イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

情報工学研究院

教授

末田 慎二

すえだ しんじ

所属
情報工学研究院
生命化学情報工学研究系
プロフィール
1970
生まれ
1998
博士(工学)
九州大学
1998
九州大学大学院
工学研究科博士課程
分子システム工学専攻修了
1995
九州大学大学院
工学研究科修士課程
合成化学専攻修了

当研究室では、ある、古細菌由来のビオチン固定化酵素※(BPL) が、他の生物には見られない、特異な性質を持っていることを発見しました。そして、この特異な酵素反応系を利用した、新規な生体分析技術の開発を行っています。※ビオチン固定化酵素とは、ビタミンの一種である、ビオチンという物質を、タンパク質に固定化する、反応を手助けする酵素のことです。

受賞
▶ 財団法人 手島工業教育資金団 平成13年度 工業技術研究賞(2002)

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新規プロテインタグ技術

● 研究テーマ

  • ❖タンパク質の分析手法の開発

● 分野

分析化学、生体関連化学

● キーワード

タンパク質分析、生物分析化学、プロテインタグ、酵素反応、蛍光分析

● 実施中の研究概要

特殊な酵素反応を利用した、プロテインタグシステム(注1)の開発を行なっています。
プロテインタグシステムは、遺伝子工学的手法に基づいて標的とするタンパク質に、人工的にタグ(ペプチドやタンパク質) を導入し、そのタグの性質を利用して、タンパク質の分離・分析を行なう手法です。このような、タグシステムを利用して、細胞内に存在するある特定のタンパク質を検出したり、細胞抽出液からタンパク質を精製することなどが、可能である。私たちの研究室では、ある特殊な酵素反応系を利用した、タグシステムの開発を行なっています。この酵素反応系では、酵素が反応後、その基質タンパク質と安定な複合体を形成する、という性質をもっています。基質タンパク質を、タグとして標的タンパク質に導入し、その酵素との相互作用を利用して、標的タンパク質の分離・精製や、蛍光検出を行なっています。本タグシステムは、タンパク質の分離・分析を行なうための、汎用性の高い生化学手法として活用することが可能で、試薬メーカーなどに、本技術を提供することにより、生化学キットなどとして売り出すことも可能であると考えています。ただ、現段階では、まだ改良の余地があり、研究を、さらに進める必要があると思っています。
(注1)分析対象の標的タンパク質に、ペプチドや別のタンパク質をタグ(目印、標識)として導入して、導入したタグの性質を利用して標的タンパクの分離や分析を行う技術。

● 今後進めたい研究

本プロテインタグ技術を、プロテインチップの作製に応用したいと考えています。
たとえば、各種センサー基板上にタンパク質を固定化するための技術として活用したり、細胞に存在するタンパク質をその場で蛍光観察できる技術に応用することも考えています。

● 特徴ある実験機器、設備

① 分子間相互作用定量SPR装置:Biacore J (メーカー;GEヘルスケア)
② 分子間相互作用定量QCM装置:Affinix QN (メーカー;イニシアム)
③ 蛍光プレートリーダー:マルチラベルカウンターARVOMX(メーカー;パーキンエルマー)
④ 中・低圧液体クロマトグラフィーシステム:BioLogic DuoFlow(メーカー;バイオラッド)
⑤ 時間分解蛍光測定装置:LS45(メーカー;パーキンエルマー)

● 知的財産権(技術シーズ)

【特許】
『タンパク等の分離・検出方法』特許公開番号2008-237163(2008年10月9日公開)出願人 : 国立大学法人 九州工業大学 発明人 : 末田慎二、田中一史、近藤寛樹

● 過去の共同研究、受託研究、産業界への技術移転などの実績

【受託研究】
『2段階ビオチン化反応を利用したタンパク質解析』科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 個人型研究 (さきがけタイプ) (2005-2009)

● 研究室ホームページ

*ビオチン固定化酵素(BPL)の触媒作用により、基質タンパク質(BCCP)にビオチンが固定化される。 BCCPを「タグ」として使用する。

酵素が反応生成物と安定な複合体を形成するということは通常考えられない現象だが、当研究室が発 見したこの酵素は、反応後、常温において反応生成物であるビオチン化されたBCCPと極めて安定 な複合体を形成するという特異な性質を有していることが分かった(図面上段)。

①標的タンパク質の捕捉、固定化→プロテインチップの作成に極めて有効 ②標的タンパク質のアフィ二ティー精製(分離・精製) ③標的タンパク質の蛍光標識化(蛍光検出)