イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

情報工学研究院

教授

有馬  裕

ありま ゆたか

所属
情報工学研究院
マイクロ化総合技術センター
プロフィール
1960
生まれ
1998
博士(工学)
東京大学
1985
熊本大学大学院
理学研究科修士課程物理学専攻修了

当研究室では、マイクロ化総合技術センター内に整備されているLSI設計設備やLSI製造設備を駆使して、LSIデバイスを実際に試作する実証的研究を行っています。センター施設で独自の半導体素子やLSIを自由に設計し試作できるというメリットを活かして、新構造のLSI基本素子から高性能回路構成、新型LSIアーキテクチャまで、幅広い研究テーマに取り組んでいます。
半導体集積回路技術の進展に伴い電子情報機器は飛躍的な発展を遂げていますが、人間の生活空間である現実世界(物理空間)とのインターフェース機能はまだ不十分です。特に意識しないでも、ストレスがなく、自然に誰もが低コストで活用できる電子機器を実現するため、物理空間と電脳空間とを高度に媒介するデバイス技術の研究開発に取組んでいます。

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位置検知の普及に不可欠の
「3次元2眼ステレオ視センサー」を数千円で!

● 研究テーマ

  • ❖リアルタイム3次元距離センサーを開発

● 分野

5103 電子デバイス・電子機器
5102 電子・電機材料工学
5104 通信・ネットワーク工学

● キーワード

LSI、半導体集積回路、半導体素子、LSI回路設計、アナログLSI、ニューラルネットワーク、イメージセンサー、加速度センサー、自律型LSI、インテリジェントセンサーLSI

● 実施中の研究概要

❖ 開発の背景

私たち動物にとって、立体感や距離感を瞬時に捉える2眼ステレオ視はとても有用ですが、装置として同様の機能を持ったものを作るのは容易ではありません。2眼ステレオ視センサーを作るには、2台のデジタルカメラと高性能の計算機が必要で、とても高価になってしまいます。また、装置サイズや消費電力も大きくなるという問題があります。その結果、現状ではそのような装置はあまり普及していません。そこで我々は、2眼ステレオ視センサーを一つのLSIで実現することに挑戦しています。そのLSIが実現できれば、装置サイズは小型のデジカメ程度になり、価格は数千円程度に激減させることができます。そうなればその装置は様々な応用製品に広く採用され、多くの人が便利に利用できるようになると期待されます。

❖ 主な開発成果

①3D視差センサーLSIを開発
 左右の「目」に相当する二つのイメージセンサーと、それらの視差を瞬時に検出できる高速演算回路が集積された3D視差センサーLSIは、2眼ステレオ視センサーの主要部となります。
②リアルタイム3次元距離センサーを開発
 3D視差センサーLSIを用いて開発した3次元距離センサーは、最大で毎秒100フレームの3次元位置検知ができます。
③ステレオ視用光学レンズの採用
 ステレオ視用光学レンズによって、2眼ステレオ視センサーのシングルチップ化が可能になります。また、その仕様によって、検知したい距離範囲や精度を設定できます。

❖ 応用分野

視野内物体の3次元位置検出が高速化できるので、ジェスチャー入力装置や、ドアの挟まれ防止装置、車載用危険警報装置、家庭用侵入者監視装置などへの応用が期待されます。

● 今後進めたい研究

今回開発した装置では、3D視差センサーの制御をFPGA(注1)で行い、簡単な後処理をPCで行っています。今後は、FPGAやPCの機能をLSI化し、2つのLSIで3次元距離センサーを実現します。また、ニーズに応じて、それら2つのLSIも将来は一つのLSIに集積化します。更に、様々な応用機器の研究開発も並行して実施します。
(注1)Field Programmable Gate Arrayの略。製造後のLSI(集積回路)に、ユーザーが必要な論理回路を定義して変更できるもの。

● 特徴ある実験機器、設備

クリーンルーム設備の全体構成(共通)
当クリーンルームは、面積360㎡、Class100~1000、ダウンフローの本格的なラインです。 装置は、マスク製作用EB(電子線)描画機、ステッパー、インプラ、プラズマCVD、ドライエッチャーなど一貫試作ラインとして整備しており、皆様のご利用をお待ちしております。現在は1μmCMOSの試作を行っており、半導体以外の微細加工技術の応用試作も可能です。
これらの製造装置は、2009年度に新しい装置に更新されています。レチクルマスク使用で0.35μm、EB直描で8nm程度までの微細加工が可能になります。

● 知的財産権(技術シーズ)

① 『視差センサおよび視差画像の生成方法』
(特徴量が実質無いもの同士の相関を無効にすることで後処理を容易にする回路方式)
特願2008-082590、発明者:有馬 裕
② 『半導体撮像素子およびその製造方法』
(近赤外光に対する受光感度を高める受光素子構造とその製造方法)
特願2008-082594、発明者:有馬 裕、馬場昭好
③ 『撮像素子』
(近赤外光に対する受光感度を高める受光素子構造)
特願2009-31027、発明者:馬場昭好、有馬 裕 
④ 『イメージセンサー及びそれを用いた視差センサー並びに視差画像の生成方法』
(特徴量が全く同じ場合でも複数の対象物の弁別を可能にする回路方式)
特願2009-42764発明者:有馬 裕

● 過去の共同研究、受託研究、産業界への技術移転などの実績

▶安全を保障するインテリジェントセンサーLSIの研究開発(2007)
▶バイオ・環境センサープラットフォーム技術の開発(2008)
▶自動車用センサー制御ICのあるべき姿

● 研究室ホームページ

① 3D視差センサーLSI   チップサイズは4.2mm×3.3mm。0.35μm標準CMOSプロセスで試作。上部の二つの矩形が左右の眼の役割を担う二つのイメージセンサー。下半分を占める大きな矩形部分が視差  検出回路。

③ ステレオ視用光学レンズ  上部2箇所のレンズから左右の画像が入射され、左右2枚の反射鏡と中央のプリズムで左右の2画像が1箇所に集められ、3D視差センサーLSI上の左右2つのイメージセンサーに投射される。

② 3次元距離センサー   3D視差センサーLSIと制御用FPGA、そして、簡単な後処理を行うPCで構成される。最大で毎秒100フレームの3次元位置検知ができる。

2眼ステレオ視の原理  近くにある物ほど、左右の目で見た位置のズレが大きくなる。そのズレ具合で距離(奥行)を把握できます。2つの目で見た位置のズレを視差といいますが、これが大きいほど、近くにあるように見え、視差が小さいほど、遠くにあるように見えます。このように、2つの目で生じる視差を正確に検知することで距離を把握できます。