イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

工学研究院

准教授

吉川 浩一

きっかわ こういち

所属
工学研究院
機械知能工学研究系
プロフィール
1963
生まれ
1993
博士(工学)
東京大学大学院
1993
東京大学大学院大学院工学系研究科精密機械工学専攻博士課程修了
1990
東京大学大学院大学院工学系研究科精密機械工学専攻修士課程修了

小学生のころから模型をよく自作しており、工作好だったところから設計に興味を持ち、大学時代にはインテリジェントCADの研究に取り組んでいました。その中で、工業製品の製造プロセスにも関心が広がり、現在では、生産技術の高度化を研究分野にしています。

受賞
▶2001 九州工学教育協会 九州工学研究協会賞
▶最優秀論文賞  Organizing Committee of 10th CIRP International Workshop on Modeling Machining Operations. Italy (2007)

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放電加工における粗加工の能率を格段に改善する新加工法

● 研究テーマ

  • ❖加工液の吸引と脈動流の調整による放電加工時のくりぬき加工の高能率化

● 分野

生産システム、特殊加工、工作機械

● キーワード

放電加工(EDM)、EDMスラッジ排出、EDM加工液の供給法

● 実施中の研究概要

❖くり抜き放電加工の加工経路最適化のための幾何計算に基づく加工時間予測法

金型などの凹形状を放電加工法で作成する場合、従来の加工法では除去する部分すべてを鉄粉にするため、長時間を必要とします。開発中の方法はL字形電極を使って、粗加工として、ブロックで粗取りする方法です。(これを「くり抜き放電加工法」と言います:付図に詳細を示す。)くりぬき放電加工は、粗加工を目的にしており、曲面形状を加工する場合L字電極では除去できない部分が発生します。この場合、L字電極水平部の長さを短くすれば、除去できない領域は小さくなりますが、くりぬきの利点がなくなってしまいます。そこで、加工時間を予測するシステムを開発し、L字水平部の長さを変えながら加工時間を求め、適切なL字水平部の長さがあることを示しました。

● 今後進めたい研究

セラミックスの放電加工による曲面の創成
-人工骨などへの適用を視野に-  
材料の硬度にかかわりなく加工が可能な放電加工の特徴を生かし、セラミック系材料の加工に取り組んでいきたいと思っています。これにより、需要が増大している人工関節など人工骨を迅速に提供できる可能性が期待できるからです。導電性のないセラミックも表面のみ導体皮膜を生成すれば放電加工が可能であることが報告されています。しかし、基礎実験段階であり、任意の曲面を加工した例は報告されていません。

● 特徴ある実験機器、設備

5軸制御マシニングセンター:5軸同時制御が可能
3軸リニア駆動型彫放電加工機:高速駆動が可能
三次元座標測定器
ミニチュアねじ締め付けトルク測定装置:複数の微小トルクを同時に計測可能

● 過去の共同研究、受託研究、産業界への技術移転などの実績

▶『放電加工による画期的な形状創成加工』多くの曲面で構成される凹面形状の金型などの加工は、放電加工機(EDM)(注1)によることが多い。この精度や加工能率は、使用される電極(銅またはカーボン製)の消耗や、加工時に発生する鉄粉の排出の影響を受けます。現在通常行われている総形の電極を用いたZ軸方向に振動させる方法の加工能率を抜本的に向上させるためにL形の電極を用いた「くりぬき加工法」を研究してきました。これまでの研究成果から、L形電極の変形などの問題は残すものの、問題点は集約されてきました。 
【関連論文】 『「加工液吸引式形状創成放電加工の基礎研究」 - 加工条件と工具消耗量の関係 - 』電気加工学会講演集 (2001) 77-78
▶加工創成面の幾何シミュレーション 
機械加工後の磨き加工を省略できる加工面アラサを実現するために、ボールエンドミル工具で加工した表面の形状を詳細に計算するシステムを開発しました。このシステムを利用して工具の姿勢(傾き)を変えながら計算を繰り返した結果、微小な傾き(3度以下)で粗さに大きな差があることを究明しました。
【関連論文】 『球面のボールエンドミル加工における加工創成面の理論解析 (第3報) - 加工面形状の工具姿勢角依存性 』
精密工学会誌、69 -3 pp. 407-411 (2003)
(注1)放電加工機(EDM= electrical discharge machining)とは、電極と被加工物の材料との間で短周期のアーク放電を行うことで材料表面を除去する加工方法。切削加工が困難な材料に適用されることが多い。

● 研究室ホームページ

新加工法によるくり抜き方法

新旧放電加工の比較