イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

情報工学研究院

准教授

徳永 旭将

とくなが てるまさ

所属
情報工学研究院
知能情報工学研究系
プロフィール
1983
生まれ
2008.3月
九州大学大学院
理学府地球惑星科学専攻
修士号取得
2011.3月
同博士号取得(理学博士)
2011.4月
明治大学
先端数理科学インスティテュート研究推進員
2012.4月
一般財団法人高度情報科学技術研究機構計算科学技術部 職員
2013.5月
大学共同利用機関法人 情報•システム研究機構 統計数理研究所データ同化研究開発センター 特任助教

子供の頃から自然が好きで、将来は何かしら地球や宇宙に関する研究がしたいと思っていました。実際に、学生時代は太陽系や地球を対象とする研究室に所属し、オーロラの研究をしていました。フィールドワークでは様々な国・地域を訪問しましたが、そのうちに大規模で多様なデータから重要な情報を見つけ出すデータサイエンスの重要性を実感し、現在のような研究を推進するようになりました。
地球科学は「自然を観察する」「現場を見る」ことが重要な学問です。インターネットを通して手軽に情報を収集できる時代になりましたが、実際には、現地に行って初めてわかること・感じることの方が、圧倒的に多いことを知りました。データサイエンスの研究を推進する現在も、機会があれば研究機関や企業に赴き、データが計測される設備を自分の目で直接見せてもらい、現場の研究者や技術者と議論を交わすようにしています。

受賞
2013 統計関連学会連合 コンペティション講演最優秀報告賞
2009 第126回地球電磁気・地球惑星圏学会学生発表彰(オーロラメダル賞)

大量データに駆動される知識発見とモノづくり

● 研究テーマ

  • ❖ ベイズ推論や統計的機械学習を基軸としたイメージデータ解析技術の研究
  • ❖ 自動外観検査など, モノづくりの現場を支えるイメージ解析AIの研究
  • ❖ 線虫の神経細胞レベルの膜電位/Ca²⁺同時イメージングに基づくニューロモルフィックAIの研究

● 分野

知能情報学

● キーワード

統計的機械学習、画像処理、自動外観検査、コンピュータビジョン、バイオイメージインフォマティクス、 プロセスインフォマティクス、ニューロモルフィックAI、膜電位イメージング、カルシウムイオンイメージング、線虫C. elegans

● 実施中の研究概要

イメージング技術の進歩により、産業や自然科学の様々な分野で、先端的なイメージングデータが蓄積されています。それらを十分に活用する上で、データサイエンスやAI技術が以前にも増して重要視されています。私たちの研究室では、ベイズ推論や統計的機械学習を基軸とした、先進的なイメージデータ解析技術の研究を行なっています。対象は、宇宙科学、気象学といった大きな空間スケールの現象を扱う分野から、生物学のように細胞の中のミクロな事象を解析する分野まで、多岐にわたります。自然だけでなく、次世代半導体の製造といったイノベーティブな産業にも活用しようとしています。世の中に既に存在する情報を活用するだけではありません。私たちは、生物の脳の情報処理の仕組みを計測する独自の計測技術の開発にも取り組んでいます。現在のAIも、生物の神経ネットワークを模倣したものですが、AIの学習に大量のデータや電力を必要とするという欠点があります。一方、生物の神経細胞の機能には、まだまだ未解明な部分がたくさんあります。私たちは、線虫という生物の細胞レベルの情報処理の仕組みを、従来とは異なる方法で可視化することに成功しました。そこから得られた知見からヒントを得て、「使い勝手の良い」AIの仕組みを確立することを目指しています。まだまだ基礎研究の段階のものが多いのですが、成果の一部を「品質検査AI」という形で役立てるため、複数のモノづくり企業との共同研究を進めています。自然や社会を含めた大きな循環の中で、人とAIが協働し共に高め合う – そのような世界の実現に貢献することが私たちの大きな目標です。

● 今後進めたい研究

短中期的には、私たちの研究する外観検査AIがどのように社会に役立つのか、製造業を中心に、医療、防災、農業、介護などでの実証試験を進める予定です。また、今後は実空間だけでなく、デジタルツインでの3D画像認識AI技術も研究を進めていく予定です。長期的には、生物にとっての知性とは何か、分子レベルから細胞レベル、ニューラルネットレベル、そして身体レベルまで横断的な理解を目指した研究を推進したいと考えています。

● 特徴ある実験機器、設備

AIの訓練に必要な高性能GPU計算サーバを複数台運用しています。サーマルカメラ、イベントカメラ、3Dスキャナなど、様々なタイプの撮影装置を活用しています。また、神経細胞の膜電位イメージングのための光学計測機器の一部を所有しています。

● 知的財産権(技術シーズ)

▶特願2021-189725「GLCICによる欠損補間に基づく教師なし画像異常検知システム」
▶特願2022-59045「画像処理・解析装置および画像処理・解析方法」
▶特願2022-115074「外観検査システム、及び外部駆動型視注視機構」
▶特願2022-035911「非接触脈拍推定装置」
▶特願2023-057149「光退色補正装置及びこれを用いた膜電位変動の解析装置、並びに光退色補正方法、発表時間補正プログラム」
▶PCT/JP2023/010330「外観検査システム、及び外部駆動型視注視機構工業所有権区分」
▶特願2023-203749「異常検出装置、異常検出方法及び異常検出プログラム」
▶特願2024-010605「画像処理装置、画像処理方法及び画像処理プログラム」

● 過去の共同研究、受託研究、産業界への技術移転などの実績

【受託研究】
『JST戦略的創造研究推進事業さきがけ:学習型動態モーフィングによる神経間シグナル伝達特性の解明』(2018-2022)
【共同研究①】
『熱交換器 AIによる外観検査技術開発』(2021-) 
【共同研究②】
『NEDO官民による若手研究者発掘支援事業:外観検査AIを迅速に構築する外部駆動型視覚注視機構の確立』(2021-) 

● 過去の論文や著書などの業績

【論文】
T. Hayakawa, K. Nakanishi, R. Katafuchi, T. Tokunaga (2023) Layer-wise External Attention for Efficient Deep Anomaly Detection, In Proceedings of IMPROVE 2023, ISBN 978-989-758-642-2, SciTePress, pages 100-110. DOI: 10.5220/0011856800003497

J. Teo, I. Kurokawa, Y. Onishi, N. Sato, T. Kitazono, T. Tokunaga, M. Fujiwara, T. Ishihara (2022), Behavioral forgetting of olfactory learning is mediated by interneuron-regulated network plasticity in Caenorhabditis elegans, eNeuro 17 August 2022, 9 (4) ENEURO.0084-22.2022; DOI: https://doi.org/10.1523/ENEURO.0084-22.2022

T. Tokunaga, O. Hirose, S. Kawaguchi, Y. Toyoshima, T. Teramoto, H. Ikebata, S. Kuge, T. Ishihara, Y. Iino, R. Yoshida (2014), Automated detection and tracking of many cells by using 4D live-cell imaging data, Bioinformatics, 30(12):i43-i51.

● 関連リンク先

❖ 研究室紹介動画

❖ 研究室ホームページ

https://odd-turnover-860.notion.site/7ab34d523e47485ab9c1f98ffb4d919c

❖ より詳しい研究者情報

https://hyokadb02.jimu.kyutech.ac.jp/html/100000804_ja.html