初期近代イギリス劇作書誌学本文研究 (Bibliographical and textual studies of early modern English drama)
初期近代イギリス文学
イギリス文学, 書誌学本文研究, 英国初期近代劇作
初期近代イギリスで制作された劇作が文学読本として受容されることを意図した、同時代における出版編集の発達過程を調査しています。16世紀末から、清教徒革命による内乱で劇場が閉鎖されるまでのおよそ50年間にイギリスで書かれた芝居のほとんどが、舞台に乗せることを最終目的としたものでした。そのため現存する版本の多くが読み物としては不完全な原稿をもとに活字化されたものです。中にはリハーサル中に長すぎる台詞をカットした後で、文脈の整合性を確認しないまま印刷にかけてしまったため、代名詞の先行詞が欠如していたり、後に言及される当のシーンが存在しない作品もあります。また、上演では一目瞭然の視覚的な情報や音響効果も、印刷原稿に記入されていなければ、欠落した状態で印刷されることがしばしばでした。ところが、18世紀に入ると俄かに、編集者を称する人々がそのような本文の不整合を正しながら上演の非言語的要素も本文中に言語化し、シェイクスピア劇をはじめとする往年の芝居の「真正テクスト」復元を謳った「現代版」の出版を開始します。初期近代イギリス劇作編集時代の幕開けです。このため、あたかも劇作文学編集の必要性が18世紀に突如として生まれたかのような説明もなされて来ました。しかし、劇作編集もまた自らの仕事を「編集」と呼ばず、編集者として名前を残さなかった人々が築いた暗黒時代に確立を見たものです。この暗黒時代に形成された編集の概念と具体的な手法を当時の劇作版本に当たって明らかにすることを目指しています。
①現在行っている研究に関係があり、かつ印刷者がまだわかっていない古版本の印刷者特定
②古版本印刷者特定に関する多角的方法論