准教授
こうむら ふゆた
子供の頃から国語や社会科目が苦手だったので、なんとなく自分は理系に進んだ方がいいのだろうと思っていました。進路で迷っていた際にたまたま高校の図書館で手に取った数学の本に影響を受け、そのまま数学の道に進みました。まさか研究者になるとは思っていませんでしたが、今ものんびりマイペースにあれこれ考えています。
無限次元を直観的に理解する
基礎解析学
作用素環、エタール亜群、力学系、機械学習、カーネル法、再生核ヒルベルトC*加群
私の専門は数学であり、作用素環論と呼ばれる分野を研究しています。作用素環論とは無限次元の行列(作用素)の集まりを研究する分野です。作用素環論は簡潔に言えば無限次元の線形代数とも言えますが、無限次元を扱う上では微分積分など解析学の技術を援用することが重要であるため、分野としては作用素環論は解析学に分類されています。もともと作用素環論は量子力学の数学的な枠組みを構築するために始められた分野ですが、近年では幾何学、力学系、整数論、機械学習など様々な分野と関係を持つことが分かってきました。そのため、現在も多様な研究者が協働して作用素環論の研究が続けられています。
作用素環そのものは直観が働きにくい対象ですが、作用素環の具体例は様々な数学的対象から構成することができます。構成された作用素環の性質を調べることは非自明な問題であり、これまでに様々な研究が行われてきました。例えば、群や力学系から作用素環を構成し、その性質を材料の言葉で特徴づける研究は深い歴史を持ち現在でも続けられています。私の研究もこの流れに乗っており、私はエタール亜群と呼ばれる対象から構成される作用素環(亜群C*環)について主に研究を行っています。亜群C*環のクラスは群や力学系から構成される作用素環を含む広範なクラスです。また、エタール亜群は慣れてしまえば直観的に扱える対象です。そのため、亜群C*環の研究を進めることで多くの作用素環を直観的に理解できるようになると考えています。同時に、作用素環論の技術を他分野に応用することも狙っています。
最近では、亜群C*環の対称性に着目して研究しています。作用素環の対称性については未解明なことが多いため、本研究を通じて作用素環の対称性について研究の糸口を見つけることを目標としています。他にも、力学系から構成される作用素環や、逆半群という純代数的な対象を用いた作用素環の研究も行なっています。様々な数学的対象と触れ合うことができるため、とてもやりがいのある研究です。
上述の研究と並行して、機械学習の理論研究も行なっています。既存の学習手法がなぜうまくいくかということや、新たな学習手法の発明について、純粋数学を用いた研究を行っています。私は機械学習そのものについては素人なので、企業の方や情報系の研究者など様々な分野の方と議論しつつ研究を進めています。
(I) 作用素環の対称性について
(II) 作用素環論などを用いた機械学習の理論研究
特許第7367843号 関係性抽出装置、関係性抽出方法、及びプログラム (橋本 悠香, 石川 勲, 池田 正弘, 河原 吉伸, 勝良 健史, 紅村 冬大)
【共同研究】
① 『橋本 悠香(NTT), 石川勲(京都大学), 池田正弘(大阪大学), 河原吉伸(大阪大学), 勝良健史(慶應義塾)「相互作用を考慮したデータ解析システム」 』(2019~現在)
