教授
やすなが たくお
元々、理学部物理という、一見すると生物とは、縁が遠い学科の出身です。高校時代は、記述と記憶の「生物」にうんざりし、「物理」の説明できる世界に憧れていました。しかし、生物も物理現象/化学反応の一つである、という認識を、大学生の後半にようやく持つことができ、「生物物理」という、これも一見すると、不思議な取り合わせの分野に進みました。さらに、分子の世界をみるツールとしての電子顕微鏡に出会い、想像する世界から、観察できる世界へと、私のなかで一気に生物学が広がりました。高校時代に感じる分野の違いは、大学の中では融合分野として新しい世界が広がる源であることが多いのだ、と今では思っています。
生命が造り上げた三次元ナノ構造を観よう!
生物物理学、構造生物化学、画像処理
電子顕微鏡、生体分子、画像処理、クライオ技術、トモグラフィー、モータータンパク質
電子顕微鏡は、最高倍率100万倍に達する、nm(ナノメートル、10¯⁹m)の大きさのものを直接観察するために有力な方法です。金属などの無機物だけでなく、タンパク質などの生体高分子を直接見るときにも有効です。
しかし、電子顕微鏡で撮影したものは、二次元の写真です。この二次元の写真からコンピュータを使って、X線CTと同様に、タンパク質の真の姿である三次元像に再構成することが重要です。私たちは、そのための電子顕微鏡法、ソフトウェアの開発を行ってきました。また、できあがった三次元画像を良く観察するためには、コンピュータグラフィックス(CG)や仮想現実(バーチャル・リアリティー)の手法が重要です。
生命研究の対象は、モータータンパク質と呼ばれる、「動く」タンパク質です。その大きさは、数nmであり、このモータータンパク質の形を理解するためには、電子顕微鏡とコンピュータが必須です。
こうした技術を用いて、筋肉の弛緩状態の構造を世界に先駆けて可視化しました。
観たい人が、観たい時に、自由に細胞をズームイン・ズームアウトして観察できる、電子顕微鏡画像解析結果の取得とそのための表示システムの開発。(Google社が開発したグーグルアースの「細胞版」)
①観察したい生体を、超低温(−190℃)下で脱水することなく観察できる電子顕微鏡
(電子分光装置付/冷電解放出型電子銃付/クライオ対応)
②試料を傾斜しながら撮影可能な電子顕微鏡
(クライオ対応・電子線トモグラフィー機能付)
③上記のクライオ撮影に用いる凍結試料を作成する為の急速凍結装置
④電子顕微鏡画像(2次元)から、3次元像を再構成するためのソフトウェア一式(自作等)
開発してきた電子顕微鏡に関するノウハウおよび、電子顕微鏡画像処理(特に、三次元再構成法)に関するソフトウェア一式は、知的財産権を主張することなく、学会誌やホームページなどで積極的に公開し、また、無償で提供しています。産業界との共同開発、共同研究も積極的に進めています。
【(独)科学技術振興機構(JST)からの受託研究】
『電子線トモグラフィー・システムの開発に関する研究・開発』『電子顕微鏡画像処理プラットフォームに関する調査研究』産学での利用が可能な共通プラットフォームの開発が目的
【日本電子システムテクノロジー(株)との共同開発】
『電子顕微鏡法による連続傾斜シリーズの撮影の為のソフトウェアの共同開発』