存しない自由度の高い社会を形成していくことが必要であり、そのためには、既婚女性の就業率を高めていくこと、また、そのための施策が必要です。それが男女双方にとって幸福な社会の形成につながると思われるのです。そして、今、このような認識が、市民にとっても行政側にとっても必要とされていると言えます。

● 今後進めたい研究

既婚女性の就業継続には多くの課題がありますが、近年、その一つとして浮上してきたのが、中学受験です(中学受験率は、都内平均で20パーセント、東京23区で50パーセントを超える)。中学受験にとって母親の就業は大きなマイナスとなりうるが、一方、中学受験の拡大は、世代を超えた格差の固定化につながるベクトルをもつ重要な教育課題でもあります。こうした時代の流れの中で、母親は就業継続や教育課題にどのように対処しようとするのか、そこに都市間比較の視点を入れながら、行政・市民と連携しながら、実証的な調査研究を進めていきたいと考えています。

● 過去の共同研究、受託研究、産業界への技術移転などの実績

【科研(基盤研究)】
①『少子化と就業女性の支援ネットワークに関する都市間比較研究』 (2006-2008)
② 『既婚女性の就業とパーソナルネットワークに関する研究』(2002-2004)
③ 『都市社会における夫婦の社会ネットワークに関する研究』(1998-1999)
【科研(研究成果公開促進費:学術図書)】
① 『既婚女性の就業とネットワーク』 安河内恵子編書 (2008)
【対外活動】
① 福岡市情報公開審査会:部会長代理
② 福岡市個人情報保護審議会:委員
③ 福岡市都市計画審議会:委員
④ 国土交通省 独立行政法人 評価委員会:臨時委員 他

● 研究室ホームページ

①大都市と中小都市の社会構造の違い

②子ども数の分布と平均値(福岡市・徳島市の比較)

③都市別に見た子どもを持つ既婚女性の就業比較

④空間別親族数(福岡市・徳島市の比較)

⑤夫の年収別に見た都市別の子どものいる人の割合

⑥年収別・年齢別に見た若年男性の有配偶率