光を利用した生体情報の可視化技術
医用電子工学、計測工学
レーザ応用計測、医用生体計測、生体情報計測
人間をはじめ、ほとんどの生物には血液が流れており、これは生きていくために必要な栄養分や必要の無なくなった老廃物を排除するなど重要な役割があります。私たちの研究室では、病院などで病気の診断に役立てようと、血液の流れを画像化する技術の研究を主に行っています。この技術は、レーザ光を生体に照射したときの散乱光をTVカメラなどで検出し、コンピュータで解析を行い、図1のように血流マップと呼ばれている画像を測定するものです。
TVカメラで検出した画像にはスペックルと呼ばれる斑点模様しか見えませんが、これを画像解析する事で、血液の流れの大小を画像として観察することができます。また、この血流マップは、アニメーションのように心臓の拍動に応じて、刻々と変化する血液の流れの様子を観察することができます。
この技術の特徴は、光を用いて測定しているため、直接、目で見る事のできない血液の流れを、測定対象を傷つけることなく測定できる事です。この特徴を活かして、頭皮や皮膚などの血流を測定する装置についても研究を行っており、病気だけでなく、人類の永遠のテーマともいえる育毛剤の研究やアレルギー反応の検査にも役立っています。これらの血流測定装置は、東京大学をはじめ、北は北海道から南は九州までと複数の大学病院や開業医、製薬メーカーにて共同研究の形で使用されており、近い将来製品として世の中にデビューすることでしょう。
血流の画像化装置以外にも工場で作られるアルミニウム製品の表面の傷を定量的に検出する研究なども行っています。
私たちの研究室の最も大きな特徴は、画像をコンピュータに取り込む装置はもちろん、解析を行うコンピュータのソフトウェアまでこれらの測定装置を自ら製作していることです。 これは結構大変な事で、電子・電気回路から組み込み型マイコンやパーソナルコンピュータのプログラミング、測定や解析に関する理論など様々な技術の集大成ともいえ、理論だけではなく装置を作るという「技(わざ)」ともいえる技術を身につけることができます。
近年は、光を用いて植物の光合成状態を測定する技術についても研究を行っています。
これは植物の葉っぱより反射される光の成分の情報を解析するもので、昔から知られている技術です。しかし私たちは従来の測定方法は用いず、葉っぱに照射する光の当て方を工夫しその画像をカメラなどを用いて取得して、画像より解析する新たな方法を考案しています。
従来の研究に加え、小中学生には、物理現象などを体験させ理科などの科学分野に興味を抱かせる講義内容を、高校生には高校で習う数学でこれらの物理現象が表現できる手法など、物理と数学を組合わせることにより科学的な内容に興味を抱かせる講義など、統一的な講義に関する検討を進めています。
① 植物の育成情報の計測
② 小中高校生を対象に、科学に興味を持つような実験を生徒が体験するような物理(科学)の出前講義
LSFGシステム:Laser Speckle Flowgraphy(レーザスペックル血流画像化法)の略で、レーザ散乱現象を利用した眼底血流画像化装置の名称です。システムは眼科用、皮膚用など様々のものがあり、眼科用システムでは眼底カメラ、演算ユニット、パソコンで構成されています。使用するレーザは、近赤外光を用い、短時間測定のため眼に対する刺激は、ほとん殆どありません。
LSFGシステムに関する血流解析技術。CCDカメラなどで取得した画像データより血流情報を抽出する手法を考案。現在(有)ソフトケアにて販売している、LSFGシステムに応用されている。