教授
こだま たかし
在学中は生物物理学を対象とした顕微分光や走査型プローブ顕微鏡技術を用いた一分子測定に従事していましたが、卒業後に留学したスタンフォード大学機械工学専攻において熱工学に強い関心をいだき、今日までナノ構造材料を用いた新規熱機能性材料の開発に取り組んでいます。
マルチスケール熱伝導測定技術を利用した新規熱機能性材料の開発
熱エネルギー工学、マイクロ/ナノ加工、マルチスケール熱伝導測定
高熱伝導材料、熱電変換材料、断熱材、ナノ構造材料
熱エネルギー工学は現在、高密度集積素子の冷却問題をはじめ,石油資源の枯渇や原子力発電の安全性への懸念から嘱望される代替エネルギー問題といった多くの次世代科学の命題に対して非常に重要な役割を担っている学問領域です。そして産業界は現在、大きな技術革新を基礎研究に求めているといえます。私はそのような熱工学分野の中で、特に固体材料の熱伝導制御や新規材料開発に取り組んでいます。図1のように、温度差から直接電力を取り出す熱電変換素子ばかりでなく、銅を上回る優れた高熱伝導材料や市販材料よりもさらに熱伝導率の低い新規真空断熱材や透明断熱材など、環境エネルギー問題に関連性の高い研究テーマが熱エネルギー工学には数多く存在します。そのような中で私は、特にナノ構造材料を用いた新規熱機能性材料の開発に取り組んでいます。代表的な研究成果として、図2に示したように分子内包によるカーボンナノチューブの熱伝導性の変調効果の発見が挙げられます。様々な形態の材料に対して適切な研究手法を選定し、熱伝導率を高精度で定量するマルチスケール熱伝導測定技術を主軸として研究に取り組んでいます。
銅を上回る優れた電気・熱伝導体や既存材料よりも優れた真空断熱材料、透明断熱材など、省エネルギー技術に役に立つ次世代熱機能性材料の開発に取り組んでいきます。
マルチスケール熱伝導測定を実現するために必要な自作の電気計測装置や光学測定装置、クライオスタット、微細加工装置など
① 塩見淳一郎, 柏木誠, 児玉高志 「シリコンバルク熱電変換材料」
国立研究開発法人科学技術振興機構, 出願番号:特願2017-249463 出願日:平成29年12月26日
Junichiro Shiomi, Makoto Kashiwagi, Takashi Kodama, Japan Science and Technology Agency, US20210057626A1
②児玉高志, 篠原伸広, 大堀真直, 塩見淳一郎「断熱材および真空断熱材」
AGC, 出願番号:特願2017-110137 出願日:平成29年6月2日
2016年4月~2023年3月まで7年間、東京大学において社会連携講座の特任教員として勤務し、AGC社や古河電工株式会社とともに断熱材の開発や次世代長尺電線の開発に取り組んできました。
【論文】
①T. Kodama*, et al., "Modulation of interfacial thermal transport between fumed silica nanoparticles by surface chemical functionalization for advanced thermal insulation ", ACS Appl. Mater. Interfaces., 13, 17404−17411 (2021).
②K. Adachi, K. Daicho, M. Furuta, T. Shiga, T. Saito, T. Kodama*,"Thermal conduction through individual cellulose nanofibers", Appl. Phys. Lett., 118, 053701ー1ー5 (2021).
③T. Kodama*, M. Ohnishi, W. Park, T. Shiga, J. Park, T. Shimada, H. Shinohara, J. Shiomi, K. E. Goodson*, "Modulation of thermal and thermoelectric transport in individual carbon nanotubes by fullerene encapsulation", Nature Materials, 16, 892ー897 (2017).
④T. Kodama*, A. Jain, K. E. Goodson, "Heat conduction through a DNA-Gold composite", Nano Lett., 9(5), 2005―2009 (2009).