イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

生命体工学研究科

准教授

大坪 義孝

おおつぼ よしたか

所属
生命体工学研究科
人間知能システム工学専攻
プロフィール
1973
生まれ
2001
博士(情報工学)
九州工業大学
2001
九州工業大学大学院
情報工学研究科
博士後期課程情報科学
専攻修了

舌の味覚器、味蕾は細胞の集団で構成され、脳や他の細胞からの情報を受け取る受容体を発現していることから、味蕾は単純なセンサではなく、細胞集団で味情報の処理や修飾をしていると考え、細胞集団における味情報処理機構に興味をもちました。

受賞
平成29年度 日本味と匂学会 研究奨励賞受賞(2017年)
Best Poster Award on Taste from "17th Congress of the European Chemoreception Research Organization" (2006年)

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味覚器における味情報伝達や味情報修飾機構の研究

● 研究テーマ

  • ❖味覚器における味情報の伝達および修飾機構に関する研究
  • ❖成長や老化に伴う味覚器の構造および機能変化

● 分野

生理学一般、神経科学一般、生物物理学

● キーワード

受容体、チャネル、伝達物質、パッチクランプ、RT-PCR、免疫染色

● 実施中の研究概要

食べ物の味を判定するのは脳であり、舌は単純なセンサと考えられてきました。しかし、私たちは、舌の上である程度の判定が行われていると考えるようになりました。たとえば、舌の上には味を感じる細胞集団、味蕾(図1)が多数分布しています。単なるセンサで良いなら、わざわざ集団化する必要はありません。また、集団を形成する細胞は、味センサだけでなく、脳やまわりの細胞からの指令を受け取るための装置、神経伝達物質受容体も持っています。私たちは、味蕾という細胞集団が味を判定するしくみを中心に研究しています。

【専門家向け説明】
舌や口腔内には、多数の味蕾が分布し、味物質を検出します。各味蕾は約50の味蕾細胞が構成する(図1)。私たちは、味蕾構造の機能を神経生理学的に研究しています。最近、味蕾細胞は各種神経伝達物質受容体を機能的に発現していることを明らかにし、発現している遺伝子サブタイプを同定しました(Eguchi et al., Chem. Senses. 2007, Hayato et al., J. Physiol., 2007)。これらの受容体の活性化は、細胞の電気的・化学的状態を変化させます。したがって、味物質受容時に、その細胞に発現する神経伝達物質受容体が活性化されると、味情報が修飾されることになります。分子レベルから、細胞集団レベルで味情報の修飾作用のメカニズムを解明し、生物学的重要性を明らかにします。得られた知見は、生体の味覚受容機構を模倣した化学センサ開発の基礎データとなります。

● 今後進めたい研究

味蕾細胞の平均寿命は、10日までと言われ、絶えず細胞交代が生じているにも関わらず、我々は味を識別できています。一方、味蕾細胞は味神経への味情報伝達に少なくとも2種類の伝達方法を用いています。味蕾細胞が採用する2種類の伝達方法と細胞交代との関係に着目し、安定した味情報伝達を可能にする分子メカニズムを解明したいと思います。

● 特徴ある実験機器、設備

① 共焦点レーザー顕微鏡
蛍光染色した細胞や組織から非破壊的に光学的断層画像を取得する装置。連続的に断層写真を取得することで、蛍光染色された物質の3次元分布を知ることができます。また、単一細胞に導入した蛍光色素の分布から、細胞の三次元構造が分かります。

② レーザーフォトリシス
ケージド化合物に光照射することで、局所的に生理活性分子を出現させ、その分子によって引き起こる応答をリアルタイムで測定する装置です。

● 研究室ホームページ

図1 味蕾の写真 味蕾は約50の味蕾細胞が構成