ナノバイオテクノロジーで次世代技術を切り拓く
生物機能・バイオプロセス、分析化学
バイオセンサ、ナノ粒子、核内受容体、薬剤スクリーニング、機能性ペプチド、タンパク質発現
タンパク質や核酸類などの生体分子や独自に設計して合成した人工酵素の機能を生かして、バイオプロセスや分子認識素子へ応用した工学研究を一貫して推進してきました。近年は、生体分子とナノ粒子の融合による新規機能性ナノ材料の構築およびそのセンサ素子への応用研究や、植物・昆虫由来の機能性タンパク質をベースに設計した生体分子を利用して、微生物内で高効率に目的タンパク質を発現する研究に着手しています。
1. 生体分子とナノ粒子の融合による新規機能性材料の構築とその応用
❖分子修飾ナノ粒子を用いた簡易薬剤スクリーニング法の開発
本研究の目的は、核内受容体を分子標的とした医薬開発時での薬剤候補物質のスクリーニング法を、従来法より大幅に迅速・簡便化する新規評価法の開発です。金ナノ粒子は可視光域に表面プラズモン吸収を持つため、粒子の分散/凝集の状態により可視光域での吸収スペクトルが大きく変化します。本評価法は、その現象を利用し、金ナノ粒子に固定化した転写因子と核内受容体の複合体の形成現象を、ホモジニアスかつin vitro(生体内で)で測定することで、薬剤候補物質の核内受容体への作用を迅速かつ簡便に検知する方法です。提案する評価法は、洗浄・分離操作が不用であるうえ、薬剤候補物質のアゴニスト/アンタゴニスト活性を数分で高感度に見出すことが可能であります。
❖機能性銀ナノ粒子を用いた高感度芽胞検出システムの開発
バチルス属、クロストリジウム属などの細菌には、非常に重篤な食中毒の原因となるものがあります。この種の細菌は栄養状態などの生育条件が悪い時に、耐久性が高い芽胞を形成し生き残りを図ります。この芽胞は、従来の殺菌法(アルコール消毒、熱処理、UV照射)では簡単に処理できず、その芽胞の混入が食品・医薬製造現場で問題となります。確実な検出法として、細菌としての検知ではなく、芽胞を検知する技術が強く望まれています。そこで、本研究はバチルス属などの食中毒原因菌が自己防衛的に形成する芽胞を、機能性銀ナノ粒子を用いて高感度に検出する手法を開発し、食品・医薬製造における安全管理手法の改善を目的とします。
2.植物・昆虫由来の機能性タンパク質をベースに設計した機能性生体分子のバイオプロセスへの応用
❖乾燥ストレス耐性タンパク質由来のペプチド共発現によるタンパク質の高効率発現系の構築
植物や昆虫の非常に特殊な機能をもつ生体分子(タンパク質・ペプチド)を工学へ応用した研究です。非常に親水性が高く、乾燥ストレス時に生体を保護する機能を有するタンパク質に着目し、このタンパク質ベースに独自に設計したペプチドを細胞内で共発現することで高効率に目的のタンパク質を発現させる技術の開発を推進しています。本技術は大腸菌等を用いたタンパク質発現系おけるバイオプロセスの高効率化が期待できます。
生物由来の機能材料・分子とナノ材料と融合させた機能性ナノ材料の開発や、その機能性分子のバイオプロセスにおける高効率化への応用研究を展開していきたい。
遺伝子組換え実験・発現に関わる設備・装置一般
『有用タンパク質の高発現方法』(PCT/JP2011/076630、WO2012067220 A1、特許第5875052号)
『受容体発現細胞とそれを用いた標的物質の機能の評価方法』(特開2006-262813)
【受託研究】
機能性銀ナノ粒子を用いた高感度芽胞検出システムの開発
乾燥ストレス耐性ペプチドの共発現によるタンパク質高効率発現技術の開発
LEAペプチド共発現によるタンパク質高発現法の昆虫細胞発現系への応用
【共同研究】
C-face配向性を有する球状ZnOの光触媒高活性化とその応用
タンパク質発現を促進する新規ペプチドの創製
http://fais.ksrp.or.jp/05kenkyusha/srchresult.asp?ID=s-ikeno01