イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

工学研究院

教授

梅景 俊彦

うめかげ としひこ

所属
工学研究院
機械知能工学研究系
プロフィール
1961
生まれ
1994
工学博士
九州工業大学大学院
1987
九州工業大学大学院
大学院工学研究科機械工学第二専攻修士課程修了

粉体は、各種工業原料として広く用いられていますが、固体や流体のような連続体とは異なり、不連続体である粉体や粒子群の力学機構にはまだよくわかっていないことがたくさんあります。そのような粉体の現象の不思議に魅せられて25年。数値シミュレーションの切り口から、粉体の現象の本質に迫る研究を今後も続けて行きたいと考えています。

粒子・流体系の複雑現象を
最先端のシミュレーション技術で明らかに

● 研究テーマ

  • ❖高炉および焼結における粒状体現象に関する研究
  • ❖粉粒体の流動化現象に関する研究
  • ❖静止および流動粉粒体層の力学機構に関する研究
  • ❖サイクロンを用いた超高濃度粒子分離に関する研究

● 分野

流体工学

● キーワード

流体工学、 粉体工学、 混相流工学、 粒子工学、 数値解析

● 実施中の研究概要

❖ 高炉および焼結炉における粒状体現象に関する研究

粒子間の多体接触による相互作用をDEM(離散要素法)で計算し、粒子の運動方程式とガス流れのNavier-Stokes方程式を連成させた大規模数値シミュレーションを行なっています。実際に観察・測定することが困難な高炉および焼結炉の内部の粒状体現象を明らかにします。

❖ 粉粒体の流動化現象に関する研究

粒子間の相互作用をDEM、SPH法(注1)、DSMC法(直接モンテカルロ法)で計算し、粒子の運動方程式とガス流れのNavier-Stokes方程式を連成させた大規模数値シミュレーションを行なって、高濃度から低濃度の種々の流動層など、粉粒体の流動化現象の力学機構を明らかにします。

❖ 静止及び流動粉粒体層の力学機構に関する研究

粉粒体の構成関係および状態関係をDEMにより求め、それをSPH法に適用して検討することにより、静止及び流動粉粒体層の力学機構を明らかにします。

❖ サイクロンを用いた超高濃度粒子分離に関する研究

次世代高効率発電における石炭ガス化プロセスにおいて、重要な技術の一つである超高濃度粒子の連続分離に関する技術検討を数値シミュレーションによって行います。
(注1)SPH(Smoothed Particle Hydrodynamics)法:連続体計算手法の一種。

● 今後進めたい研究

【共同研究等希望】
1.固気混相流の流動解析、産学連携、民間を含む他機関などとの共同研究を希望。粒子間の相互作用が二体衝突で記述できるような低粒子濃度から多体接触を考慮する必要のある高粒子濃度まで、あらゆる粒子濃度での数値シミュレーションの実施。

2.流動層の数値解析について、産学連携、民間を含む他機関などとの共同研究。均一流動層、気泡流動層、スラギング流動層、乱流流動層、循環流動層の数値シミュレーション。

3.粉体層の力学機構の数値解析について、産学連携、民間を含む他機関等との共同研究。粉粒体の構成関係および状態関係をDEMにより求め、それを連続体的計算手法であるSPH法に適用することにより、無数の粒子からなる粒状体現象の力学機構を明らかにする研究についても現在進めつつあります。

● 特徴ある実験機器、設備

① 大容量ワークステーション:8CPUクラスタ, メモリー64GB実装1台
② 大容量ワークステーション:16CPUクラスタ, メモリー256GB実装2台
③ 位相レーザードップラー型2次元粒子速度・粒子濃度同時測定装置3台

● 知的財産権(技術シーズ)

『ガスワイピングノズル』(特許第3650802号)
※ガスワイピングノズル
メッキ鋼板製造時に、鋼板表面に発生するさざ波模様を、効果的かつ安価に抑制することが可能なガスワイピングノズルです。本ワイピングノズルは、スリット開口部にスリット長手方向に沿って、一定ピッチで複数の噴流遮蔽用構造体を設けることにより、カーテン状に揺らぐ大規模不安定変動を抑制することができ、メッキ鋼板表面に発生するさざ波模様による瑕疵(きず)を大幅に減少させることが可能にします。

● 過去の共同研究、受託研究、産業界への技術移転などの実績

【受託研究】
① 高炉におけるレースウェイ(raceway)(注2)形成挙動に及ぼす羽口形状の影響の解明(2004、2006)
② 高炉炉内の粒子現象の3次元DEM(離散要素法)シミュレータ開発(2006-2008)
③ 高炉の焼結層収縮および空隙形成の数値シミュレーション(2005、2007)
【共同研究】
地球シミュレータを用いた高炉内の粒子と気流の運動の大規模数値計算(2006-2008)
【受託研究】
① 高炉におけるレースウェイ(raceway)(注2)形成挙動に及ぼす羽口形状の影響の解明(2004、2006)
② 高炉炉内の粒子現象の3次元DEM(離散要素法)シミュレータ開発(2006-2008)
③ 高炉の焼結層収縮および空隙形成の数値シミュレーション(2005、2007)
【共同研究】
地球シミュレータを用いた高炉内の粒子と気流の運動の大規模数値計算(2006-2008)
(注2)レースウェイ(raceway)とは、製鉄の高炉で炉の下部にある送風羽口の後方にできる空間のこと。羽口から吹き込む熱風の温度は約1,250℃程度だが、レースウェイではコークスが燃焼して、温度が約2,250℃に達する。

● 関連リンク先

❖ 研究室ホームページ

❖ より詳しい研究者情報

実機と同一寸法で高炉の縦断面での粒子分布を計算した結果 [赤(鉱石)-黒(コークス)].

実機と同一寸法の高炉の羽口付近の水平断面で充填率分布の計算を実施した結果 [赤(低粒子濃度)-紫(高粒子濃度)].