イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

工学研究院

准教授

小澤 晃平

おざわ こうへい

所属
工学研究院
機械知能工学研究系
プロフィール
1987 生まれ
2017 博士(工学)東京大学大学院
2017 東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻博士後期課程修了
2014 東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻修士課程修了
2015 - 2017 日本学術振興会 特別研究員 DC2, (2015-2017)

小学生の頃、日本人宇宙飛行士が宇宙に行く姿や、国産ロケットが打ち上げられる様子をテレビで見ていました。当時は宇宙で自由に活動する未来が描かれていましたが、そうはなっていません。多くの人が地球から飛び出して活動できる世界を作りたいと思ったことが研究のきっかけです。

受賞
AIAA Hybrid Rockets Best Student Paper Award (2016)
Japanese Rocket Society Award (2014)

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安全かつ高機能な化学ロケット推進

● 研究テーマ

  • ❖ハイブリッドロケットエンジンの推進剤を使い切る研究
  • ❖燃焼過程で液化する固体燃料のエンジン内部流動の研究
  • ❖デトネーションの実験的研究

● 分野

航空宇宙工学 流体力学 燃焼学

● キーワード

ロケット工学 境界層燃焼 デトネーション

● 実施中の研究概要

 ハイブリッドロケットは、燃焼が固体燃料表面近傍のみでしか進行し得ず、他の形式に比べて安全なロケット推進です(図1)。これまでは、世界初の民間資本のみでの有人宇宙飛行を実現した機体などで採用された他、宇宙教育でも多用されてきました。
 しかし、推力、燃焼効率が依然として低く、推進剤残渣(燃え残り)が多いなどの問題から、未だに軌道上に衛星を投入した実績がありません。推力の増大、燃焼効率については、近年大幅な改善の兆しがありますが、推進剤残渣についてはあまり指摘されてきませんでした。
 これまでの研究では、旋回流を制御することで酸化剤と燃料のバランスを維持しつつ推力変調させるという、ハイブリッドロケットの高機能化を提案しました。このアイディアを飛翔計算のエンジンモデルに組み込んだ結果、酸化剤の旋回強度をフィードバック制御できれば、推進剤残渣を劇的に低減でき、従来よりも高い飛翔性能を高精度に達成することが可能であるということがわかりました(図2)。
 続いて、この形式のエンジンのプロトタイプを製作し、定常状態で燃焼実験を行うことで、同一のエンジンを用いて、酸化剤総流量と独立に燃料流量を制御できることを概念実証しました(図3)。
 さらに、この新型ハイブリッドロケットエンジンの燃料消費スピードを予測する理論を構築しました。燃焼現象と旋回流れの相互作用が固体燃料への熱輸送に与える影響を現象論的に明らかにし、また、定量的に評価しました。
 この他にも、海外大学との共同研究で、ハイブリッドロケットを常温着火する研究や、火炎の自発光を分析してその性能を推定する等の研究を行ってきました。

● 今後進めたい研究

1.上記のアイディアを衛星打ち上げロケットに適用して飛翔計算を行い、高い性能が達成されることを明らかにしたいと考えています。
2.ハイブリッドロケットの固体燃料についての研究も新たに開始したいと考えています。固体燃料がどのようなプロセスで燃焼して行くか知ることは、エンジン設計上、大変重要です。
現状では静置環境での燃焼の様子が観察されていますが、一部の高性能な燃料は、飛翔環境では地上と異なる流動特性を持ちうるのではないかと予測されており、実験的にその特性を解明したいと考えています。
3.今後は燃焼学を専門に加えるとともに、デトネーションの実験的研究を行いたいと考えています。

● 特徴ある実験機器、設備

・高速度カメラ(最大1200fps)
・高速度カメラ 最大70000fps 512*32ピクセル
・コリオリ流量計 測定レンジ 0-600[g/s]程度(液体) 運用圧10MPa

以下の設備を構築中
・ロケット燃焼実験設備
・可視化スラブバーナー

● 過去の業績

【査読付き論文】
1. K. Ozawa and T. Shimada, “Theoretical prediction of regression rates in swirl-injection hybrid rocket engines”, Progress in Propulsion Physics, Vol. 8, pp. 283-306, the European Conference for Aero-space Sciences. (2016)
2. Kohei Ozawa and Toru Shimada, “A Theoretical Study of Combustion Stability in Vortex Injection Hybrid Rocket Engine”, The ISTS Special Issue of Transactions of JSASS Aerospace Technology Japan, Vol. 12(ists29), Pa_53-Pa_61, The Japan Society for Aeronautical and Space Sciences. (2014)

【著書】
1. Toru Shimada, Kohei Ozawa, et al.( 19 名中 17 番目), “Section 4.4 Hybrid Propulsion Technology Development in Japan for Economic Space Launch”, Editerd by Toru Shimada, Valery P. Sinditskii, Max Calabro, “Chemical Rocket Propulsion”, Springer. (2016)