イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

情報工学研究院

准教授

片峯 恵一

かたみね けいいち

所属
情報工学研究院
情報・通信工学研究系
プロフィール
2007
博士(情報工学)
九州工業大学
1994
九州工業大学大学院
情報工学研究科修士課程修了

個人の知識に依存する傾向が強い専門作業は、経験的なものであり、形式化できていないため暗黙知と呼ばれています。その知識を継承するには、その専門家と同様の経験を積んで体得するしかありません。このような暗黙知を形式化し、複雑で専門的な作業を支援できるシステムを開発できれば、その効果は絶大です。私たちは、分野ごとに専門家の理解できる形式で知識を記述することにより、知識の保守や継承が可能になり、このようなシステムを効率良く開発するための手法を研究しています。
ソフトウェアの開発方法も個人に依存しており、多量のソフトウェアが必要とされている現在、正しいソフトウェアの開発手法を指導し、技術者のレベルを上げていく必要もあります。このために、現在の手法で最有力だと考えられる米国カーネギーメロン大学ソフトウェア工学研究所のPSP/TSPに関しての取り組みを行っています。

より詳しい研究者情報へ

専門知識の形式化により、業務のノウハウを明らかにし、品質を向上しよう。

基本的な開発手法を体得し、計画通りに品質の高いソフトウェアを開発しよう。

● 研究テーマ

  • ❖情報システムの構築法およびその開発環境に関する研究

● 分野

ソフトウエア

● キーワード

ソフトウエア工学、ソフトウエアプロセス、プロジェクトマネジメント、TOC(Theory of Constraint)、モデリング、プログラム生成、開発支援環境、要求工学

● 実施中の研究概要

業務の効率化に、情報システムの導入は必須です。導入する情報システムは、専門家の知識を組み込んだ知識ベースシステムを内包していると、高度な支援が可能となり、その価値も高くなります。そのため、専門知識を陽に記述し、システムに導入することが重要となります。そこで、業務分析、モデリング、ソフトウェア自動生成法など、情報システムを効率よく構築し、運用するための手法と、その応用について、研究しています。また、情報システム開発を効率化するためのプロジェクトや、プロセスのマネジメント手法に関しても教育・研究しています。大学では、米国カーネギーメロン大学ソフトウェア工学研究所の認定を受けたPSP (Personal Software Process)インストラクターとして、PSPやTSP(Team Software Process)のトレーニングコースを、講義の一部として実施しています。このトレーニングコースは、学生だけでなく、ソフトウェア開発技術者にとって、重要な概念を含んでおり、ソフトウェアの品質を向上する上で、不可欠なものであると考えています。
また、制約理論(TOC)に基づく、新しいプロジェクトマネジメント手法であるCCPM(Critical Chain Project Management)や、S-DBR(Simplified Drum Buffer Rope)なども研究しています。 CCPMやS-DBRに関しては、ゴールドラットスクール認定のトレーナーでもあります。

❖ PSP / TSP

開発プロジェクトを効率的に進めるための「ソフトウェアプロセス」の手法を、個人のスキルや生産性の向上のために応用する枠組み。PSPは、個人作業に関する枠組みを、TSPは、PSPを実践できるメンバーによるチーム作業に関する枠組みを提供しています。(米国カーネギーメロン大学の登録商標)

❖ CCPM / S - DBR

TOC(制約理論、制約条件の理論)に基づくマネジメント手法である。CCPMは、プロジェクト環境を対象としており、S-DBRは、製造作業や操業管理を対象としています。

● 今後進めたい研究

様々なドメインの専門知識を整理し、定式化することにより、(ある特定の範囲での)汎用的なメカニズムを提案し、その記述言語と処理系を開発していきます。 また、このメカニズムと言語処理系を活用して、これまで情報システムを導入してこなかった分野に適用していきたいと考えています。

● 知的財産権(技術シーズ)

『ソフトウエア開発支援システム』 特開 2009-123110
『プログラム生成装置及びそのプログラム生成方法、並びにプログラム生成プログラム』特開 2009-037477
『ソフトウエア開発支援システム』 特開 2009-026143
『ソフトウエア開発支援方法及びその装置』 特開 2008-052681

● 過去の共同研究、受託研究、産業界への技術移転などの実績

▶2009 設計支援システムに関する教育研究
▶2002-2007 組込み系ソフトウエア分野の非正常系仕様設定技術の研究
▶2003-2006 実戦的なシステム分析・IT技術者教育のためのCASEツ-ル統合・高度化の研究
▶2002-2003 流通系物流センタ-に於けるサ-キュレ-ション制御ソフトウェアの高度化に関する研究
▶1999-2002 CALSの高度な活用のための多視点ソフトウェア・モデリングに関する研究

各種専門家の専門知識を取り扱う知識情報処理システムの構築手法に関して研究している。 開発には、右図のような3階層のソフトウェアアーキテクチャを提案し、各層ごとに研究を進めている。 開発環境層では、左下図に示すような開発環境INSIDEを構築しており、各種プラットフォームからの影響を最低限に押さえ、ミドルウェアを構築するのに必要な機能を提供している。 ミドルウェア層では、各種計算モデルに対応したミドルウェア(専用言語等)を提案している。 アプリケーション層では、ミドルウェアを組み合わせて、左上図のような機能ブロックに沿って情報システムを構築する。 なお、右図の3階層に出ている名前は、これまでに研究したシステム等を記載している。 最下位に記載しているプラットフォーム層は、INSIDEで対応しているプラットフォームを上げているが、実際に構築したものではないため、4階層ではなく、3階層と記載している。

自動火災報知設備設計の支援システムを研究した。 このシステムは、左図にある機能ブロックのように構築しており、これは、①知識情報処理システムの実現階層の構成を利用している。 機能的には、基本的な設計作業に加えて、感知器の自動配置および自動配線機能を実現している。 この自動設計は、数個(デフォルトでは3個)の解の候補を提示し、その中から設計者が選択、必要ならその上で修正できるようにしている。 自動配線機能は、設計者の経験的な知識(暗黙知)が多く、右図上のように、設計計算用言語DSPを用いて定式化している。 右図下は、そのスナップショットである。

組込みシステムの例外や異常を設計の初期段階で抽出するための方法としてESIMを提案している。 ESIMは、組み込みシステムの静的な構造を分析するための情報フロー・ダイアグラム(左図)と動的な振る舞いを分析するための分析マトリクス(右図)から構成している。