イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

工学研究院

助教

田丸 雄摩

たまる ゆうま

所属
工学研究院
機械知能工学研究系
プロフィール
1969
生まれ
1996
九州工業大学大学院工学研究科博士前期課程設計生産工学専攻修了

位置決め技術は、私たちが普段使用している携帯電話などの電子機器の小型、軽量化に大きく関わっています。身近な製品の技術向上に寄与する課題に魅力を感じたことが、現在の研究に取り組むようになったきっかけです。

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かんたん、シンプルにナノ、マイクロレベルの
位置決め技術を目指す

● 研究テーマ

  • ❖スクイーズ空気膜を利用した非接触支持、案内機構に関する研究
  • ❖長ストロークと高精度位置決めを両立する位置決め機構の開発

● 分野

生産工学・加工学、設計工学、機械機能要素、トライボロジー(注)
(注)トライボロジーとは、摩擦、摩耗、潤滑など、界面間に発生する現象を総合的に扱う学問領域。

● キーワード

精密位置決め、位置決め制御、弾性ヒンジ、圧電素子、スクイーズ空気膜

● 実施中の研究概要

❖ スクイーズ空気膜を利用した非接触支持、案内機構に関する研究

① スクイーズ空気膜による非接触支持、案内は、簡単な機構構成であるため汎用性があります。
② スクイーズ空気膜支持、案内は、支持機構を両端の2点のみに設けることで容易なシステムが構築可能です。
③ スクイーズ空気膜支持機構は、非接触搬送、観察用ステージの位置決めなどに応用できます。
④ 基本的な要素研究の段階です。
⑤ 物体(平滑面)が自律的に数十μmの空気膜のみで浮上する現象を見ることができます。

❖ 長ストロークと高精度位置決めを両立する位置決め機構の開発

① 精密位置決めは、半導体や微細加工の分野で重要な要素のひとつで、これらの技術供与に対応できます。
② 位置決めは、連係微動という手法を提案し、微小位置決めでの範囲の拡大と変位分解能の向上を両立して実現できます。
③ 微細加工での加工ステージや工具の送り機構、あるいは顕微鏡などの観察用ステージの移動機構などに応用できます。
④ 基本的な要素研究の段階です。

本研究での位置決めは、主にマイクロ加工に適用する機構の構築を提案しています。マイクロ加工のステージでは、位置決め精度はもちろんのこと、可動範囲の拡大も重要になってきます。そこで連係微動という手法を新たに開発しました。送り機構のアクチュエータに積層PZTが多く用いられますが、単体で数μm~十数μmとストロークが短いため、梃子(てこ)機構による弾性ヒンジを用いた拡大機構と併せて使用されるのが一般的です。一方、変位が拡大される分、微小な変位制御は高分解能での印加電圧制御が必要になり難しくなります。そこで、本研究では、変位の縮小にも梃子機構を採用し、拡大機構と併せて一つの要素で形成する微動装置を製作しました。また、拡大微動と縮小微動が有機的に機能するように、両者を連係して微動制御する連係微動を開発しました。連係微動により、最小変位分解能1nm、最大ストローク67.1μmの結果を得ました。本機構で使用した積層PZT単体の仕様は、最小変位分解能6nm、最大ストローク14.5μmなので分解能で6倍の最小変位、ストロークで4.63倍の最大変位を得たことになります。

縮小微動と拡大微動を連係した位置決めの一例 連係微動により、拡大微動から縮小微動に移行させることで、短時間にオーバーシュートをほとんど発生することなく、位置決めを行うことが可能です。

他の研究で提案されている非接触案内、支持による推進機構と比較した本研究の意義

● 今後進めたい研究

スクイーズ空気膜を利用した非接触支持、案内機構に関する研究における、浮上ターゲットの振動問題が考えられます。今後は、この振動を能動的に制御する手法を考えていきます。

● 特徴ある実験機器、設備

①長ストロークと高精度位置決めを両立する位置決め装置(PZT(圧電素子)を使用した位置決めで、微小の縮小と拡大を一体の機構要素で実現した位置決め装置)
②スクイーズ空気膜支持式リニアスライダ(推進機構を付加したスクイーズ空気膜による非接触支持、案内機構)
③粗微動一体型精密送り装置(市販のボールねじ式送り装置に、超精密位置決めとして、PZTによる間座(注)の予圧変化機能を備えた点が特徴の装置)
(注)間座(「かんざ」と読まれることも多いが、本来の能狂言では「あいざ」という)は、spacerのこと。隙間や締め付けられる部材、部品の間に入れる部品のこと。

● 研究室ホームページ