イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

工学研究院

准教授

寺本 万里子

てらもと まりこ

所属
工学研究院
宇宙システム工学研究系
プロフィール
1983
生まれ
2010
博士(理学)
京都大学
2010
京都大学大学院
理学研究科地球惑星科学専攻
博士後期課程修了
2007
京都大学大学院
理学研究科地球惑星科学専攻
修士課程修修了

大学1年生に参加した宇宙環境に関するゼミで、オーロラの発生原因が、太陽からやってくるプラズマ・地球の磁場・地球大気の相互作用によって起きていることを学びました。地上で見える美しい現象の裏には、宇宙空間でおきる壮大な物理現象が隠されていることに感銘を受けました。その時受けた感動が現在の研究につながっていると思います。

人工衛星のデータから宇宙環境を想像し創造する

● 研究テーマ

  • ❖ 衛星・地上観測によって得られた宇宙環境データ(プラズマ・磁場・電場)の解析
  • ❖ 衛星搭載用磁力計のデータ較正
  • ❖ 超小型衛星搭載用のプラズマ・磁場計測器の開発

● 分野

超高層物理学、太陽地球系科学、宇宙利用

● キーワード

地磁気、宇宙天気、プラズマ観測、ジオスペース

● 実施中の研究概要

宇宙空間は真空ですが、実際にはごく微量な電気の力を持つ気体(プラズマ)が存在しています。宇宙空間のプラズマは人工衛星に帯電を引き起こすなど、時に宇宙機に重大な被害を及ぼすため、宇宙空間のプラズマ環境を知ることは重要です。宇宙空間に存在するプラズマは太陽の活動や周辺の磁場環境に応じてダイナミックに変化します。特に地球周辺のプラズマ環境は、バラエティに富んでおり、地球が持つ磁石の力(地磁気)に応じて多彩な変化を見せます。我々は日頃の生活の中で、天気を気にして生活しています。我々にとって馴染み深い地球の天気を予測するためには、地球の大気や水の循環やそれにまつわる諸現象について知る必要があります。一方、宇宙空間で天気を知るためには、大気や水の代わりに、宇宙空間のプラズマや磁場について知りそれらに起こる諸現象について詳しく知る必要があります。
地磁気やプラズマは直接目で見ることはできませんが、人工衛星に搭載された計測器によって、宇宙空間でのプラズマや磁場の動きを「見る」ことができます。私はこれまで、人工衛星が宇宙空間で直接観測したプラズマや磁場のデータを用いて、宇宙のプラズマと地磁気の挙動を調べ、宇宙空間の環境について理解を深めてきました。地磁気の変化がどのように変化し、またプラズマの動きをどのように変化させるかを知ることは、宇宙空間での天気「宇宙天気」に繋がっていきます。
「宇宙天気」関連現象を深く知るためには、宇宙空間で、衛星を使ってプラズマや磁場を高い精度で計測することが必要です。人工衛星が観測したデータはそのままでは使いものにはなりません。そこで、データ較正が重要となります。私は、JAXAが開発したあらせ衛星に搭載された磁力計の地上較正試験やあらせ衛星の磁気環境試験を実施し、宇宙空間での高精度の地磁気計測に貢献しました。またあらせ衛星が打ち上げられて実際に宇宙空間で地磁気を計測してからも、得られたデータを用いた機上較正にも貢献しています。
私が興味がある領域は広くいえば太陽系の宇宙空間ですが、人類の手が届きそうだけど届かないという絶妙な距離感がとても良いと思っています。今はまだ手が届かないところもあるけれど、数十年数百年後の近い将来には人類が活動の場を広げて行けるかもしれない。そんなことを想像しながら研究できるところに魅力を感じています。

● 今後進めたい研究

これまでの地球のプラズマ環境の研究で得られた知見をもとにして、太陽系の惑星(木星や水星)や月などのプラズマ電磁場環境を調べ、それらにおける諸現象について知りたいと思っています。また、超小型衛星に搭載するプラズマや磁場計測器についても開発し、宇宙機と宇宙環境の関連性についても理解を深めて行きたいと思っています。
私はこれまで大型衛星・超小型衛星・ロケットに搭載した理学ミッション機器の開発を通して、宇宙機を使って宇宙環境を精密に計測することがいかに難しいかを学んできました。難しいということはチャレンジングであり面白いということでもあります。これまで関わってきた理学ミッションの機器開発の知見を活かしながら、様々なミッションに関して宇宙機を用いた精密観測の方法についても共同研究をしていきたいと考えています。

● 特徴ある実験機器、設備

超小型・低電力絶対磁力計

● 過去の共同研究、受託研究、産業界への技術移転などの実績

【共同研究】
①『惑星磁気圏in-situ多点観測を目指した小型高エネルギー電子分析器の軌道上実証』(2020-2022)
②『脈動オーロラ降下電子計測のためのNASAロケット実験』(2021-2022)
③『超小型衛星による地球磁場多点編隊観測に向けた磁気インピーダンス磁力計の開発』(2021-2022)

● 関連リンク先

❖ 革新的宇宙利用実証ラボラトリーHP

https://kyutech-laseine.net