イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

生命体工学研究科

教授

山田 宏

やまだ ひろし

所属
生命体工学研究科
生体機能応用工学専攻
プロフィール
1961
生まれ
1990
工学博士
名古屋大学
1989
名古屋大学大学院
工学研究科博士課程(後期)単位取得退学

以前から生体力学を医療に役立てたいと思っていましたが、知り合いの先生から医学部の先生を紹介してくださったことで、生体力学を動脈硬化の病変の改善に適用する、現在の研究が始まりました。人と人との縁と研究への熱意の賜物です。

受賞
▶1996 日本機械学会バイオエン
 ジニアリング部門瀬口賞受賞
▶1993 日本機械学会論文賞受賞
▶1992 日本機械学会研究奨励賞受賞

より詳しい研究者情報へ

生体機械工学の技術で
病気・怪我から身体をプロテクト

● 研究テーマ-1

  • ❖血管病変の診断・治療の支援のための生体医工学的研究

● 分野

医用生体工学・生体材料学、機械材料・材料力学

● キーワード

生体力学、動脈、動脈硬化、コンピュータ・シミュレーション

● 実施中の研究概要-1

当研究室では、病気やけがのうち力や変形が関係し、同時にそれを調節すれば、治療や予防に役に立つような事例を研究の対象として、治療や診断、予防の技術の進歩を目指しています。
この研究は、主として動脈硬化が起こりやすい頸動脈で、実際の血管を使った実験データを基にして緻密な有限要素解析を行い、実験ではわからない血管内部の力や変形の状態を調べ、病理学の分析結果と比較することで、動脈硬化が進行する要因を追究し、それを軽減する方法を検討しています。
なお、この研究の特色は、実験から解析までを一貫して行うことで提供する情報の信頼性を高められるところにあります。
将来、動脈硬化の進行度合いの判断やステントの開発に役立つと考えています。
現在の進捗は、基礎研究段階の3合目程度です。
本研究室で学ぶ学生は、機械工学で学んだ知識を工業の分野だけでなく、医療の分野に応用する上での基礎的素養を身につけることができます。

● 今後進めたい研究

生体の組織や細胞の置かれた環境を薬で化学的に調節するのではなく、力を巧みに調節することで、病気の進行を抑えたり予防したりする方法を提示したいと考えています。また、研究の知見を活かして、病気の進行を抑えたり予防したりする製品を設計したいと考えています。

● 特徴ある実験機器、設備

① 共焦点走査型レーザー顕微鏡(注1)
② 顕微鏡ステージトップ細胞伸展装置
③ 顕微鏡ステージトップマルチガスインキュベータ
④ 血管内圧負荷・力学試験機
⑤ 低荷重引張り・圧縮材料試験機

(注1) 高解像度で三次元情報を取得できる顕微鏡。像情報を細かいポイント毎に取得して、コンピュータで全体を再構成する。厚みのある試料でも鮮明な像が得られる。

図1 先進医療情報が医療情報と生体力学情報からなるという概念図

図2 血管内皮細胞に関する実験・計測からモデル化・数値シミュレーションまで

図3 コンピュータ・シミュレーションの実際

● 研究テーマ-2

❖褥瘡(じょくそう、「床ずれ」)の遅延と予防のための生体力学的研究

● 分野

医用生体工学・生体材料学、機械材料・材料力学

● キーワード

生体力学、褥瘡、細胞、環境制御、コンピュータ・シミュレーション

● 実施中の研究概要-2

もう一つ研究は、褥瘡を遅延するための細胞を用いた研究です。
長時間の圧迫による組織の壊死は、力・変形、組織液成分、酸素濃度の3つの要因が関与していると考え、これらを変化させた環境を細胞に直接与えて細胞の変化を測定しています。
今までの研究で、栄養欠乏状態でも温度を10℃下げると細胞の機能維持時間が飛躍的に伸びることを突き止めました。
各種測定結果を基にして、褥瘡遅延のための用具を開発し、褥瘡に苦しむ多くの患者さんの苦痛の軽減に寄与したいと考えています。現在の進捗は、基礎研究段階1合目程度です。

● 研究室ホームページ

●(公財)北九州産業学術推進機構研究者情報ページ

http://fais.ksrp.or.jp/05kenkyusha/srchresult.asp?ID=h-yamada01