教授
ほんだ あおい
最初に取り組んだ研究はバナッハ空間で成り立つ不等式の一般化問題です。2項や3項で成り立つ不等式をn項不等式に一般化するもので、30年近く前の仕事になりますが今でも海外の研究者たちからの問い合わせがあります。学会で興味を同じくする研究者と出会ったりディスカッションや新しいアイデアをインスパイアされることが楽しくて一生懸命問題に取り組みました。今もその延長にいます。
説明可能なAI
-数学と情報工学で実社会の問題解決や付加的価値を創造-
応用数学、数理解析学、ソフトコンピューティング
非加法的測度、非線形積分、深層学習、エントロピー
データ解析性能を維持しつつ予測や判断の根拠を説明できるAI、効率的な学習アルゴリズム、これらに伴う各種指標等々の開発を行っています。
現在、第3次AI(人工知能)ブームを牽引しているのがディープラーニングで、人間が前処理をすることなく自動的にデータの特徴を学習し画像や動画の認識や自動翻訳といった難しい問題にも次々に成果をあげています。この強力なAI技術にも弱点があり、それがアウトプットを出す過程の根拠を説明することができない、いわゆるブラックボックス問題です。この問題を数学の手法を用いて解決に貢献するのが現在の研究テーマです。未知データからの予測だけでなく、なぜその予測を行ったのか説明が可能になれば、医療分野や人物評価、金融など予測の根拠を必要とする分野へのAIの応用可能性が広がります。
今取り組んでいるのは解析学的に意味や振る舞いがわかっている関数や汎関数を数理モデルに組み込むことです。このようなニューラルネットワークを設計し、このネットワークによるAIを用いて学習後のネットワークから情報を抽出する手法を開発しています。主な道具は、必ずしも加法性を満たさない非加法的な測度とこの測度による積分です。加法性の仮定を外すことで積分は非線形汎関数となり、高い表現力を保持しつつノイズによるデータのゆらぎに影響されることなく、なおかつ測度、積分に用いる演算の意味を解釈することが可能となります。
情報工学的な視点に数学的基盤に基づく数学的視点を加えることで、手法の開発だけでなく原理原則の解明を目指しています。情報工学や社会システム工学などで使われている数理的な手法を解析学による理論解析の俎上に乗せ数学的性質を解明するために、離散的な手法を一般化(非離散化、連続化)することも現在特に力を入れている問題です。
また、医療データ、ファッションコーディネート、スマート電力などの実データを用いて、社会的要請による解決したい社会問題に特化したデータ駆動型の研究も行っています。
数学理論の構築(定理の発見)とデータ解析技術の開発の両方に興味を持っています。特にビッグデータ解析と深層学習、機械学習に関連するテーマを理論と応用の両面から進めたいです。解決すべき未解決の問題は山積みです。理論研究ではまずは種々の非線形積分の積分収束定理を全て解決したいです。
波形検査プログラム及び波形検査装置【非線形積分による類似波形の判定アルゴリズム】
出願番号(2014-167753, 2014 年08 月20 日)
非加法的測度の応用として某超大企業との共同研究で映像に主観的評価の客観的推定の研究を行っています。
人間の主観に関する新しいモデルを提案し、企業の持つ実データに適用したところ、従来の手法に各段に勝る結果が得られ、有効性を検証できました。