教授
ちょう りきほう
私の博士論文が、画像復元に関する研究でしたので、結像系のフィルタリングやインバースフィルタリングを構成するために、FFTやDCTなどの直交変換の振幅や位相には馴染みがありました。就職後間もなく、アメリカの同時多発テロ事件(2001年9月11日)が発生し、セキュリテ関連の重要度と優先度が高まることが予想され、2週間後に顔認証をテーマにしたビジネスプランを提出し、同年11月に九州工業大学近藤研究室と共同で研究をすることになりました。重なる失敗を乗り越え、桜の花が満開になった翌年の春、ようやくDCT符号を利用した顔認証のコアエンジンが動き出し、これが後ほどFaceVital(商標)第一世代となります。2002年九州工業大学に異動後も、更なる認証精度を高めるため、本研究は現在も続けています。
世界に一つだけの顔
知覚情報処理・知能ロボティクス
DCT、生体認証、画像認証、Sign-only synthesis、Phase-only syanthesis
直交変換の一種である離散コサイン変換(DCT)(注1)を用い、顔画像を空間領域から周波数変換します。実数変換であるため、位相はπ/2と-π/2と逆変換すると、顔が確認できる程の線画像が得られます。そこで私たちは、人の顔を判断できる情報は位相だけでも可能と考え、符号情報のみを利用する確証アルゴリズムを開発しました。特徴ベクトルはDCT係数(後述の図1)の振幅が大きい順で位置情報とともに取り出し、上位の数十個だけで構成します。実証実験では、画面サイズ128×128pixelの画像を使用し、64点の符号から確証情報を構成しました。確証データサイズは128バイト/人、確証時間は20ms/枚とコンパクトかつ高速です。また登録枚数を増やすと、確証精度が向上することが(後述の図2)に示しています。
顔確認は生体認証において、もっとも難しい課題といえます。顔は、指紋、静脈、虹彩パターンなどの一生不変な特徴を有する他の生体情報と異なり、表情や加齢、化粧などによって常に変化し、厳密なパターンマッチングのアルゴリズムが適用できません。また、顔は他の生体情報に比べて、共通の部分が多いため、顔確証は変化を伴ないながらも似ているものを区別するため、精度を確保するのが難題です。しかし、ホームエンタテイメントから公共の場での犯罪者の検索など、幅広い分野での応用が期待されています。
(注1):Discrete Cosine Transform
① 組込システムへ認証アルゴリズムの実装
② センサーネットワークにおける生体認証の応用
研究では、画像処理の新たなアルゴリズム開発に重点を置いているので、コンピュータ以外の特別な実験機器、設備は必要としません。ただし、アルゴリズム検証のための画像センサーや、撮影装置を製作するための精密旋盤やフライス盤などの工作機器が用意されていて、簡単なプロトタイプが作成できます。
『画像特徴の識別信号作成方法』 PCT/JP02/11095;特願2003-550148号
『画像取得装置』 特願2009-217072号
▶2001-2003 DCTバーコード変換によるリアルタイム顔認証システム
▶2005 顔認証モジュールを携帯電話への実装
▶2007-2009 X線デジタル画像診断装置に関する研究
▶2009 印鑑自動認証システムの実用化研究開発
▶2009 顔認証アルゴリズムのハードウェア実装