教授
ちん はいざん
来日前は,住宅,店舗,高層オフィスなど数多くの建築物を設計したが,同時に,実務と理論の関連性に興味を持ち,力学解析理論や形態解析理論などを精力的に研究しました.大学院時代では,シェル,スペース・フレーム,膜,ケーブルなどの空間構造,非線形解析理論や形態最適化理論を学習・研究し,数多くの解析ツールを作成しました.その後,ゼネコンにおいて実務研究及び設計業務に10年間従事し,大空間や超高層建築物の設計研究,形態可変構造物,3D-CG自動設計施工システムなどの研究に取り組みました.2006年以降は,教育・研究に専念し,八戸工業大学・同大学院教授を経て,2014年に九州工業大学大学院教授に就任しました.現在は,形態最適化及び非線形解析理論,最新構造システムの創出,古代建築の再建,最新構造用材料の開発などのテーマを中心に研究活動を行っています.
また,「建築構造」が「美」を表現する「芸術」であるべきと考え,Structure(構造)とArt(芸術)の造語を用いたS-Art設計理念を提唱しています.さらに,海外大学との共同研究や国際学術雑誌の編集・査読など国際的に活動しています.
最新構造システムの創出・構造物の非線形挙動・大空間や超高層建築構造の諸課題に挑戦しています!
建築構造,空間構造,超高層構造,構造デザイン,構造解析,形態最適化,形態創生
ケーブル構造,膜構造,スペースフレーム,形態最適化,非線形解析,アルゴリズミック・デザイン,バブル・コンクリート
中国北宋時代(A.D.60-1127年)の著名画巻「清明上河図」に描かれている『虹(こう)橋(きょう)』の構造原理、力学特性、建設方法などの解明に取り組んでいる。中国最古のアーチ状木橋である虹橋の構造原理を利用して、最新構造システムとも言える「Lap-Beam」、「1.5層スペースフレーム」、「立体組合せパネル構造」の開発研究を行っている。
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従来のスペースフレームは、複層と単層に大別できる。2層の場合は、節点と弦材が2層平面或いは曲面に分布したもので、節点及び部材の数が多く、デザインと表現の自由性が限界される場合がある。単層の場合は節点と部材は1層の面に配置されたため、座屈し易く、平面構造物には適用できない。「1.5層スペースフレーム」とは、節点は2層に分布しているが、上弦材あるいは下弦材しか存在しない。複層スペースフレームと比べると、1.5層スペースフレームは部材数が少なく、軽量的であり、デザインの自由性も優れている。また、各節点に集まる部材数を少なくすることにより生産性と経済性の向上が期待できる。単層スペースフレームと比べて、1.5層スペースフレームは斜材により架構面を補強することができ、低いライズの大空間構造、大スパン平面構造にも適用できる。
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1.5層スペースフレームの単位架構をパネルに置き換えると、パネルの組合せによって構成された「立体組合せパネル(Reciprocal Panels)」を創出できる。立体組合せパネルは、多様な構造形態を創出することが可能である。現在は、その力学特性や設計理論を研究している。
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高度な非線形解析理論や形態最適化理論を用いて、テンション構造の最大剛性形態を求める理論を研究している。これは、構造形状を変化させることによって、構造体の剛性を制御する理論である。
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どのような曲率・曲面に設計すれば、構造体は座屈し難く、耐力が最大になれるかと言う問いに関する課題を研究している。座屈しにくい構造形状を数理手法で求める方法や非線形感度問題は非常に難しい課題として知られている。本研究で提案した理論は初めて座屈荷重を陽関数に表現でき、その幾何学非線形感度を評価して、曲面構造の最大座屈荷重形態を求める方法を提案した。
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様々な制振装置の力学特性は非線形的であるため、非線形応答解析を行い、建築物の非線形振動性状を把握するための研究を行っている。また、材料非線形解析手法を用いて、コンクリートの引張り破壊を3次元動画で可視化し分析することによって、コンクリート表層部の劣化評価に資するデーターを提供できる。
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高強度中空体をコンクリートに混入することにより強度と剛性を維持向上しながら材料を軽量化することについて研究している。単位体積重量は1.1g/cm³程度、圧縮強度は30N/mm²であるバブル・コンクリートが実現できた。早期破壊現象が観測されたので、引き続き研究を行っている。
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超高層建築物に関する長年の研究を通して,用途別の耐震安全性に関する差別意識の存在に気付き,これは国民の安全安心に関わる問題であると認識しています.よって,建築物の諸性能を定める際,用途別に必要な諸係数を導入するなどを考えています.また,日中の耐震理論の比較に関する研究を通して,日本の耐震理論や種々の技術をアジアに普及することに努めたいと考えています.
継続研究としては,最先端技術を駆使してバブル・コンクリートの強度を向上すること,古代絵画に描かれた名建築や失った伝統技術を解明して現代建築設計に応用すること,Lap-Beam,1.5層スペースフレーム,Reciprocal Panelなど最新構造システムの開発,数理手法を用いた形態デザインに関する研究を引き続き行います.
■陳沛山: バブコン,特願2007-181500,2007年6月.
■陳沛山: 1.5層立体トラスと立体組合せパネル構造,特願2010-195890,2010年9月.
■ 330m級の超高層の試行設計: 東京S地方での超高層建築物の建設検討の際は、実施設計に近い試行設計及び研究開発を行った。これは、高さ300m以上の世界中の超高層建築物の構造特徴及び制振効果を分析し、構造設計、居住性に関する研究であった。軒高さ337m、地上78階、CFT造(一部RC・S造)のチューブ構造体の固有周期を5秒台に収まるように、全体剛性の調整及び制振効果に関する研究を行った。
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■ TYM市民体育館の施工支援: 張弦梁の張力導入時の施工時解析、張力と変形の制御についての解析に取り組んだ。
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■3D自動設計システムの開発: 本研究では、3次元ゲームと同じ感覚でコンピューター画面上に建築物を組み立て、梁や柱の外観形状及び内部配筋、ボルトなどの細部を忠実に表現できる3D設計システムを開発した。構造計算、意匠設計、設備設計および積算との連携が可能である。
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