准教授
こもだ りょうすけ
小さい頃にみたNHKの「プロジェクトX」に登場する研究者や開発者をめちゃくちゃカッコいいと思ったことが研究者を志した一番最初のきっかけです。あの頃見たカッコいい研究者たちに少しでも近づけるように日々邁進しております。
モノづくりの要となる、材料の強度と破壊現象の探求
疲労、破壊、構造材料
金属疲労、水素脆化、破壊じん性、フレッティング疲労
カーボンニュートラル社会の構築には水素エネルギーの利用が重要な鍵となりますが、金属材料が水素ガスに曝されると材料の強度が劣化する場合があり(一般に水素脆化と呼ぶ)、水素エネルギー利用普及の妨げとなっています。当研究室では主として水素エネルギー利用拡大を目指して下記のような水素脆化に関する研究を行っています。
水素ガス中に酸素や一酸化炭素などの特定の不純物を添加すると水素脆化が抑制される場合があります。例えば図1に水素中に酸素を添加した場合の破壊じん性試験結果を示します。この図では曲線が上にある程じん性が高い(良い性質)であることを表します。水素中で顕著に低下した破壊じん性がわずか1ppm(0.0001%)の酸素の添加によって部分的に回復していることがわかります。このガス不純物による抑制効果を有効活用できれば水素機器で生じる水素脆化を制御可能となります。現在、ガス不純物の抑制効果の実用化を目指して諸因子(不純物種,圧力,温度,材料,など)の影響やそれらメカニズムの解明を行っています。
水素機器の中には高温で作動するものがあります(固体酸化物形燃料電池:SOFC、固体酸化物形水電解:SOEC、水素ガスタービン、など)。それら機器では構造材料が高温の水素に曝されるため、高温水素が材料強度に及ぼす影響を熟知する必要があります。これまでの研究によって高温の水素が材料の強度特性(クリープ特性)を劣化させる場合があることが明らかとなっています(図2.この図では線が上にあるほどクリープ特性が良いことを示しています)。しかし、「高温」+「水素」環境中での材料試験は容易ではなく、データが圧倒的に不足しています。さらに、そもそもどのように高温水素の影響を評価したらよいかも定まっていないのが現状です。現在、高温水素中の材料特性についてデータの蓄積、メカニズムの解明、評価法の確立を試みています。
新しい水素脆化の抑制方法を模索しています。水素ガス中で水素脆化が起こるためには金属材料の中に水素が侵入する必要があります。水素が金属材料中に侵入する際、金属表面から水素ガス分子への電子の供給(触媒作用)が必要になります。つまり、この電子の供給をコントロールできれば水素脆化挙動をコントロールできる可能性があります。現在、静電誘導を利用し金属表面の電子密度を制御することで、水素ガス分子への電子の供給をコントロールすることを計画しています。
水素に関するもの以外にも、金属の破壊、特に金属疲労に関するテーマを模索しています。
・環境中引張試験機(自作)
・環境中疲労試験機(自作)
【共同研究】『既存パイプライン網の水素脆化特性の評価に関する研究』(2022-2027)
【受託研究】『先進高温水素技術の安全性を確実にする高温水素材料強度劣化に関する分野横断型研究』(2022-2025)
【共同研究】『高温水素中クリープに関する研究』(2022-2024)
【共同研究】『水素ガス中材料特性に及ぼすガス不純物の影響解明』(2021-2023)
【共同研究】『ロール材の強度特性評価』(2020-2022)
【共同研究】『微小欠陥を有するばね鋼のねじり疲労に関する研究』(2020-2022)