イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

工学研究院

教授

出口 博之

でぐち ひろゆき

所属
工学研究院
基礎科学研究系
プロフィール
1957
生まれ
1986
工学博士
大阪大学大学院
1986
大阪大学大学院
大学院基礎工学研究科
物理系専攻後期課程修了

量子スピン系磁性体や超伝導体は、量子現象や量子効果がマクロに現れる物質系であり、量子力学を実感できるものとして、研究対象として選んできました。量子力学を技術的に応用する場合も有力な候補物質であり、また、ナノスケールにすることで、新しいサイズ効果も期待できる可能性があるので研究を進めています。

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電気・磁気の精密測定で新しいナノサイエンス・テクノロジーへ

● 研究テーマ

  • ❖磁性体・超伝導体のナノスケール物性の研究

● 分野

固体物性II (磁性・金属・低温) 、 応用物性

● キーワード

磁性、超伝導、ナノサイエンス

● 実施中の研究概要

ナノスケール(ナノ=10-⁹m)の原子や分子を操作して、人工的に新しい特性をもつ物質を生み出す(ナノテクノロジー)ことが、産業や生活の様々な場面で人類に貢献するものとして、大きく期待されています。このような背景の下、科学技術の理学・工学・医学など,多くの分野で応用されている磁性体・超伝導体を対象に、ナノスケール領域における物性究明のための基礎的研究を行っています。
この研究の想定される応用の一つは、磁石の元である電子の自転(スピン)単位で、コンピュータメモリー素子として機能させるように構成し、メモリー密度を飛躍的に増加させることです。
そのため、磁石を塊(3次元的)としてではなく、鎖状(1次元的)強磁石(図1)となるナノワイヤー単分子磁石が、安定な強磁性に保ちつつ、電子のスピンを自由に制御しなければなりません(注2)。また、量子スピン鎖物質(図2)において量子コンピュータの機能(量子ビット)を創出させる研究を行っています。
現在、低温や磁場下において、ナノスケール磁性体・超伝導体で期待される新しい機能(図3)や、特異的な接合をもつ超伝導体のネットワーク*2)における量子磁束相(注3)などの振る舞い(図4)を、試料作成、ESR、NMR、SQUID装置などを利用した実験により解明しようとしています。


(注1)九工大世界トップ技術 Vol.2、最先端の磁石 p23-31 参照
(注2)超伝導体のネットワーク;高温超電導体を構成するグレイン(結晶粒)は、隣同士で互いに接することにより、ジョセフソン接合ネットワークを形成していると見ることができます。
(注3)量子磁束相;高温超伝導体を貫く、量子化された磁束の相です。ゆらぎが大きいため、磁束が規則的に配列できず、ガラス相や液体相など様々な状態が出現します。

● 今後進めたい研究

マルチフェロイック物質(強誘電体と強磁性体の性質を併せ持つ物質)のナノスケール領域において、新たな物性の探索・究明に関わる研究を継続し、有用な性質を持った物質の発見を目指します。

● 特徴ある実験機器、設備

ESR(電子スピン共鳴)装置 照射した電磁波の吸収を分析することで、半導体、磁性物質、超伝導体などの電子のスピン共鳴状態を検出し、これら物質の様々な性質を知ることができます。

NMR(核磁気共鳴)装置 強力な磁界中の物質に電磁波を加えることにより核磁気共鳴信号を検出し、物質の様々な性質を知ることができます。

SQUID(超伝導量子干渉磁束計) 超伝導の量子現象(注1)を利用した超高感度磁気センサです。磁性体や超伝導体の精密磁気測定に用います。

● 知的財産権(技術シーズ)

『磁気特性測定方法及びシステム』
特許 2006-259977 (2006)

● 過去の共同研究、受託研究、産業界への技術移転などの実績

【受託研究】
『圧力下磁気測定と固体NMR測定および理論研究』(2004-2007)

● 研究室ホームページ