教授
うめかげ としひこ
粉体は、各種工業原料として広く用いられていますが、固体や流体のような連続体とは異なり、不連続体である粉体や粒子群の力学機構にはまだよくわかっていないことがたくさんあります。そのような粉体の現象の不思議に魅せられて25年。数値シミュレーションの切り口から、粉体の現象の本質に迫る研究を今後も続けて行きたいと考えています。
粒子・流体系の複雑現象を
最先端のシミュレーション技術で明らかに
流体工学
流体工学、 粉体工学、 混相流工学、 粒子工学、 数値解析
粒子間の多体接触による相互作用をDEM(離散要素法)で計算し、粒子の運動方程式とガス流れのNavier-Stokes方程式を連成させた大規模数値シミュレーションを行なっています。実際に観察・測定することが困難な高炉および焼結炉の内部の粒状体現象を明らかにします。
粒子間の相互作用をDEM、SPH法(注1)、DSMC法(直接モンテカルロ法)で計算し、粒子の運動方程式とガス流れのNavier-Stokes方程式を連成させた大規模数値シミュレーションを行なって、高濃度から低濃度の種々の流動層など、粉粒体の流動化現象の力学機構を明らかにします。
粉粒体の構成関係および状態関係をDEMにより求め、それをSPH法に適用して検討することにより、静止及び流動粉粒体層の力学機構を明らかにします。
次世代高効率発電における石炭ガス化プロセスにおいて、重要な技術の一つである超高濃度粒子の連続分離に関する技術検討を数値シミュレーションによって行います。
(注1)SPH(Smoothed Particle Hydrodynamics)法:連続体計算手法の一種。
【共同研究等希望】
1.固気混相流の流動解析、産学連携、民間を含む他機関などとの共同研究を希望。粒子間の相互作用が二体衝突で記述できるような低粒子濃度から多体接触を考慮する必要のある高粒子濃度まで、あらゆる粒子濃度での数値シミュレーションの実施。
2.流動層の数値解析について、産学連携、民間を含む他機関などとの共同研究。均一流動層、気泡流動層、スラギング流動層、乱流流動層、循環流動層の数値シミュレーション。
3.粉体層の力学機構の数値解析について、産学連携、民間を含む他機関等との共同研究。粉粒体の構成関係および状態関係をDEMにより求め、それを連続体的計算手法であるSPH法に適用することにより、無数の粒子からなる粒状体現象の力学機構を明らかにする研究についても現在進めつつあります。
① 大容量ワークステーション:8CPUクラスタ, メモリー64GB実装1台
② 大容量ワークステーション:16CPUクラスタ, メモリー256GB実装2台
③ 位相レーザードップラー型2次元粒子速度・粒子濃度同時測定装置3台
『ガスワイピングノズル』(特許第3650802号)
※ガスワイピングノズル
メッキ鋼板製造時に、鋼板表面に発生するさざ波模様を、効果的かつ安価に抑制することが可能なガスワイピングノズルです。本ワイピングノズルは、スリット開口部にスリット長手方向に沿って、一定ピッチで複数の噴流遮蔽用構造体を設けることにより、カーテン状に揺らぐ大規模不安定変動を抑制することができ、メッキ鋼板表面に発生するさざ波模様による瑕疵(きず)を大幅に減少させることが可能にします。
【受託研究】
① 高炉におけるレースウェイ(raceway)(注2)形成挙動に及ぼす羽口形状の影響の解明(2004、2006)
② 高炉炉内の粒子現象の3次元DEM(離散要素法)シミュレータ開発(2006-2008)
③ 高炉の焼結層収縮および空隙形成の数値シミュレーション(2005、2007)
【共同研究】
地球シミュレータを用いた高炉内の粒子と気流の運動の大規模数値計算(2006-2008)
【受託研究】
① 高炉におけるレースウェイ(raceway)(注2)形成挙動に及ぼす羽口形状の影響の解明(2004、2006)
② 高炉炉内の粒子現象の3次元DEM(離散要素法)シミュレータ開発(2006-2008)
③ 高炉の焼結層収縮および空隙形成の数値シミュレーション(2005、2007)
【共同研究】
地球シミュレータを用いた高炉内の粒子と気流の運動の大規模数値計算(2006-2008)
(注2)レースウェイ(raceway)とは、製鉄の高炉で炉の下部にある送風羽口の後方にできる空間のこと。羽口から吹き込む熱風の温度は約1,250℃程度だが、レースウェイではコークスが燃焼して、温度が約2,250℃に達する。
実機と同一寸法で高炉の縦断面での粒子分布を計算した結果 [赤(鉱石)-黒(コークス)].
実機と同一寸法の高炉の羽口付近の水平断面で充填率分布の計算を実施した結果 [赤(低粒子濃度)-紫(高粒子濃度)].