イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

工学研究院

准教授

本塚 智

もとづか さとし

所属
工学研究院
物質工学研究系
プロフィール
1981 生まれ
2013 博士(工学) 東京工業大学大学院
2006 修士 東北大学大学院

学生の頃からエネルギー問題に貢献できる材料開発に取り組みたいという思いがありましたが、なかなか実現しませんでした。そんな中、何気なくみていた鉄のX線回折パターンにちょっとした変化を見つけたのをきっかけに省エネルギーに貢献できる新規軟磁性材料の研究を始めました。

受賞
平成29年度国立高等専門学校教員顕彰(国立高等専門学校機構・2018年)
平成28年優秀論文発表賞(電気学会・基礎・材料・共通部門表彰)(2017年)
第26回DV-Xα研究会奨励賞(DV-Xα研究協会・2015年)

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界面から始まる材料開発

● 研究テーマ

  • ❖モーターの省エネルギー化に貢献する鉄の開発
  • ❖異なる材料の接触面で生じる物理現象の解明
  • ❖金属原子の並び方の制御

● 分野

材料加工および組織制御関連

● キーワード

メカノケミカル反応、集合組織、再結晶

● 実施中の研究概要

 材料Aと材料Bが接触している面を”界面(interface)”といいます。材料Aと材料Bを適切に選んで良い界面を作るという研究が多いのですが、逆にこの界面を起点に材料Aや材料Bをもっと良くしようという研究に取り組んでいます。
 具体的には、モーターの省エネルギー化に貢献する鉄の開発をしています。鉄は数少ない磁石にくっつく材料なのですが、鉄を構成する鉄原子の並び方によって、もっと強く磁石にくっつくようになります。そのような鉄をモーターの中の鉄心と呼ばれる部品に使うと、結果として少ない電気で大きな力を出せるようになります。そこで、この鉄の原子の並び方を上手にコントロールする方法を研究しています。
 鉄を加熱すると、鉄の原子の並び方がより整然となります。この現象を再結晶といいます。鉄の表面に別の材料をくっつけて、前述の界面を上手に作ってあげることで、この再結晶をコントロールできることを最近見つけました。その原理の解明のためには、原子レベルでの界面の観察や考察が必要です。そこで、透過型電子顕微鏡と呼ばれる極めて高い倍率まで観察できる顕微鏡や、分子軌道法と呼ばれる、複数の原子がお互いにどのように影響を与えるかを調べることのできるシミュレーション手法を使って研究をしています。

● 今後進めたい研究

電気機器に組み込まれている鉄心用の材料開発
黒鉛のような固体潤滑剤の摩擦機構の解明
金属の新しい再結晶制御技術の開発

● 特徴ある実験機器、設備

走査型プローブ顕微鏡、ボールミル、蛍光顕微鏡

● 知的財産権(技術シーズ)

PCT/
JP2016/061913
ランダムキューブ組織を有する偏平圧粉コアの創出とその磁気特性

● 過去の共同研究、受託研究、産業界への技術移転などの実績

【受託研究】『超低損失と高飽和磁化を両立した軟磁性材料の技術開発』(2018)
【共同研究】『磁性シート用新規磁性粉末材料に関する研究開発』(2017)
【受託研究】『リサイクル可能な炭素繊維-熱可塑性樹脂複合材料のメカノケミカル創出技術』(2014)
【論文】Formation of (001) fiber texture in iron powder and its effect on magnetic properties and crystal orientation of the powder compact, ISIJ international, 59(1), 192-200, 2018.
【論文】・Texture Formation in Iron Particles Using Mechanochemical Milling with Graphite as a Milling Aid, AIP advance, 5, 097127, 2015.