助教
いしばし ひであき
学生のころから知能に関心があり,知能がどのような理論に基づいて実現できるのかを知りたくて研究をはじめました.また,研究を進めていく過程で学習のプロセスを幾何学的に解釈できる情報幾何学というものを知り,情報幾何学を用いて複雑な情報処理の理論を考えたいと思い現在に至っています.
情報幾何学的メタモデリングの学習理論構築
知能情報学,統計科学,ソフトコンピューティング
情報幾何学,メタ学習,マルチタスク学習,転移学習
近年のAIは十分な数のデータがあらかじめ与えられていれば,高い精度で将来の予測ができるようになりました.一方で,多くの実用上の問題ではそもそも十分な数のデータが与えられることが少なく,少数のデータに対しても高い精度で予測するfew shot learningと呼ばれるAIが重要となってきています.このテーマでは個別に与えられたデータからAIによって学習したモデルの集合をさらにAIによってモデル化するメタモデリングの理論とアルゴリズムを開発することを目指しています.メタモデリングによってそれぞれのAIで学習した知識の集合からさらに普遍的な知識や法則を推定できるため,その普遍的な知識を活用することで少数のデータしか得られない場合でも高い精度で予測を行えるようになります.本研究の特色としてメタモデリングのアルゴリズムを作るための理論を情報幾何学に基づいて構築することで,数値で表すことができるデータだけでなく文字やグラフ,確率分布などの数値で表すことが難しいデータに対してもfew shot learningが実現できるような枠組みが実現できることが挙げられます.
このテーマでは学習に有益なデータを能動的に集め,モデル化するための学習理論の構築を目指しています.このような能動的な学習はデータを収集するときに高いコスト(時間,お金,専門知識など)がかかるような場面で役立ちます.本研究では特に能動的な学習を止めるタイミングの研究に力を入れています.学習を止めるタイミングが遅い場合は効率的に集めたデータが無駄になりますし,学習を止めるタイミングが早い場合はAIの予測精度が低い可能性があります.そのため,能動的な学習を止めるタイミングは効率的な学習を実現する上で重要です.また,メタモデリングと組み合わせることで興味のある学習課題や学習する価値のある課題をAIが自動的に決定できるようになるため,ゆくゆくは好奇心のような機能を実現することにも繋がります.
これまでに開発してきたメタモデリングや能動的な学習の理論とアルゴリズムをロボティクスや認知科学へ応用していきたいと考えています.特に,他者とのコミュニケーションの中で自己や他者を理解する知能の数理モデル化を実現していきたいです.