イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

工学研究院

准教授

森口 哲次

もりぐち てつじ

所属
工学研究院
物質工学研究系
プロフィール
1967
生まれ
1996
博士(工学)
九州大学大学院
1992
九州大学大学院
大学院総合理工学研究科分子工学専攻修士課程
修了

私は、もともと金属を含有する特異な構造の有機化合物の合成とその機能性を評価する化学が専門でした。よって蛍光物質や電気伝導性物質などの機能性有機化合物の合成も行っています。しかし、化学物質の合成に対して、環境負荷への影響が懸念され始めた時期から自らが合成したものも含めて環境に拡散された環境汚染物質の効率的な分解やバイオマス資源の燃料化以外の高度な機能性付与などにも興味を持ち、現在の研究を行うようになりました。

より詳しい研究者情報へ

実用化するまでは、アドバイスなど可能な限り携わる

● 研究テーマ

  • ❖有機半導体材料、赤色蛍光材料の開発
  • ❖潤滑油の開発
  • ❖炭素循環学(バイオマス燃料)

● 分野

(分科)複合化学 (細目)機能物質化学
(分科)環境学 (細目)環境技術・環境材料

● キーワード

環境汚染浄化、炭素資源循環、高機能有機化合物、有機半導体、有機蛍光物質

● 実施中の研究概要

❖ 木質廃棄物を用いて環境汚染物質を無害化する方法の開発

環境汚染物質の効果的な除去や、無害化方法を実用化し、提案しています。廃油などの土壌汚染や、難分解性の材料を、木質バイオマスで無害化します。
① 社会的意義 : 木質バイオマス資源を、燃料として利用するのではなく、高機能材料(環境汚染物質の除去、無害化)に変換利用することで、脱炭素社会を目指した資源循環・環境再生スキームを構築できます。
② 新規性・独創性 : 木質バイオマスを、高機能材料化するには、その過程で、環境に大きな負荷をかける欠点がありましたが、バイオマス資源を極度に多孔質化(広面積化)処理を行うことで、この欠点をカバーできます。
③ 産業的応用・用途 : 環境再生産業や、難分解性物質の分解事業、さらには、高機能性材料の原料として利用できます。
④ 進捗段階 : 現在は、上記のアイデアをもとに、共同研究試験を行っています。大学内において、基礎研究から実証試験まで、実施可能な体制となっています。

❖ バイオマス資源循環二酸化炭素排出削減法の研究開発

① 社会的意義 : 木質バイオマスを利用して、CO₂を削減する技術を実用化し、環境問題の解決に貢献します。
② 新規性・独創性 : 従来のような、エネルギーを大量に用いた焼却や、薬品処理による、難分解性廃棄物の無害化とは別に、再資源化するために、独自な炭素化技術を開発しています。
③ 産業的応用・用途 ; 環境再生産業や、難分解性物の分解事業、炭素固定に利用できます。
④ 進捗段階 : 8-9合目と、いったところです(実機もあります)。

❖ 新規な高大気安定性有機半導体材料の創成

① 社会的意義 : 国際戦略物質フリーな、有機高機能材料としての、半導体材料です。
② 新規性・独創性 : 半導体には、様々なものがありますが、九州工業大学オリジナルの有機半導体材料は、特殊な構造の物質から、新しいものを作りました。性能的には、他のものと遜色のないところまできています。一般に半導体は、大気にさらすと弱いのですが、この有機半導体材料は、空気に対する安定性が高いのが特長です。
③ 産業的応用・用途 : 環境にやさしく、極めて低価格で、かつ大気安定な、半導体材料です。
④ 進捗段階 : 5-6合目と、いったところです。

❖ 高機能性高強度蛍光材料、特に赤色透明蛍光剤の研究開発

有機半導体材料群や、高輝度蛍光物質の研究開発も、併せて行っています。半導体が、現在も性能向上の途上ですが、添付写真のように、赤色の蛍光材料を、いくつかの方面で使っていただいています。
① 社会的意義 : 発光現象を利用したい分野に、新たな用途を提供します。
② 新規性・独創性 : 発光材料には様々なものがありますが、本材料は、国際戦略物質に依存度の低いもので、赤色に発光する新しいものを作りました。性能的には、透明かつ、極めて高輝度です。一般の蛍光体は有色ですが、この材料は、無色で比較的に安定性が良いのが特長です。
③ 産業的応用・用途 : 環境にやさしく、極めて低価格で、かつ大気安定な、蛍光材料です。
④ 進捗段階 : 9合目と、いったところです。

❖ 潤滑油の研究開発

潤滑油は、工業機械から船舶、自動車まで、幅広く使われています。CO₂排出削減などの環境対応のため、新たな改良開発が必要となっている潤滑油添加剤を、企業と共同研究しています。
① 社会的意義 : 新たな潤滑油の開発により、工業機械から船舶、自動車まで、CO₂削減などの、環境対応に貢献します。
② 新規性・独創性 : ZDTP(亜鉛錯体)潤滑油添加剤には様々なものがありますが、PS(リンと硫黄)フリー物質の新しいものを作りました。基礎性能的としてはZDTP(亜鉛錯体)と大きく遜色のないところまで、きています。
③ 産業的応用・用途 : 環境にやさしく、極めて低価格で、かつ大気安定な、高性能潤滑材料です。
④ 進捗段階 : 4-5合目と、いったところです。

● 今後進めたい研究

現在進めている研究開発を実用化レベルまで押し上げ、5年以内にすべて終わらせるように計画しています。
【今後の展望】
現在、大学内に、研究および、実証プラントまで設置し、数か月から数年単位での、知的財産権をはじめとした、実証データを出すだけではなく、興味のある企業の方も、随時見学できる体制を整えています。そのなかで、現在、完全実用化を目指した、強力な産学連携体制を組み、難分解性廃棄物や、汚染物質の無害化法の開発を行っている最中です。

● 特徴ある実験機器、設備

① 大型マイコン制御完全自発型炭化装置
② 小型マイコン制御完全自発型炭化装置
③ 3ゾーンガス置換電気炉
(上記3つは、すべて手作りです)
④ FID-GC (ガスクロマトグラフ)
⑤ TCD-GC (ガスクロマトグラフ)
⑥ 有機化合物用高真空蒸着装置

● 知的財産権(技術シーズ)

【特許】
『炭化装置』、特許番号 4017556号
『蛍光材料』、特許番号 3975278号
『焼酎廃液の乾燥処理方法及びその乾燥処理装置』、公開番号 2006-136806
『除湿乾燥装置及び除湿乾燥方法』、公開番号 2005-024160
『有機質固形廃棄物の処理方法及び処理装置』、公開番号 2004-324961
『油分回収材』、公開番号 2004-344836
『粘性有機質廃物の処理方法』、公開番号 2004-323628

● 過去の共同研究、受託研究、産業界への技術移転などの実績

【共同研究】
▶殺菌剤・抗菌剤 : (株)虎変堂との共同研究
▶廃棄物炭化物 : 九州製紙との共同研究
▶炭化物 : 九州エアーテックとの共同研究
▶赤色蛍光材料 :(株)キャノン、冨士色素(株)との共同研究

【共同開発】
▶潤滑油 : コスモ石油ルブリカンツとの共同開発

【技術移転】
▶赤色蛍光材料 : (有)エコテック社への技術移転

【助成】
▶半導体材料 : 北九州市からの助成

● 研究室ホームページ

大型マイコン制御完全自発型炭化装置

蛍光物質や半導体物質について

木質バイオマス利用やそれに用いる装置について 圧縮バイオマス燃料

装置の構造