イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

工学研究院

准教授

大熊 信之

おおくま のぶゆき

所属
工学研究院
基礎科学研究系
プロフィール
1989
生まれ
2018
博士(理学)
東京大学大学院
2018
東京大学大学院
理学系研究科物理学専攻
博士後期課程修了
2015
東京大学大学院
理学系研究科物理学専攻
修士課程修了

学部生の頃、学園祭の物理学科展示で初めてトポロジカル絶縁体という用語を知った。その時は全く興味が無かったが、修士になって他の研究テーマで挫折している時、息抜きに勉強してみると案外面白かった。博士になる頃にはいつの間にかメインの研究テーマになり、現在に至る。

受賞
日本物理学会若手奨励賞 (領域4, 2022)

トポロジーで解き明かす、物質科学に潜む普遍的性質

● 研究テーマ

  • ❖ 粒子間相互作用と量子性の協奏により生じるトポロジカル相の研究
  • ❖ 非平衡ダイナミクスに潜むトポロジーの研究

● 分野

数物系科学,物理学,物性II

● キーワード

トポロジカル絶縁体,非平衡物理

● 実施中の研究概要

私の専門は、物質の性質を理論物理学を用いて解き明かす、「物性理論」という学問領域です。特に私が興味を持って取り組んでいるテーマは、トポロジカル物質の理論です。数学の一大分野の一つにトポロジーという、対象の大雑把な性質を扱うのに長けた分野があります。例えばドーナツの中央には一つの穴が空いており、一方でコーヒーカップの取手部分も一つの穴が空いているため、両者はある種の連続変形で互いに移り替われます。このような時に、両者を同一視して「同じ」モノとして扱うのが、トポロジーの基本的な考え方です。モノの大雑把な性質だけを抽出できるトポロジーの考え方は、サンプルの不均一さに影響されない普遍的な性質を扱う事を可能にするため、近年物質科学に応用され始めています。中でも、量子の波動関数のトポロジーが特殊な界面状態を誘起する「トポロジカル絶縁体・超伝導体」の物理は、代表的な成功例として理論・実験問わず盛んに研究されています。私は、このトポロジカル絶縁体の数理を、非平衡開放系や強相関量子系に応用する研究を行なっています。前者の研究においては、ある種のダイナミクスと、一見全く関係の無い平衡系トポロジカル絶縁体の間に数理的な関係を見出し、それを足がかりに研究を進めています。後者の研究においては、未だ実験的に見つかっていない「分数チャーン絶縁体」という強相関トポロジカル物質の成立条件を探す研究を行なっています。トポロジーは物理学の普遍的な性質と深く関係するためか、トポロジカル物性を研究していると度々、全くエネルギースケールの異なる素粒子物理学との接点に出くわします。こうした別分野との出会いもトポロジカル物質科学の醍醐味の一つです。

● 過去の共同研究、受託研究、産業界への技術移転などの実績

[共同研究] "Non-normal Hamiltonian dynamics in quantum systems and its realization on quantum computers", NO and Y. O. Nakagawa, Phys. Rev. B 105, 054304 (2022).

● 過去の業績

[論文] "Topological Origin of Non-Hermitian Skin Effects", NO, K. Kawabata, K. Shiozaki, and M. Sato, Phys. Rev. Lett. 124, 086801 (2020).
[レビュー論文] "Non-Hermitian Topological Phenomena: A Review", NO and M. Sato, Annual Review of Condensed Matter Physics 14, 83 (2023).

● 関連リンク先

❖ より詳しい研究者情報

https://hyokadb02.jimu.kyutech.ac.jp/html/100001661_ja.html