准教授
おおつぼ ふみたか
大学院(修士)を修了後、鉄鋼メーカーに就職し、エンジニアとして社会人になりました。製鋼品事業で設計・生産技術・製品技術について学び、その後、研究する意欲が発起して、九工大へ戻ってきました。
凝固プロセスを活用して創る構造素材
金属生産工学
凝固工学、材料組織、材料プロセッシング、考古材料科学
カーボンニュートラル実現のため、水素還元による製鉄の超革新的技術開発が推進されています。一方で、電炉鋼の製造1t当たり、約40kgの還元スラグが生成します。また、高温状態の還元スラグは冷却とともに石化すると,花崗岩レベルの強度があることが判明しています。この人工石は高強度鋼に匹敵し、その強度を発する基である鉱物はゲーレナイト(Gehlenite;Ca2Al2SiO7)です(図1)。還元スラグから生成する人工石の歩留の向上を目指し、組成および製鋼条件の適正化に取り組むための研究を継続しています。
Ptはガラス溶解炉用構造材などの研究がなされています。一方、高温構造材料は代替材料がありません。そこで、Pt よりも融点が低く耐酸化性を発する元素を用い、溶融・凝固プロセスにより一体化素材の生成を試みています。Al及びPtをともに加熱すると、Alは660℃で溶融して固体Ptは液体Alに速やかに拡散します。その結果、Alの濃度が低下すると融点は上昇してAlはAl-Pt化合物として晶出します。図2は700℃で1h加熱した試験片断面の光学顕微鏡写真を示している。断面はPt基材及びAl-Pt化合物層からなり、4種類のAl-Pt化合物を生成します。NiやTiとAlでNiやTi基材の金属間化合物を生成する可能性があります。溶融・凝固プロセスを活用してAl-Pt化合物などからなる構造素材の創出を行っています。
中央アナトリア地方(現トルコ共和国)で見つかった鉄器に粗大フェライト組織が見られました(図3)。この鉄器は古代青銅器時代と鉄器時代の境界期(紀元前12世紀頃)ヒッタイト時代のものであり、このことは、最古級の人工金属鉄を生産する製鉄技術があったことを示唆しています。出土品の一部は焼結により製造されたものと考えられますが、この事実は広く認識されておりません。このように、道具を形にする方法は、(1) 鋳造、(2) 鍛造、(3) 固相粉末を原料とし、焼成して固化させる「焼結」があります。(3) 焼結は金属を硬くする方法としてはあまり知られていません。鉄製品の金属組織から製法技術を推測して、考古学者を含む専門家へ指摘しています。
溶融 鋳造 構造材料 合金
【共同研究】『廃石膏添加による還元スラグの性状変化』(2023)
【受託研究】『溶射プロセスに適応した合金設計とレーザ重畳ハイブリッド化による環境適合型高耐久性コーティングの開発』(2012)
【共同研究】『電磁鋼の粒界構造の解析』(2009)