イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

情報工学研究院

准教授

岩田 通夫

いわた みちお

所属
情報工学研究院
生命化学情報工学研究系
プロフィール
2014
農学博士
九州大学大学院
2014
九州大学大学院
生物資源環境科学府
生物産業創成専攻
博士後期課程修了
2011
九州大学大学院
生物資源環境科学府
遺伝資源工学専攻
修士課程修了

分子ネットワークに対して構築した数理モデルを用いたシミュレーションにより、生命現象を明らかにする面白さに魅了され、学生時代から国内外の研究者と研究を進めてきました。今後は、数理モデルを活用した創薬の研究領域を開拓していきたいと思います。

多様なビッグデータに基づくシミュレーションにより新薬を開発する

● 研究テーマ

  • ❖ データ解析とシミュレーション解析の融合による薬の作用メカニズムの解明
  • ❖ さまざまなオミックス関連ビッグデータを用いた数理モデル構築法の開発
  • ❖ 既存の抗がん剤の時系列の作用を模倣できる新たながん治療候補薬の予測

● 分野

生命・健康・医療情報学

● キーワード

バイオインフォマティクス 、機械学習、ドラッグリポジショニング、創薬、システム生物学、数理モデリング、数値計算

● 実施中の研究概要

 疾患の症状を和らげたり疾患を治したりするために私たちが普段服用している薬は、生体内のさまざまな分子に作用する生物活性化合物です。しかし、どの分子に作用しているのかなど、薬の作用メカニズムの全容はわかっていません。したがって、主作用(薬効)が高く、副作用を抑えた薬の開発のため、薬の作用メカニズムを明らかにすることは非常に重要な課題です。
 このような課題に対して、医薬ビッグデータの一つである化合物応答トランスクリプトームデータを用いた研究を実施してきました。化合物応答トランスクリプトームデータとは、薬を含む生物活性化合物をさまざまなヒト由来細胞株に添加して測定された、細胞内の遺伝子発現量のデータです。研究成果として、内寄生虫駆除剤であるフェノチアジンという薬が、前立腺がんの治療標的タンパク質であるアンドロゲン受容体に作用すると予測し、実際にその作用を実験的に検証しました(Iwata et al., Sci. Rep., 2017)。また、統合失調症の治療薬であるペンフルリドールという薬が、抗がん作用を示すと予測し、実際にその作用を実験的に検証しました(Iwata et al., J. Med. Chem., 2018)。
 さらに本研究室では、このような医薬ビッグデータ解析と並行して、生体システムの数値シミュレーションにより薬の作用を時系列で予測する手法を開発しています。手法の開発により、薬の有効性や安全性の時系列評価や多様な疾患に対する新たな治療候補薬の発見に貢献できます。

● 今後進めたい研究

トランスクリプトーム(遺伝子)データだけでなく、プロテオーム(タンパク質)やメタボローム(代謝物)のような多階層オミックスデータを統合的に解析し、薬の作用メカニズムの解明や、疾患治療候補薬の網羅的探索などを進めたい。また、企業や他大学などと継続的に連携し、研究成果を社会に還元していきたい。

● 過去の業績

【論文】Iwata, M., Mutsumine, H., Nakayama, Y., Suita, N., and Yamanishi, Y.* Pathway trajectory analysis with tensor imputation reveals drug-induced single-cell transcriptomic landscape. Nat. Comput. Sci. 2022;2:758–770.
【論文】Iwata, M., Kosai, K., Ono, Y., Oki, S., Mimori, K., and Yamanishi, Y.* Regulome-based characterization of drug activity across the human diseasome. NPJ Syst. Biol. Appl. 2022;8(1):44.
【論文】Iwata, M., Yuan, L., Zhao, Q., Tabei, Y., Berenger, F., Sawada, R., Akiyoshi, S., Hamano, M., and Yamanishi, Y.* Predicting drug-induced transcriptome responses of a wide range of human cell lines by a novel tensor-train decomposition algorithm. Bioinformatics 2019;35:i191−i199.
【論文】Iwata, M., Hirose, L., Kohara, H., Liao, J., Sawada, R., Akiyoshi, S., Tani, K., and Yamanishi, Y.* Pathway-based drug repositioning for cancers: computational prediction and experimental validation. J. Med. Chem. 2018;61(21):9583−9595.
【論文】Iwata, M., Sawada, R., Iwata, H., Kotera, M., and Yamanishi, Y.* Elucidating the modes of action for bioactive compounds in a cell-specific manner by large-scale chemically-induced transcriptomics. Sci. Rep. 2017;7:40164.

● 関連リンク先

❖ 研究室ホームページ

❖ より詳しい研究者情報