イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

工学研究院

准教授

高井 俊和

たかい としかず

所属
工学研究院
建設社会工学研究系
プロフィール
1979
生まれ
2015
博士(工学)
大阪市立大学
2015
大阪市立大学大学院
工学研究科都市系専攻
後期博士課程修了
2004
大阪市立大学大学院
工学研究科都市系専攻
前期博士課程修了

鋼橋や鋼構造物は、工場で部材をつくり、建設現場へ輸送し、ボルトで部材を接合して完成します。そのため、ボルト接合は、橋や構造物の建設に重要で不可欠な技術です。橋や構造物を安全・安心に利用でき、さらにコストダウンも実現するため、専門のボルト接合をキーワードに、新しい技術の開発、研究を進めています。

高力ボルトでつなぐ橋と構造物の研究

● 研究テーマ

  • ❖ 鋼構造部材をつなぐボルト接合部の研究、開発
  • ❖ 鋼構造物の大変形挙動、破断挙動の分析、評価
  • ❖ ボルト接合部の実験、シミュレーション(構造解析)による強度評価
  • ❖ 統計的手法に基づいた構造物の測定法、強度評価、設計法の開発、研究

● 分野

鋼構造 構造工学 維持管理工学

● キーワード

高力ボルト継手 鋼構造 橋梁工学 土木工学

● 実施中の研究概要

 鋼橋をはじめとする鋼構造物をより安全、安心で、さらにコストダウンも実現することを目標に、ボルトによる部材同士を接合する技術の研究をしています。
 ボルト接合は、鋼構造物をつくるうえで、重要で不可欠な技術です。鋼橋を例に挙げてみますと、まず工場で鋼板を切断、溶接して部材が製作されます。その部材を橋梁の建設現場まで輸送して、部材同士を接合して鋼橋が完成します。現場接合では、高力ボルト接合がよく用いられます。現場接合として溶接が用いられる場合もありますが、高力ボルト接合は短時間で接合できる特徴があります。鋼橋以外にも、鉄骨構造物でもボルト接合がよく用いられます。
 現在進めている研究は、高力ボルト接合の高強度化、コストダウンに関連したものです。鋼橋をはじめとする鋼構造物は、公共性の高い用途に用いられる側面があります。利用者の安全、安心につながる構造物の高強度化は重要なテーマです。また、コストダウンも重要です。ボルト配置や形状の工夫などの改良により、これらの目標を実現する研究を進めています。
 研究テーマは、新規建設を想定した設計に関するものだけでなく、メンテナンス(維持管理)に関するものも扱っています。鋼橋は100年間の長期にわたり使用することを目標に建設されます。しかし、年数が経つにつれて、腐食、劣化などが生じ、場合によっては部材の取替えが必要になる場合もあります。部材の取替え、補修、補強に関する研究もしています。
 研究手法は、 2,000 kN万能試験機などを用いた力学実験(図1)や、パソコンによるシミュレーション(FEM構造解析)(図2)を併用しています。力学実験により、実際の構造の挙動を把握し、強度を確認します。シミュレーションでは、多数のケースの比較検討を行ったり、挙動の可視化(図3)や構造内部の確認も可能です。研究は、これらの手法を組み合わせて進めています。
 また、専門外の他分野も参考にして、高度な知識をできるだけ必要としないツールを作成、活用して、本来の研究内容に集中できる環境整備に努めています。FEM解析は様々な分析ができる非常に有用な研究手段ですが、結果を得るまでの処理に多くの手間を要します。高度なプログラミング知識を必要としないローコード開発プラットフォーム(LowCode)を用いて、RPA(ロボティック プロセス オートメーション)技術により処理を自動化することで、FEM解析の処理の負担軽減を実現するシステムの構築(図4)に取り組んでいます。

最近の研究内容の例
❖ ばらつき・変動を考慮した測定値の定量評価(下記【論文1】関連)
❖ 継手の終局挙動の解明と終局耐力の評価(【論文2】関連)
❖ 複雑な部品構成や隙間などFEM解析の計算が困難な解析モデルの検討(【論文3】関連)
❖ 継手のすべり後の挙動を考慮した設計法の検討(【論文4】関連)

        図1 ボルト継手の構造実験の様子(すべり試験)

      図2 ボルト継手のシミュレーション モデル(構造解析)

      図3 ボルト継手のシミュレーション結果(非線形構造解析)

      図4 RPAを用いたFEM解析処理システム(構築画面)

● 今後進めたい研究

❖ 劣化,損傷,老朽構造物の補修,補強技術の開発
❖ 実構造物を対象とした実地調査,ケーススタディー
❖ 組立誤差,製作誤差を考慮した構造物の強度評価
❖ エネルギー吸収等の新しい指標に基づいた構造物の強度評価

● 過去の業績(論文など)

【論文1】 Toshikazu Takai, Yumi Matsumoto: Measurement method of coating thickness of slipped high strength bolted frictional joint considering statistical characteristics, Bridge Maintenance, Safety, Management, Life-Cycle Sustainability and Innovations, pp. 3931-3939, CRC Press, 2021.4
【論文2】 高井 俊和:アンボトニング現象に着目した高力ボルト摩擦接合継手のすべり後のボルト軸部のせん断挙動,構造工学論文集A,Vol. 67A,pp. 282-295,土木学会,2021.3
【論文3】 高井 俊和,森山 仁志,上田 慎也,末田 麻海,中村 悠紀:高力ワンサイドボルトを用いた継手の軸部せん断すべり後挙動,鋼構造年次論文報告集,第28巻,pp. 177-186,日本鋼構造協会,2020.11
【論文4】 高井 俊和,中村 悠紀:母材の引張降伏に着目した高力ボルト摩擦接合継手のすべり後の荷重伝達特性,土木学会論文集A1,Vol. 76,No. 2,pp. 401-410,土木学会,2020.8

● 関連リンク先

❖ research Map 研究者情報ページ

❖ より詳しい研究者情報