准教授
いしかわ ともこ
大学生の時、留学生対象の日本語クラスを見学する機会があったのですが、その時初めて自分の母語である日本語を外国語として分析する経験をし、その面白さに気付きました。
学習者の良好な人間関係構築に資する日本語教育を考える
日本語教育
接触場面、普通体基調会話、就職活動、ビジネス日本語、年少者
普通体基調会話の教育方法に関する研究をしています。普通体基調会話とは、主に家族や友人間で使用される、「です・ます」といった丁寧体を使わない会話で、俗に言うタメ口、または、友だちことばのことです。日本語教育では、一般的に、誰に対しても無難に使うことのできる丁寧体が提示されますが、日本語学習者が仲間内で丁寧体を使った場合、意図せずしてよそよそしい印象を日本語母語話者に与え、それが人間関係の構築に影響してしまうことがあります。丁寧体を普通体に変換すれば解決する話だと思うかもしれませんが、実はそう単純ではありません。例えば、「レポート、もう出しましたか」を普通体にして「レポート、もう出したか」と言うと、何か威圧的な感じになってしまいます。また、普通体基調会話では、丁寧体基調会話よりも多くの男性的/女性的表現や方言が現れます。このような丁寧体と普通体の非対称性を整理して学習者に提示する方法を考えています。
日本語母語話者による普通体基調会話を観察していると、上記のような丁寧体と普通体の非対称性に気付かされるだけでなく、故意に丁寧体や自分の属性とは異なる表現を使うことで何らかの意図を表明している場面に遭遇するのですが、これは学習者には理解しにくい現象です。例えば、若い女性が同じく若い女友達に「メシ食いに行こうぜ」と言ったとします。母語話者はこれが仲間意識に基づいたふざけた物言いであると直感的に理解しますが、学習者の中には「この人は女性なのに男のような話し方をしていて下品な人だ」といった解釈をしてしまう人もいます。このような誤解釈を避けるには、多くの例に接して種々の解釈の可能性を知るといった訓練が必要となります。そこで私は、日本語母語話者の会話から実例を収集して分析を行い、その結果を反映させた教材を作成することを通じて、効果的な訓練方法の開発を試みています。
日本語能力が中級レベル程度の留学生の就職を日本語教育の側面から支援する方法について研究を始めたところです。従来の留学生の就職支援は上級レベル対象であることが多く、中級レベルの留学生は日本での就業の意思があるにも関わらず諦めてしまうことがあります。しかし、数は多くありませんが、中級レベルでも日本で職を得た留学生もいます。そのような成功事例の分析を通じて、中級レベルの留学生の就職に役立つ日本語教育の方法を考えたいと思っています。