イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

生命体工学研究科

准教授

立野 勝巳

たての かつみ

所属
生命体工学研究科
人間知能システム工学専攻
プロフィール
1971
生まれ
1999
博士(情報工学)
九州工業大学
1999
九州工業大学大学院
情報工学研究科
博士後期課程
情報システム専攻修了
1996
九州工業大学大学院
情報工学研究科
博士前期課程
情報システム専攻修了

神経細胞を数理モデルで記述すると、計算機で脳の電気的活動を模倣できるだろう。しかし、それだけで知的な情報処理を知ることができるのだろうか。そのようなことを考えているうちに、感覚器、中枢、心臓など体のいろいろなモデルを作る必要があると思い、研究を始めました。

受賞
【受賞】ICT による教育改善事例「Good practice of Improvement on Education by ICT」 (2012年)
【受賞】日本神経回路学会研究賞 (2004年)
【受賞】日本神経回路学会論文賞 (2003年)

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神経細胞の数理モデルで脳の謎に挑む

● 研究テーマ

  • ❖ 海馬とその周辺領域の神経回路モデルを用いた記憶に関する研究
  • ❖ 魚の感覚における神経符号化と行動に関する研究
  • ❖ ガスセンサーシステムの信号処理に関する研究

● 分野

感性情報学、ソフトコンピューティング

● キーワード

ニューラルネットワーク、記憶、味覚、電気感覚、カオス

● 実施中の研究概要

ニューラルスパイクベースで脳の情報処理を理解しようとしています.神経細胞レベルから行動レベルまでを研究対象とし,工学的手法もとりいれながら,脳型の情報処理について研究を進めています.

1.海馬とその周辺領野のニューラルネットワークシミュレーション
海馬を含む内側側頭葉は、エピソード記憶に関係する部位です。場所細胞やグリッド細胞など位置を表現する細胞や時間細胞のような時間を表現する細胞などが見つかっています。エピソードは、どのように神経符号化され、記銘され、想起されるのか?当研究室では、電気生理学的知見を元に作成した神経細胞モデルで構成したネットワークモデルを使って、海馬とその周辺領野における神経活動について研究しています。

2.魚の行動と神経活動に関する研究
グラスキャットフィッシュの電気受容器の神経応答と行動の関係を調べています。グラスキャットフィッシュは微弱な電気を検出することができます。電気刺激に対する行動応答と魚の神経系に生じている神経活動を明らかにしようとしています。

3.ガスセンサーシステムに関する研究
味や匂いを検出する細胞のモデルシミュレーションを行うと共に、その機能をヒントにガスセンサーシステムにおけるセンサー信号の情報処理について研究しています。

● 今後進めたい研究

ダイナミックで柔軟な脳型人工知能について研究を進めたいと考えています。

● 特徴ある実験機器、設備

ハイスピードカメラ、サイエンス用 sCMOSカメラ

● 過去の共同研究、受託研究、産業界への技術移転などの実績

▶【特許】
心筋細胞の不整脈の自動検出に関するアルゴリズムについて2件。企業(医療機器メーカー)へ譲渡済みです。
① 『Method and system for detection of cardiac arrhythmia』 、Leon Glass、Katsumi Tateno、USA、US7120485(2006.10)
② 『Detection of cardiac arrhythmia using mathematical representation of standard DELTA RR probability density histograms』 、Leon Glass、Katsumi Tateno、USA、US7146206(2006)
▶【特許の内容】
いわゆる心筋細胞の不整脈というものは、いつも出ているわけではなく、心電図の所々に不整脈が出るものです。その検査装置を24時間、あるいは一年中付けている患者さんがいます。お医者さんがそれらの心電図を一枚一枚診て診断するのは大変なので、コンピュータで「あっ、いまここに不整脈があった」というように検出するものです。

● 過去の業績(論文など)

1.Kenji Kimura, Yoshitaka Ohtubo, Katsumi Tateno, Keita Takeuchi, Takashi Kumazawa and Kiyonori Yoshii (2014) "Cell-type-dependent action potentials and voltage-gated currents in mouse fungiform taste buds", European Journal of Neuroscience, 39(1):24-34, doi: 10.1111/ejn.12388.
2.Katsumi Tateno, Jun Igarashi, Yoshitaka Ohtubo, Kazuki Nakada, Tsutomu Miki, Kiyonori Yoshii (2011) "Network model of chemical-sensing system inspired by mouse taste buds", Biological Cybernetics, DOI: 10.1007/s00422-011-0447-5.
3.Hirotsune Matsuura, Katsumi Tateno, Shuji Aou (2008) "Dynamical properties of the two-process model for sleep-wake cycles in infantile autism", Cognitive Neurodynamics 2: 221-228.
4.Jun Igarashi, Hatsuo Hayashi, Katsumi Tateno (2007) "Theta phase coding in a network model of the entorhinal cortex layer II with entorhinal-hippocampal loop connections", Cognitive Neurodynamics 1:169-184.

● 研究室ホームページ

図は脳の神経生理学データから数理モデルを作成するイメージです。 左下より、海馬のスライス標本→錐体細胞→数理モデルとなっています。