イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

工学研究院

准教授

片宗 優貴

かたむね ゆうき

所属
工学研究院
電気電子工学研究系
プロフィール
1989 生まれ
2015 博士(工学) 九州大学大学院 
2015 九州大学大学院総合理工学府量子プロセス理工学専攻博士後期課程修了
2013 九州大学大学院総合理工学府量子プロセス理工学専攻修士課程修了

大学生のころ電気工学を学ぶ中でエネルギーに関する技術に興味を持ち、院生時代にダイオードなどの素子を構成する材料の研究に取り組む中で、新材料の開発の立場から既存の省エネ技術の発展に貢献したいと考えるようになりました。中でも半導体材料としてダイヤモンドの可能性に魅かれ、着任後に現在の研究を始めました。

ダイヤモンドによる次々世代パワー半導体のための要素技術の開発

● 研究テーマ

  • ❖ダイヤモンドの合成と半導体物性制御
  • ❖オーミック接触形成技術
  • ❖異種材料へのダイヤモンドの合成

● 分野

電気電子材料
表面界面物性
カーボン材料

● キーワード

ワイドギャップ半導体、ダイヤモンド、化学気相堆積法、オーミック接触、ハードコーティング

● 実施中の研究概要

[パワーデバイス応用に向けたダイヤモンドに関する研究]

 パワーエレクトロニクスは、電力インフラから自動車関係などの身近なところまで、省エネ化のための電力変換技術として、重要な役割を果たしており、目に見えないところで私たちの生活を支えています。その根幹を担うパワー半導体には、さらなる大電力・低損失化に加え、高温での安定した動作が求められています。これら需要を満たすためのひとつのアプローチとして、現在の主流であるSiに代わるSiCやGaNなどの新材料の採用があります。ダイヤモンドは宝石として知られていますが、高い絶縁破壊電界、熱伝導度、キャリア移動度など他の材料と比べて優れた物性を持つことから、次々世代のパワー半導体材料として期待されています。しかしながら、その実用化に向けた課題は多く、結晶成長、不純物ドーピング、デバイスプロセスなど、個々の要素技術の確立が必要です。これら技術は、パワー半導体に限らず、電子デバイス応用にとって極めて重要になります。本研究では、その中でもダイヤモンドデバイスの性能を十分に発揮させるためのオーミック電極の形成に向けた研究に取り組んでいます。

□ 絶縁破壊電界:物質に電界をかけたときにその物質が壊れる最大の電界のこと。ダイヤモンドではSiの30倍であり、理論的には同じ耐圧ならデバイスの大きさを1/30にできるため、小型化・低損失化が見込める。
□ キャリア移動度:半導体中で電流の担い手となる電子と正孔の移動のしやすさ(電界に対する速度の比)。この値が高いほど、低損失・高速動作が可能。
□ 不純物ドーピング:理想的な半導体は絶縁物であるため、不純物元素を添加することで正孔と電子の濃度を調整し、電気的特性を制御すること。

[素材へのダイヤモンドコーティングに関する研究]

 ダイヤモンドは、物質の中で最も硬く、また放熱性に優れ、化学的に安定で腐食されにくいため、他の素材に新たな付加価値を与えるためのコーティング材としても期待されています。しかしながら、一般的に他素材上へのダイヤモンドのコーティングは難しく、被膜の対象に応じた工夫が必要になります。現在は切削工具を対象にした工具の長寿命化のためのダイヤモンドのコーティングプロセスを開発に取り組んでいます。

● 今後進めたい研究

ダイヤモンドの半導体応用に向けた要素技術の確立
低損失な電力変換デバイスの開発

● 特徴ある実験機器、設備

熱フィラメント化学気相堆積(HF-CVD)装置
質量分析計
光学顕微鏡

● 過去の業績(論文・受賞歴など)

【論文】
1) “Hydrogenation effects on carrier transport in boron-doped ultrananocrystalline diamond/amorphous carbon films prepared by coaxial arc plasma deposition”, J. Vac. Sci. Tech. A, Vol. 6, Issue 6, (2015) 061514, 5pp.
2) “Near-Edge X-ray Absorption Fine-Structure Study on Hydrogenated Boron-Doped Ultrananocrystalline Diamond/Amorphous Carbon Composite Films Prepared by Coaxial Arc Plasma Deposition”, Trans. Mat. Res. Soc. Jpn, Vol. 3, (2015) Issue 6, pp. 243-346.
3) “同軸型アークプラズマ堆積法による超ナノ微結晶ダイヤモンド/水素化アモルファスカーボン混相膜の合成”, NEW DIAMOND, 第116号, Vol. 31, No. 1 (2015) pp. 8-12.
4) Heterojunction Diodes Comprising p-Type Ultrananocrystalline Diamond Films Prepared by Coaxial Arc Plasma Deposition and n-Type Silicon Substrates, Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 52, No. 6 (2013) 065801, 5pp.
5) “Boron-Induced Dramatically Enhanced Growth of Diamond Grains in Nanocrystalline Diamond/Hydrogenated Amorphous Carbon Composite Films deposition by Coaxial Arc Plasma Deposition”, Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 51, No. 7 (2012) 078003, 2pp.

● 関連リンク先

❖ より詳しい研究者情報

https://hyokadb02.jimu.kyutech.ac.jp/html/100000924_ja.html