教授
おおいし てつや
2013年度に九州大学大学評価情報室(現在のインスティテューショナル・リサーチ室)において大学評価を支援する業務を遂行する部署に配属されました。その部署において大学評価をIR(Institutional Research)に活かす取り組みが遂行されていたことが研究のきっかけになっています。
組織の意思決定に資するデータに基づく支援のための手法の研究
高等教育学関連
Institutional Research
私はIR(Institutional Research)の研究をしています。IRとはデータに基づいて組織の意思決定をサポートする活動で、次の5つのフェーズを繰り返す情報支援サイクルという考えに基づいて遂行されるのが一般的です。
(1) 課題・ニーズの特定
(2) データ収集・蓄積
(3) データ再構築・分析
(4) データ報告
(5) 意思決定
この5つのフェーズを通して組織の意思決定をした後に、次の課題・ニーズの特定に繋げます。これらのフェーズのうち(1)と(5)は例えば大学の執行部等の意思決定者の業務で、(2)から(4)がIR担当者の業務です。
他の研究においてもデータを収集・蓄積して、データを再構築・分析して、データを報告をすることはあると思いますが、これらのデータは研究の目的に沿って収集・蓄積されますので、データの再構築・分析の方法とデータの報告の方法は自明であることが多いと思います。
一方でIRにおいては組織内に存在するデータを用いて意思決定に繋げるような報告をする必要があります。大学等の高等教育機関における組織内に存在するデータとは、例えば、学生に対しては入試データ、成績データ、就職データ等で、教職員に関しては授業担当、研究成果、研究室活動等であり、それぞれ別の目的を持って集められたデータであり、組織の意思決定のために集められたデータではなく、多種多様なデータを扱う必要があります。
このような状況にあるので、IRを遂行するためには、組織の意思決定に繋げるデータ報告をするために適切にデータを再構築して分析をする必要があり、そのためにはそれぞれのデータを持っている部署等からデータを効率よく収集して蓄積しなければなりません。
昨今の日本の大学においてはIRをうまく遂行できずに各大学のIR担当者は四苦八苦しています。私の研究では自身の大学での試行錯誤をして、効率よくデータを収集・蓄積する方法、分析しやすいようにデータを再構築する方法、効果的なデータ報告をする方法を探求しています。高等教育論、データサイエンス、統計学などが融合した複雑な知識が必要になりますので、良い事例の共有や困ったことの相談など、他の大学のIR担当者との交流しながら研究を遂行しています。
IRは複数の知識が必要な領域ではありますが、全てを備え持った人材は少なく、基本的には複数の人材が集まってそれぞれの知識を共有しながら業務を進めます。そのためIRに求める研修等の機会を求める人が多く、その種類も多種多様になっています。それらの状況を明らかにしてIRの発展に寄与するような研究を進めたいと思っています。
https://www.tetsuyaoishi.page/