イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

工学研究院

准教授

松本 紘宜

まつもと こうき

所属
工学研究院
機械知能工学研究系
プロフィール
2018
博士(工学)
同志社大学大学院
2018
同志社大学大学院
理工学研究科
機械工学専攻
博士後期課程修了
2015
同志社大学大学院
理工学研究科
機械工学専攻
博士前期課程修了

プラスチック成形加工に関する研究を始めたとき、身の回りにある製品がこんな機械でこんな成形技術で作られているんだと知って感動したことを覚えています。解明されていない加工時の現象は多く、機械工学的な立場からより良い成形技術を開発してより良いものを作りたい!そのようなモチベーションで研究に取り組んでいます。

受賞
【受賞】
プラスチック成形加工学会 第5回 若手奨励賞受賞(2023年)
令和2年度 日本材料学会複合材料部門委員会 奨励賞受賞(2021年)

成形加工時の現象解明と組織制御による材料特性の制御に挑む

● 研究テーマ

  • ❖ 伸長流動場を用いたナノフィラーの混練分散に関する研究
  • ❖ ナノフィラーを添加したマルチスケール複合材料に関する研究
  • ❖ 熱融着による複合材料の接合に関する研究

● 分野

複合材料、プラスチック成形加工、高分子レオロジー

● キーワード

混練押出,伸長流動,カーボンナノチューブ,セルロースナノファイバー,炭素繊維強化複合材料,天然繊維強化複合材料,射出オーバーモールド,熱融着接合,マテリアルリサイクル

● 実施中の研究概要

①伸長流動場を用いたナノフィラーの分散に関する研究

ナノフィラーを熱可塑性樹脂に複合化する手法として、二軸押出機を用いた溶融混練法が用いられます。しかしながら高粘度の樹脂にナノフィラーを分散させることは難しく、従来のせん断流動支配による混練では分散は困難であることが知られています。本研究では新たに、材料を引張るような流れである伸長流動場に着目し、効率よくナノフィラーを分散させる手法に関する研究を行っています。伸長流動による分散メカニズムの解明と様々な混練デバイスの試作(図1)を行っています[2].

図1. 伸長流動を発生させるための混練セグメントFixed Blister Disk (XBD) [2]

②ナノフィラーを添加したマルチスケール複合材料に関する研究

炭素繊維やガラス繊維強化複合材料は軽量ながら機械的特性に優れる先端材料です。樹脂部でのクラックや繊維/樹脂部での界面剥離等によって破壊が進むことが知られていますが、複合材料の信頼性を向上させるには新たな組織構造体を考える必要があります。そこで、ナノスケールのフィラーを繊維/樹脂界面に配置すれば界面部の補強が可能となり、樹脂部に配置すれば樹脂のタフニング化が可能となります。本研究では、環境に優しい天然繊維の撚糸を強化材に用い、界面部にセルロースナノファイバーを添加したポリ乳酸(PLA)フィラメントの開発(図2)を行っています[1]。ナノ繊維添加による界面強化メカニズムに関する研究と高強度かつ複雑形状を有する3Dプリンターの成形技術等について研究を進めています。

図2. (左)フィラメントの外観、(中)フィラメントの光学顕微鏡観察図、
  (右)天然繊維表面のセルロースナノファイバーの様子 [1]

③熱融着による複合材料の接合に関する研究

炭素繊維強化複合材料の機械的特性は繊維長に依存し、特に大量生産が可能である射出成形では繊維が短くなるために機械的特性に劣ります。そこで、連続繊維を用いた複合材料をスタンピング成形することで単純形状の部品を作り、その上部から短繊維強化樹脂を射出成形することによってリブ・ボスを付加造形する射出オーバーモールド成形法というものがあります。高い機械的特性を有した複雑形状の成形品が得られますが、異なる材料を熱融着によって接合するために接合界面部の強度の信頼性が課題となります。本研究では、その接合メカニズムの解明と新たな接合部の直接強化手法として、界面にナノフィラーを添加することで接合強度の向上を目指し[3]、そのメカニズムについて研究しています(図3)。

図3. (左)接合界面にカーボンナノチューブ(CNT)を挿入した射出オーバーモールド成形品、
  (右)剥離面の様子[3]

● 特徴ある実験機器、設備

射出成形機用金型(自作)
冷却速度を制御可能なヒートプレス機(自作)
金型内流動解析ソフトウエア Moldex3D など

● 知的財産権(技術シーズ)

特開2023-35881,「複合フィラメントの製造方法及び複合フィラメント 」,松本紘宜, 竹村兼一
特許第6532628号,「多軸混練機を用いたナノコンポジットの製造方法並びにこれらに用いるディスク型セグメント 」,田中 達也, 松本 紘宜

● 過去の共同研究、受託研究、産業界への技術移転などの実績

【科研費】
『ナノ繊維添加によるハイブリッドCFRTPの接合強度・耐久性発現メカニズムの解明』(2021-2023)
【助成金等】
①『射出成形における導電性のin-situ計測を可能とするセンサー試作とナノカーボンの導電性発現メカニズムの解明』(2023-2024)
②『伸長流動下におけるナノ粒子の分散メカニズムの解明補助事業』(2023)
③『ナノ繊維添加による天然繊維と熱可塑性樹脂間の界面強度強化メカニズムの解明』(2022)
【共同研究・受託研究】
①『材料再生プロセス開発』(2024)
②『骨手術用機械の開発』(2023)
③『脊椎ケージの力学的物性の検証および設計』(2023)
④『樹脂ペレットとCNFの混練技術・物性評価に関する研究』(2022-2023)

● 過去の論文や著書などの業績

【論文】
[1] K. Matsumoto, K. Takemura, R. Kitamura, H. Katogi, T. Tanaka, and H.Takagi, ""Cellulose nanofiber-introduced continuous-ramie yarn-reinforced polylactic acid filament for 3D printing: Novel fabrication process and mechanical properties"", Compos. Part A: Appl. Sci. Manuf., Vol.176, 107836 (2024).

[2] K. Matsumoto and T. Tanaka, ""A modified blister mixing element for generating extensional flow in a twin‐screw extruder: Process characterization and dispersion state of carbon nanotubes in cyclo‐olefin polymer"", Polym. Eng. Sci., Vol.62(4), 1223-1238 (2022).

[3] K. Matsumoto, T. Ishikawa and T. Tanaka, ""A novel joining method by using carbon nanotube-based thermoplastic film for injection over-molding process"", J. Reinf. Plast. Compos., Vol.38(13), 616-627 (2019).

● 関連リンク先

❖ researchmap

https://researchmap.jp/7000030404

❖ より詳しい研究者データ

https://hyokadb02.jimu.kyutech.ac.jp/html/100001767_ja.html