イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

工学研究院

准教授

薦田 亮介

こもだ りょうすけ

所属
工学研究院
機械知能工学研究系
プロフィール
1989
生まれ
2017
博士(工学)
九州大学大学院
2017
九州大学大学院工学府
水素エネルギーシステム専攻
博士後期課程終了
2014
九州大学大学院工学府
水素エネルギーシステム専攻
修士課程終了
2012
九州大学工学部
機械航空工学科卒業
2010
久留米工業高等専門学校
機械工学科卒業

小さい頃にみたNHKの「プロジェクトX」に登場する研究者や開発者をめちゃくちゃカッコいいと思ったことが研究者を志した一番最初のきっかけです。あの頃見たカッコいい研究者たちに少しでも近づけるように日々邁進しております。

受賞
●JSMS Kyushu Professor Award 2021受賞(2021)
●日本機械学会 機械材料・材料加工部門 部門一般表彰(奨励講演論文部門)受賞(2020)
●九州大学学生表彰(研究活動)受賞(2017)
●JSMS Kyushu Youg Researcher Award受賞(2015)
●日本材料学会第63期優秀講演発表賞受賞(2015)
●日本機械学会若手優秀講演フェロー賞受賞(2014)

モノづくりの要となる、材料の強度と破壊現象の探求

● 研究テーマ

  • ❖ 水素ガス中の材料強度特性の評価
  • ❖ 水素による材料強度劣化の抑制方法
  • ❖ フレッティング疲労に関する研究

● 分野

疲労、破壊、構造材料

● キーワード

金属疲労、水素脆化、破壊じん性、フレッティング疲労

● 実施中の研究概要

カーボンニュートラル社会の構築には水素エネルギーの利用が重要な鍵となりますが、金属材料が水素ガスに曝されると材料の強度が劣化する場合があり(一般に水素脆化と呼ぶ)、水素エネルギー利用普及の妨げとなっています。当研究室では主として水素エネルギー利用拡大を目指して下記のような水素脆化に関する研究を行っています。

①水素脆化に及ぼすガス不純物の影響

水素ガス中に酸素や一酸化炭素などの特定の不純物を添加すると水素脆化が抑制される場合があります。例えば図1に水素中に酸素を添加した場合の破壊じん性試験結果を示します。この図では曲線が上にある程じん性が高い(良い性質)であることを表します。水素中で顕著に低下した破壊じん性がわずか1ppm(0.0001%)の酸素の添加によって部分的に回復していることがわかります。このガス不純物による抑制効果を有効活用できれば水素機器で生じる水素脆化を制御可能となります。現在、ガス不純物の抑制効果の実用化を目指して諸因子(不純物種,圧力,温度,材料,など)の影響やそれらメカニズムの解明を行っています。

  図1:1ppm酸素の添加による水素脆化の抑制

②高温水素ガス中クリープ挙動

水素機器の中には高温で作動するものがあります(固体酸化物形燃料電池:SOFC、固体酸化物形水電解:SOEC、水素ガスタービン、など)。それら機器では構造材料が高温の水素に曝されるため、高温水素が材料強度に及ぼす影響を熟知する必要があります。これまでの研究によって高温の水素が材料の強度特性(クリープ特性)を劣化させる場合があることが明らかとなっています(図2.この図では線が上にあるほどクリープ特性が良いことを示しています)。しかし、「高温」+「水素」環境中での材料試験は容易ではなく、データが圧倒的に不足しています。さらに、そもそもどのように高温水素の影響を評価したらよいかも定まっていないのが現状です。現在、高温水素中の材料特性についてデータの蓄積、メカニズムの解明、評価法の確立を試みています。

   図2:クリープ破壊に及ぼす水素の影響

● 今後進めたい研究

新しい水素脆化の抑制方法を模索しています。水素ガス中で水素脆化が起こるためには金属材料の中に水素が侵入する必要があります。水素が金属材料中に侵入する際、金属表面から水素ガス分子への電子の供給(触媒作用)が必要になります。つまり、この電子の供給をコントロールできれば水素脆化挙動をコントロールできる可能性があります。現在、静電誘導を利用し金属表面の電子密度を制御することで、水素ガス分子への電子の供給をコントロールすることを計画しています。
水素に関するもの以外にも、金属の破壊、特に金属疲労に関するテーマを模索しています。

● 特徴ある実験機器、設備

・環境中引張試験機(自作)
・環境中疲労試験機(自作)

● 過去の共同研究、受託研究、産業界への技術移転などの実績

【共同研究】『既存パイプライン網の水素脆化特性の評価に関する研究』(2022-2027)
【受託研究】『先進高温水素技術の安全性を確実にする高温水素材料強度劣化に関する分野横断型研究』(2022-2025)
【共同研究】『高温水素中クリープに関する研究』(2022-2024)
【共同研究】『水素ガス中材料特性に及ぼすガス不純物の影響解明』(2021-2023)
【共同研究】『ロール材の強度特性評価』(2020-2022)
【共同研究】『微小欠陥を有するばね鋼のねじり疲労に関する研究』(2020-2022)

● 関連リンク先

❖ より詳しい研究者情報