教授
まつしま とおる
電磁気現象は目には見えず理解しにくいものです。特にEMCの分野では非意図的に発生する電磁ノイズを扱うため、予期せぬ現象にも遭遇します。そのような電磁ノイズを予測/低減するためには、電磁波の気持ちになって想像することが重要です。
考えた電磁ノイズの発生モデルが、計算機シミュレーションや実測結果と一致すること面白味を感じ、この分野の研究を続けています。
IoT時代のEMC設計技術
~耐ノイズ・高信頼性通信の実現~
電子デバイス・電子機器・通信工学
環境電磁工学(EMC)、高速電力線通信(HD-PLC)、車載通信
様々な電子機器は、意図的非意図的にかかわらず電磁波を発生しています。それらの電磁波が他の電子機器に影響を及ぼすと、性能劣化だけでなく重大な事故になりかねません。そのため、電子機器は、「自身が電磁ノイズを発生しないこと」、「たとえ電磁ノイズが到来しても誤動作しないこと」が求められます。このような能力をEMCと呼びます。
研究室では、IoTを実現するセンサーや電子機器、またそれらを接続する通信のEMC性能を評価する方法、向上する方法について、研究しています。具体的には、以下のようなテーマを研究しています。
・ 高速電力線通信(HD-PLC)
すでに建物内に配線されている電力線を使って通信をする手法に対し、外部への電磁放射を評価、予測、低減する研究を行っています。新しい通信線を設営することなく、既存の電力線で実現できるこの通信は、無線が届きにくい工場環境などのIoT化を推進する能力を持っています。今後、正しく外部電磁界を評価し、その低減法を開発することで、現在、家庭用のみ使用されているPLC通信を発展させていくことが出来ます。
・ 車載通信
自動運転のためには、車載通信を高速化・大容量化・高信頼化することが必須です。一方で、車載環境内では様々な電磁ノイズ源があり通信を阻害する原因となっています。また通信によって同じ妨害波であってもその影響は異なります。
この研究では、車載EthernetやCAN-FDなどを対象に、通信に対する妨害波の影響を評価する手法を構築しています。
・ アナログICの耐妨害波性能
センサーICなどが電磁妨害波にさらされるとその出力が変動します。この研究では、妨害波に対する出力変動(ICの誤動作)を予測するためのマクロモデルを構築しています。ICを使ったシステムを設計する際に、妨害波の誤動作をあらかじめ予測することができ、試作する前に耐妨害波性能を向上させることが出来ます。
・ 電磁ノイズ環境に応じた最適な通信法
・ 有線通信の更なる大容量化・高速化
電波無響室
高周波測定機器(ディジタルオシロスコープ・スペクトラムアナライザ・ネットワークアナライザ)
電磁界シミュレータ
【競争的資金】
科研費基盤研究 (C), KAKENHI, 18K04264, 2018年度 -
科研費若手研究 (B), KAKENHI, 15K18052, 2015年度 - 2017年度
科研費若手研究 (B), KAKENHI, 25820142, 2014年度 - 2015年度
【共同研究】
C社, 2018年 - 2021年
B社, 車載ノイズ環境に関する共同研究, 2017年
A社, 通信機器のEMC性能に関する共同研究, 2013年 - 2015年
【学術指導】
D社, 2018年