イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

生命体工学研究科

准教授

中村 仁

なかむら じん

所属
生命体工学研究科
生体機能応用工学専攻
プロフィール
1987
生まれ
2014
博士(工学)
名古屋工業大学大学院
2014
名古屋工業大学
大学院工学研究科
未来材料創成工学専攻
博士後期課程修了
2011
名古屋工業大学
大学院工学研究科
未来材料創成工学専攻
博士前期課程修了

身近に人工股関節再建術を受け苦労された方がおり、それをきっかけに医用材料に興味を持った。ものづくりに強い興味があり、大学在籍時に骨修復用セラミックス材料の合成について取り組む中で、様々な失敗や成功を繰り返しながら自らの手で生体に働きかける人工材料を作るプロセスを仕事として続けて行きたいとの思いが芽生え、研究職に就いた。

受賞
【受賞】奨励賞・層状リン酸塩の有機修飾による生体機能化に関する研究・日本無機リン化学会(2022年)
【受賞】東海化学工業会賞・カルシウム化合物からなるナノ複合材料の化学耐久性制御とその応用・東海化学工業会(2019年)

生物となじみ呼応する材料を創る

● 研究テーマ

  • ❖生体微量元素、薬剤を徐放する機能をもつ有機無機複合材料の合成
  • ❖水溶性ケイ酸による骨芽細胞活性化メカニズムの解明
  • ❖炭酸イオンを徐放する機能性材料の合成と海水中のSr固定化

● 分野

医用生体工学、生体材料学、無機材料・物性

● キーワード

セラミックス、有機無機複合材料、バイオマテリアル、人工骨、環境浄化

● 実施中の研究概要

食事をよく噛んで味わい、散歩などで適度な運動を続けることは、健康長寿に欠かせない日常の所作です。超高齢社会を迎えた日本では、骨粗鬆症や歯周病により健康な骨や歯が失われた患者に対して、これらの組織を健やかに保つ医療技術はますます重要になっています。
私たちの研究室では、細胞に働きかけ骨や血管再生を促す無機イオンの機能に注目し、これらのイオンを体内に届けるための生体材料の作製とその効果について研究しています。例えば銀や亜鉛のイオンが抗菌性を示すことが良く知られています。このほか、ケイ素やカルシウム、ストロンチウムなどは骨形成、コバルトは血管形成を促すことが細胞実験で明らかになっています。これらの無機イオンを組み合わせ、生体にとって適切な量、速度で送り届ける生体材料を創出しています。
ケイ酸やリン酸化合物は骨修復用の生体材料の主要な組成として従来から用いられて来ましたが、それらの中には厚さ数nmのシートが積み重なった結晶構造を持つものがあります。これらの特徴的な積層構造をもつ化合物中のシート間の隙間に、有機分子や生体に有益な機能をもつ無機イオンを組み込むことで、これらを適切に生体に送り届けるための材料を作り出すことが可能です。
さらに、生物が小さなエネルギー消費で骨や貝殻を作り出すプロセスに学び、常温常圧の下で高機能セラミックスを合成し、医療や環境浄化等に応用する試みも進めています。最近では、上記に加えてがん治療や薬剤徐放を支援するセラミックス微粒子の研究も展開しています。

● 今後進めたい研究

骨修復医療用の材料から溶け出たケイ酸を含むイオンは、特定の濃度域において骨芽細胞の骨形成を促すことが知られていますが、イオン種がどの様にして細胞の応答を引き出しているかの機序は明らかになっていません。一方、ケイ酸は人工的に作り出された材料のほかに、地殻や植物、微生物など身の回りにも多様な形で存在しています。現在、材料化学の立場から、ケイ酸による骨形成の促進メカニズムの解明に取り組んでいます。これが明らかになれば、今まで注目を浴びていない様々なケイ酸を含む物質を組み合わせ、より速やかな骨修復を実現する生体材料が設計できるようになると考えています。

● 特徴ある実験機器、設備

水熱合成装置、炭酸ガスレーザー照射装置、顕微ラマン分光装置、原子吸光光度計、細胞培養ブース、細菌培養ブース、リアルタイムPCR装置、共焦点レーザー顕微鏡

● 過去の共同研究、受託研究、産業界への技術移転などの実績

【共同研究】『抗菌性インプラント材料の開発に関する研究』(2022~現在)

過去の論文や著書などの業績

【論文】J. Nakamura*, R. Ito, R. Kozaki, A. Sugawara-Narutaki and C. Ohtsuki*, “Organic Modification of Layered Zirconium Phosphate/phosphonate for Controlled Release of Therapeutic Inorganic Ions”, Science and Technology of Advanced Materials, 22, 1000-1012 (2021).
【論文】J. Nakamura*, Y. Suzuki, R. Narukawa, A. Sugawara-Narutaki and C. Ohtsuki*, “Preparation of Layered Calcium Silicate Organically Modified with Two Types of Functional Groups for Varying Chemical Stability”, Journal of Asian Ceramic Societies, 9, 113-123 (2021).
【論文】J. Nakamura*, K. Endo, A. Sugawara-Narutaki and C. Ohtsuki*, “Human Stem Cell Response to Layered Zirconium Phosphate”, RSC Advances, 10, 36051-36057 (2020). (DOI: 10.1039/d0ra04924g)

● 関連リンク先

❖ より詳しい研究者データ

https://hyokadb02.jimu.kyutech.ac.jp/html/100001539_ja.html