教授
なかくき たかし
理研で研究員をしていた頃、生物現象をシステムとして捉え、そのメカニズムを理解するという研究テーマに出会いました。メカトロニクスのための制御工学だけでなく、生物システムのための制御工学も今後必要になると考えたのが研究のきっかけです。
分子サイバネティクス:分子を創って、繋いで、操る理論と技術
制御理論,知能システム,DNAコンピュータ
分子サイバネティクス,分子ロボティクス,複雑臓器制御系
ケミカルAIのための分子コンピューティングシステムの開発を行っています。本研究では、記憶を化学反応でどのように実現するか、記憶の書き込み、読み出しはどのように行うか、その学習則はどのようなものか、などの問いに答えることで、ウェットなシステムによる記憶・学習分子回路の開発を目指します。これは、化学の原理で動作する人工知能、言わばケミカルAIの実現を目指すことに他なりません。つまり、「化学的に実装可能なAIのフレームワークとは何か?」が本研究テーマの核心をなす学術的問いです。
超早期発見・超早期治療に向けた神経・臓器・免疫ネットワーク系の計測と制御技術の開発を行っています。本研究では、私たちの体の中に存在する巨大な神経・臓器・免疫ネットワーク系に対する解析・制御手法を開発することです。特に、糖尿病に代表されるエネルギー代謝に関連する疾病に着目し、これらの疾病を臓器間ネットワーク系の何らかの異変と解釈します。そして、制御理論とシステム生物学的なアプローチを用いて、ネットワーク系の異変を捉える計測手法(診断)と元の状態へと遷移させる制御手法(治療)の開発を目指します。
分子ロボットのための分子フィードバック理論の構築を行っています。現在、日本や海外の研究機関が、目に見えないほどの小さなロボット、大きさでいうとミクロンサイズのロボットの研究開発でしのぎを削っています。「医療応用のための分子ロボット」において、分子センサーからのシグナルを情報処理し、状況に応じてロボットの動きを調節するフィードバック制御回路が必要となります。生体分子のみで作られるロボット全体は、数学的には巨大な非線形システムとなるため、試行錯誤の設計は全く通用しません。そこで、制御理論に基づいた設計法の構築を目指した研究を行っています。
ケミカルAIという新原理の脳型コンピュータを実用化へと進めていくことが大きな目標です。実用化段階では民間企業と連携して,革新的なアプリケーションを開発したいです。また,複雑臓器制御系の基礎理論を医療応用へと繋げ,様々な疾病の超早期発見・超早期治療を達成する技術開発を進めたいです。
自動分注装置、プレートリーダー、蛍光分光光度計など、分子コンピューティングのウェット実験を行うための実験設備が整っています。
【論文】
・T. Nakakuki, et al, "Finite-time regulation property of DNA feedback regulator", Automatica, 114, 2020.
・T. Nakakuki, et al, "Ligand-specific c-Fos expression emerges from the spatiotemporal control of ErbB network dynamics", CELL, 141(5), 884-896, 2010.
・T. Katagiri, H. Kawamoto, T. Nakakuki, et al., "Individual hematopoietic stem cells in human bone marrow of patients with aplastic anemia or myelodysplastic syndrome stably give rise to limited cell lineages", Stem Cells, 31(3), 536-546, 2013.
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