イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

工学研究院

教授

中戸 晃之

なかと てるゆき

所属
工学研究院
物質工学研究系
プロフィール
1965 生まれ
1992 博士(工学) 
   早稲田大学大学院
   理工学研究科応用化学専攻
   博士後期課程修了
1989 工学修士
   早稲田大学大学院
   理工学研究科応用化学専攻
   修士課程修了

2001年に、無機層状結晶を剝離させたナノシートのコロイドが、ゲルや液晶といった「柔らかな構造体」を作ることを見つけました。当時、無機結晶から液晶ができるなどと言っていた研究者は世界で数人、日本では皆無でした。しかし、無機材料化学に新しい考え方をもたらすことを確信し、手探りで研究を進めてきました。

より詳しい研究者情報へ

セラミックスでできた液晶、
めざすは”生物みたいな瀬戸物”

● 研究テーマ

  • ❖無機ナノシート液晶の開発と用途探索
  • ❖無機ナノシート分散体の相分離を利用した階層構造の形成と機能発現
  • ❖無機異方性粒子による柔構造材料の開発

● 分野

無機工業材料、ナノ材料・ナノバイオサイエンス、機能物質化学

● キーワード

無機ナノシート、コロイド、液晶、ゲル、無機ー有機相互作用

● 実施中の研究概要

 私の研究室では、硬い無機結晶から、柔らかな構造体を作り、その機能を引き出す研究をしています。
 これまで無機結晶は、その特徴である硬さ、構造の明確さ、そして高温のような過酷な環境に耐える安定性といった特徴にもとづいた応用が注目されてきました。一方、化学者にとって究極の機能材料である生物は、柔らかさ、構造の曖昧さ、そして環境に対する鋭敏な応答、といった特徴をもっていて、これは無機結晶の特徴と真っ向から対立します。では、無機結晶と生物の性質を融合させることができれば、どういう材料が得られるでしょうか。硬さと柔らかさ、秩序と自由、安定と応答、といった相反する要素の協調によって、今まで見たこともない性質を引き出せると思いませんか。
 これまでに、層状の無機結晶(グラファイトや粘土のように原子の板が積み重なってできた結晶)から、液晶を作れることを明らかにしました。これは、層状結晶の積層をバラしてできる板(厚さが1 nmくらいなので、ナノシートと呼んでいます)を適切な条件で溶媒に分散させて得られます。無機物を構成要素とする液晶はほとんど知られていないので、そのでき方、構造、性質などを一つ一つ調べています。また、この液晶をベースとして、より複雑な構造を組み立てたり、光エネルギー変換(光エネルギーを燃料や電気に変える)機能を引き出す研究も行っています。

● 今後進めたい研究

「曖昧さ」を内包することによって高度な性能を発揮する、いろいろな無機材料を開拓してゆきたいと思っています。めざすのは、「生体組織みたいな無機材料」の創出です。

● 特徴ある実験機器、設備

偏光蛍光顕微鏡、
方形毛細管を用いて複屈折を観察する装置、
各種分光光度計、
コロイド試料用X線回折装置

● 知的財産権(技術シーズ)

1.層状ニオブ酸化物剥離層ゲルおよびその製造方法,特願2002-006338.
2.層状ニオブ酸化物から合成される有害有機化合物吸着剤,特願2002-035063.
3.酸化ニオブナノシート液晶及びその製造方法,特願2002-273477.

● 過去の共同研究、受託研究、産業界への技術移転などの実績

科学技術振興事業団(当時)「さきがけ研究21」
日産自動車(株)と共同研究

● 研究室ホームページ

http://www.che.kyutech.ac.jp/chem28/chem28.html