電気・磁気の精密測定で新しいナノサイエンス・テクノロジーへ
固体物性II (磁性・金属・低温) 、 応用物性
磁性、超伝導、ナノサイエンス
ナノスケール(ナノ=10-⁹m)の原子や分子を操作して、人工的に新しい特性をもつ物質を生み出す(ナノテクノロジー)ことが、産業や生活の様々な場面で人類に貢献するものとして、大きく期待されています。このような背景の下、科学技術の理学・工学・医学など,多くの分野で応用されている磁性体・超伝導体を対象に、ナノスケール領域における物性究明のための基礎的研究を行っています。
この研究の想定される応用の一つは、磁石の元である電子の自転(スピン)単位で、コンピュータメモリー素子として機能させるように構成し、メモリー密度を飛躍的に増加させることです。
そのため、磁石を塊(3次元的)としてではなく、鎖状(1次元的)強磁石(図1)となるナノワイヤー単分子磁石が、安定な強磁性に保ちつつ、電子のスピンを自由に制御しなければなりません(注2)。また、量子スピン鎖物質(図2)において量子コンピュータの機能(量子ビット)を創出させる研究を行っています。
現在、低温や磁場下において、ナノスケール磁性体・超伝導体で期待される新しい機能(図3)や、特異的な接合をもつ超伝導体のネットワーク*2)における量子磁束相(注3)などの振る舞い(図4)を、試料作成、ESR、NMR、SQUID装置などを利用した実験により解明しようとしています。
(注1)九工大世界トップ技術 Vol.2、最先端の磁石 p23-31 参照
(注2)超伝導体のネットワーク;高温超電導体を構成するグレイン(結晶粒)は、隣同士で互いに接することにより、ジョセフソン接合ネットワークを形成していると見ることができます。
(注3)量子磁束相;高温超伝導体を貫く、量子化された磁束の相です。ゆらぎが大きいため、磁束が規則的に配列できず、ガラス相や液体相など様々な状態が出現します。
マルチフェロイック物質(強誘電体と強磁性体の性質を併せ持つ物質)のナノスケール領域において、新たな物性の探索・究明に関わる研究を継続し、有用な性質を持った物質の発見を目指します。
『磁気特性測定方法及びシステム』
特許 2006-259977 (2006)
【受託研究】
『圧力下磁気測定と固体NMR測定および理論研究』(2004-2007)