教授
やすぎ まさひろ
研究者の道に進むきっかけは博士課程への進学でしたが、中学生の頃から電子ブロックで実験したり、論理回路や順序回路を設計・工作したり、マシン語プログラミング等をしていました。博士課程では、新しい並列アーキテクチャ上で計算を行うためのプログラミング言語の設計と実装をする機会があり、今に至っています。
高性能・高信頼システム技術にプログラミング言語から貢献する
ソフトウェア、高性能計算、計算機システム
並列処理、プログラミング言語、言語処理系、型システム、コンパイラ、高信頼、高性能計算
プログラミング言語で書かれたプログラムが本当に走るために不可欠な計算基盤のソフトウェア研究を行っています。特に、新しいプログラミング言語の設計や処理系実装(コンパイラの開発等)を行っています。これは、個別分野のアプリケーションの研究を行うのではなく、様々なアプリケーション(プログラム)を想定したユニバーサルな基盤として新たなプログラミングパラダイムを提案しようという話です。提案する基盤を効率よく簡単・安全に利用(アプリケーション作成/プログラミングと実行)可能なことを目指しています。様々な立場からのニーズがあり、例えば、使い易さ、信頼性、実行性能、容量、エネルギー効率等の面からの改善が望まれます。
マルチコア、計算機クラスタ、超並列計算環境(近代的なスーパーコンピュータの多くは超並列です)、広域分散環境といった新しい計算環境などで並列計算や分散計算により高速に動作させたいプログラムの作成を容易とする言語の研究、及びその効率良い実行のための言語処理系の実装技術(処理系の実現にあたってのコンパイル技法等)の研究を行っています。
高水準言語で書かれたプログラムをある中間言語で書かれたプログラムに翻訳し、その中間言語プログラムから最終的な実行形式を得る方法があります。中間言語としてC言語を使えば、第一段階の翻訳はある程度「プラットフォーム独立」とできます。しかし、高水準言語に、今後使うことのないデータを仕分ける「ごみ集め」機能等を持たせたいときはスタックの内容を参照・変更できなくてはなりません。そのため、中間言語において自分自身の計算状態(呼び出し元に眠る変数の値)にアクセスするためのL-closureと呼ぶ言語機構をC言語の拡張として提案し、設計・実装・改善を進めています。
様々な高水準言語からの翻訳が可能な汎用性の高い(夢の)型付中間言語に挑戦しています。
並列計算機
大量の木構造データ上の探索高速化向けデータ再配置技術の特許 (特許第4719859号)
【受託研究】
①『IPA創造的ソフトウェア育成事業「並列・分散処理基盤ソフトウエアの開発」,「並列言語のためのデータ駆動機能を実現する共有メモリアーキテクチャ用ランタイムライブラリ」』(1996, 1997)
②『並列・分散処理研究推進機構「並列処理のためのオブジェクト指向言語に関する研究」』(1996,1997,1998,1999)
【論文】
①Tasuku Hiraishi, Masahiro Yasugi, Seiji Umatani, and Taiichi Yuasa. Backtracking-based Load Balancing. In Proceedings of the 14th ACM SIGPLAN Symposium on Principles and Practice of Parallel Programming (PPoPP 2009), pp. 55-64, February 2009.
②八杉昌宏, 平石拓, 篠原丈成, 湯淺太一. L-Closure:高性能・高信頼プログラミング言語の実装向け言語機構. 情報処理学会論文誌:プログラミング, Vol. 49, No. SIG 1 (PRO 35), pp. 63-83, January 2008.
【受賞】
平成21年度情報処理学会論文誌プログラミング優秀論文賞受賞(2010年)