留学における国と個人について国家利益の点から見つめるー中華人民共和国の場合―
史学一般 外国語教育
中華人民共和国初期の留学政策、中華人民共和国からの私費留学、国家と個人
中華人民共和国が成立後、経済回復に必要な人材の育成は差し迫った国家的課題でした。そうした背景の下で始まった留学生派遣にかかわる選抜方針の変動は、低い社会的地位に置かれてきた人々をも平等にという共産党の理念と、国力強化のためエリート主義の近道を取ろうとする現実的必要とのせめぎ合いが根底にあり、最終的に文化大革命という形となって表れたと考えられます。
私の研究は、とりわけ留学生を選抜する際の政治審査と実際に審査へ関与した人々が残した記録、意見に注目しつつ、留学生選抜派遣の全体的な流れを確認することです。共産党の理念が大衆の考えと一致したからこそ成功したという一面もありますが、その一方で、専門的な人材を育成するための、大学再編成、教材作成、新社会づくりにかかわる一連の政策で、社会が混乱した面があったことも確認できます。
現在は、新中国づくりにかかわる政策による混乱、とりわけ高等教育を受ける機会を得た「労農子弟」のゆくえを含め、「新しい国家」による政策決定とその施行に見られる大きな試行錯誤的揺れを解明しようとしています。この解明は現在の中国を理解する上でも、異文化を含めた世界を柔軟に理解する上でも、有用な手掛かりになると考えます。
新中国の建設にかかわった、日本人を含めた外国人とその行動の意味などに注目して研究を進めたいと考えています。
【論文】
「中国語入門レベルにおける量詞の解説―使い方の整理」(2017年)
「1951-1955年中華人民共和国初期における留学生派遣――高校生選抜を中心として」 (2016年)
「中華人民共和国初期のソ連東欧留学政策(1949-1953年)留学生の選抜プロセスを中心に」(2010年)
「国家と個人の両面から見る中華人民共和国の留学―建国後の留学政策と改革開放後の私費留学を中心として」(2008年)
「中国の私費留学に関する政策・方針の変遷」(2007年)
「中国人留学生が学ぶべき『日本』」(2005年)
「現代中国人日本留学 ―中国人の日本観に存在するステレオタイプについて」(2004年)
【著書】
『改革三十年与留学日本』(2010年 共著)