助教
さの けい
大学生の頃に宇宙を題材にした小説や映像作品に触れたことで、天文学や宇宙物理学に興味を持つようになりました。大学院生の時に当時の指導教員に勧められたことをきっかけに、現在の研究テーマに取り組み始めました。世界的に見ても、取り組んでいる研究者が比較的少ない分野であるため、大きなやりがいを感じます。
可視光赤外線の宇宙観測で探る宇宙の歴史
天文学関連・素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験・航空宇宙工学関連
光赤外線天文学・初期宇宙・宇宙背景放射・データ解析・観測ロケット・天文衛星・望遠鏡
宇宙は約138億年前に誕生し、その後数億年の間に宇宙で最初の天体が形成されたと考えられています。しかし、そのような天体から放射され地球に届く電磁波は微弱であるため、初期宇宙にどのような天体が存在していたのかは謎に包まれています。そのため、初期宇宙の探査は天文学、宇宙物理学におけるフロンティアであり、最先端技術を結集した観測が精力的に行われています。そのような中、我々は、ロケットや衛星に観測装置を搭載し、地球大気放射の影響を避けることができる宇宙空間から、初期宇宙から飛来する宇宙背景放射などを観測するプロジェクトを進めています。
観測ロケット実験は、日米韓台の研究機関の国際協力により進めています。NASAの観測ロケットに口径約30cmの望遠鏡観測装置を搭載し、ロケット打ち上げ後に宇宙空間で観測を行います。この実験では、可視光から近赤外線の宇宙背景放射を観測し、その起源天体を解明することを目指します。これまでに観測装置の開発を完了し、2021年から計4回の打ち上げおよび観測を予定しています。
天文衛星は、国内の研究機関と協力して開発を進めています。この衛星計画では、口径約30cmの近赤外線用望遠鏡とX線観測装置の両方を衛星に搭載し、宇宙誕生後間もない時代に発生したガンマ線バースト(宇宙最大の爆発現象)を観測することを目的としています。
宇宙空間であっても、地球の近くでは、太陽系内の惑星間空間を漂う塵による太陽光の散乱光と熱放射(黄道光)が明るいため、初期宇宙から飛来する光をとらえる際の障害になります。そのため、将来的にさらに高精度な観測を実現するためには、惑星間塵が希薄になる火星より遠くの深宇宙から観測を行うことが有効であると考えられます。そのような観測を実現するために、将来の深宇宙探査機に搭載することを想定した望遠鏡の開発を行っています。
観測機器の開発と並行して、ハッブル宇宙望遠鏡や宇宙背景放射探査機COBE衛星などによって取得された観測データを解析し、宇宙初期に関する研究を進めています。様々な波長で観測されたデータを組み合わせた解析を実施することで、新たな科学成果を得ることを目指しています。
これまで取り組んできた研究を継続して行うとともに、光赤外線による天文観測を目的とした超小型衛星の開発を進めたいと考えています。通常の衛星に比べて、低コストかつ短期間で開発することが可能な超小型衛星を利用することで、従来よりもスピーディーに科学成果を得ることを目指します。